6話 再戦
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街に着いた。道中?割愛である。特に面白いことも起きなかったしな。
この街は俺の住む村から一番近く、馬車なら日が暮れ前には辿り着く程度だ。
(まずはギルドだが………)
全く場所が分からん。
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苦節1時間、やっと見つけたギルドはまさかの俺が入ってきた門から徒歩数秒の位置にあった。見た目は途中至る所で見つけた酒場とほぼ変わりない。分かりにくいわボケ。
扉……扉?を開けて中に入る。あれだ、西部劇の酒場にあるような奴。これ意味あるんだろうか。中に入ると途端に視線が集まってくる。そりゃそうだ。成長期and筋トレブーストでかなり身体は出来上がってはいるが、それでも身長はまだ170前半。まだまだ伸びてはいるが、前世の日本ならともかくこの世界ならそこまで高くはない。親父なら187cm、このギルドにも見た感じからして190cm越えてる奴やら明らか2m越えのデカブツまみれ。☆筋肉モリモリマッチョマン☆が掃いて捨てるほどいるのだ。
その上、身体はともかく顔はどうしようも無い。普通に年相応の顔なためガキなのはバレバレだろう。
(まぁそれでビビる訳でも無いが)
こちとら特殊個体クソデカ百足と1時間もの間踊って殺されかけてんだ。どれだけ強かろうが、命を狙ってきているわけでもないのに人間が怖い訳が無い。視線をガン無視して、恐らくクエストやら何やら手続きを受け付けているだろうカウンターへ向かう。
と、ナ○パみたいなデカいハゲが目の前に現れた。顔面がニヤついているのが見ていて非常に不快だ。こういうのは手合は話を聞くだけ無駄だ。下らない難癖とゴミみたいな論理でこっちに不利益被せてくるだけの害悪である。
という訳でナッ○が口を開く前に、魔力による強化(この2年でできるようになった)に重ねて補助魔法で強化した|約束された勝利の前蹴り《きんてき》を叩き込んだ。
○ッパが股間を抑えながら倒れ込む。多分俺を真横から見ていれば虚空に「K.O!!!」とでも出ていただろう。なお、【追撃】は使っていない。さすがにダイナミック去勢になりかねないのでやめた。そこまで無慈悲ではない。
「冒険者登録お願いします」
受付のお姉さんドン引きである。
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ドン引きしながらも仕事は完璧だったお姉さんに冒険者の証明となるプレートを受け取った。
冒険者はA〜Fの六段階と、別枠扱いでSのランクがある。もちろんAに近づく程優秀かつ母数が少なくなる。そしてそのランクに合わせた色の金属のプレートが与えられるのだ。
初めはもちろんFランク。プレートは木製である。持ち運び用にと紐を貰った。これでネックレスのようにするなりブレスレットのようにするなりが通例らしい。
(ネックレス二つは流石に邪魔くさいな)
というわけでブレスレットにして左手首に着けた。ネックレスは、随分昔に親父から貰い受けたものを着けている。六芒星の下の部分だけが伸びたデザインだ。前世の宗教的に言えば十字架のようなものだ。
そして現在、俺はクエストに赴いている。内容は単純な薬草採集。Dランクまではモンスター討伐のクエストは無いため仕方がない。のだが………
「どうしたもんかねコレ」
指定された薬草を摘み終え、街へ帰る途中。クソ百足の群れに出会した。もちろん俺がやり合った特殊個体とは違って普通の個体だ。が、しかし群れだ。
この百足、実は単体ではそこまで強くない。特殊個体はともかくとして、コイツらは単体ではCランクのモンスターとして登録されている。が、ギルドで受付のお姉さんに確認すればBランクと伝えられる。まぁ群れるのが原因なのだが………
(そこまで規模の大きい群れでは無さそうだな………)
このクソ百足の恐ろしい所は、種としてかなり強い方に分類される癖に無駄に繁殖力が高い所だ。仮にこの群れを数ヶ月放置すれば規模は数十倍に跳ね上がるだろう。そしてもう一つ、その高い繁殖力故に変異個体が生まれやすい点が挙げられる。そうして生まれた変異個体が他の個体と交尾し子供を作るとあら不思議、全ての百足が変異個体化した群れの完成だ。ステラさん曰く、俺が相対したあの特殊個体が他の群れと合流したら、数少ない弱点のノロマさすら消えたやばい群れが生まれていたらしい。
「お前ら人類に対して殺意高すぎないか………?」
まぁ人類の方もコイツらには殺意高めだ。ギルドでの冒険者登録時、まだ実力一つ分かっていない新入りの俺にすら「見つけ次第報告、Bランク以上になった場合は殺して下さい」と言われたくらいだ。
薬草の入った籠を置いて群れに向けて歩く。Bランク規模の群れだと厳しいが、見た感じこの群れはそこまで届いていない。客観的に見ても、俺なら危なげなく倒せるだろう。仮に討伐証明を持って帰ればスピード昇格も可能かもしれない。
「リベンジマッチだ。精々俺の食い扶持になってくれ」
言葉と同時に、駆け出した。
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「ノロいな………」
連携力は本当に虫かと疑うレベルに高いのだが、想像以上にノロい。いや、この場合はあの特殊個体がイカれてただけか。
とはいえ油断は許されない。デカさは強さだし、数の暴力という言葉もある。そのどちらでも勝っていない以上、油断すれば死ぬ。
1匹目が突貫してくる。2匹目が地面に潜る。3匹目が退路を塞ぐ。人間が操縦していると言われても信じられそうな連携をかましてくる。流石にここで回避は難しい。
「反撃開始だ」
突貫してきた1匹目にアッパーカットを叩き込む。強化マシマシのだ。衝撃で頭がカチ上げられて俺の頭上を素通りしていった。1匹目とほぼ同時に現れた2匹目の頭部に左フックを放つ。クリーンヒット。起動が横に逸れていく。退路を塞いでいた3匹目の胴体に拳を振り下ろす。
俺の【追撃】は、イメージとしては時限爆弾が合う。設置してから遠隔起動、とかは不可能。予め時間を設定しておくことしかできないのだ。だからこそ、俺はあの日から2年間、身体と魔法の腕を鍛えるのと同じくらいに体内時計をとことん緻密にしてきた。
その結果手に入れたのは、0.01秒単位で正確な時間感覚。
「『番人の追撃』」
3匹の百足に同時に追撃が発生する。あの日とは違う。腕力も魔法の精度も比べ物にならない程強くなった。あの日は確実性を求めた結果明らかに過剰火力だったが、今では威力の調整も問題ない。間違いなく絶命し、力なく地面に転がる百足共。だが、まだまだ終わりでは無い。怒り心頭、という様子で地面から無数の百足が現れる。
「実験台には事欠かねぇな」
まあ相手は哺乳類ですらないが、問題無い。今回の実験対象の条件は明確に殺意を持って襲いかかってくる存在だ。これ以上無いほど条件に合致している。
「生憎と死に方は選ばせてやれんが、そこはまぁ了承してくれ」
代わりに全員もれなく二撃目で殺してやる。