君と私は違うから
完全オリジナルの一次創作小説です。前作より少し後の話ですが、あくまで単発の短編小説なのであしからず。ポリィは太陽のように明るく、カスターは月のようにおしとやかで恥ずかしがりやな性格です。今回は対照的な双子が主役のお話です。
花が咲くように笑う君を見た。私を置いて行ってしまう。みんなに囲まれた君を、ただ後ろから見るだけの私が嫌になる。
「ラートス姉さま!あそぼー!」
ラートス姉様の周りを飛び跳ねながらそう言う弟。今日も人一倍元気だ。
「いいけど……今日はルブのとこで勉強じゃなかった?」
ラートス姉様はにやにやしながらそう言った。
「うっ……きょ、今日はとっくんの日だってルヴェリエ姉さまが言ってたもん!」
弟はそっぽを向いて嘘を言う。私はあたりを見回して、ルヴェリエ姉様を探す。すると姉様がこちらに気づいたのか、ゆっくり歩いてきた。私は慌てて駆け寄って耳打ちする。
「姉様、ポリィがラートス姉様と遊びたいと言ってます。」
「そう。分かったわ。ありがとうカスター。」
ルヴェリエ姉様は微笑んで言うと、駄々をこねる弟の方へ行ってしまった。その後のことは見なくてもわかっているので、すぐにその場を離れた。
あの子はいつだってそうだ。何かと問題を起こして皆の注意をひく。輪の中心に弟は常にいる。羨ましいと思ってしまう私は、絵本に出てきた鳥よりみにくい存在だ。
「……ぅわっ」
「っと。」
そんなことを考えていたら、誰かとぶつかってしまった。
「!す、すみません!」
「大丈夫大丈夫。カストルは大丈夫か?」
「はい……」
恥ずかしい。考え事に気を取られてぶつかるなんて。そう思いながら恐る恐る顔を上げると、目の前にいたのはメレフ兄様だった。
「元気ないな。なんかあったのか?」
「…いえ、なんでもないです。」
「そっか。……辛かったら言えよな。いつでも聞いてやる。」
その言葉はとても温かくて、自然と涙が溢れてきた。
「ありがとう、ございます。」
優しく頭を撫でて、兄様は去っていった。
「せっかく遊べると思ったのに。ルヴェリエ姉さまのケチんぼ!……あ、カストル!あのね!さっきね、ルヴェリエ姉さまが……ん?どうしたの?」
文句を言いながら歩いてきた弟は、私の顔を覗き込んでくる。
「ううん。なんでもない。行こ」
「うん!それでね――」
弟の話を聞きながら、前へ歩き出す。いつもと違い、心は晴れやかだ。羨んでも、自分をおとしても意味はない。なら自分からつかみに行けばいい。辛かったら、みんながそばにいてくれる。それだけで充分だ。――だからもう、「君には期待しないよ。」
最後の『もう期待しない』というのは、カスターはもう、弟に自分の気持ちを分かってもらえると期待しないという意味で放った言葉です。