第二話
「さあて、今回はどんな面白いことが起きてるんだ?」
駆け足で向かったこともあってか、まだ広場での喧騒は収まっていなかった。ここにシオンの言ってた騒ぎの元凶がいると思うとワクワクがおさまらないな。そう思いつつ広場を覗くと想像を絶する光景が俺の目に飛び込んできた。
「みんなーー!今日もきてくれてありがとう!イリスのライブ楽しんでいってねーーー!」
そこには三百人ほどの人がおり、歓声をあげていた。中心に目を向けると、金髪の少女が踊りながら歌を歌っている。
「えーと、どういうことだ……?」
流石の俺でも状況が飲み込めない。このご時世で広場で騒ぎを起こしていると聞いていたからてっきり政府への反抗かなんかかと思ってたが、ライブ……?それになんだあのヒラヒラの衣装は?しかも観客めっちゃ熱狂してるし。俺が珍しく困惑しながら見ていると、中心の少女がこちらに視線を向けてきた。
「ちょっと!そこのお兄さん、元気なくない?一緒に楽しもうよ!!」
「あ、あ〜」
「ほら、特別にこっちにきて一緒に踊ろう!!」
俺が答えあぐねていると、少女がこっちに歩いてきて手を掴まれた。
「は?」
「遠慮しないで、ほら!私の歌に合わせて踊ろう!」
いや、遠慮はしてないけどよ……。まあでも埒があかないし、ここは乗っておくか。なんでもそつなくこなせることに定評があるキョウヤさんの超絶ダンスで観客と謎の少女を黙らせるとするか。
「っしゃあ!そこまでいうならやってやるよ。その代わりあんたより目立っちまっても文句言うなよ!」
「ふーん!いい度胸だね!そこまで言うなら、こっちもボルテージあげてくから!」
「望むところだ!」
「じゃあ、いっくよーーー!ーーーーーー♪」
「——!?」
おいおい、こりゃ驚いたな。まさかこんなにいい歌声をしているとは。通りであんだけの人数が熱狂するわけだ、これは負けてられないな。俺も気合を入れ直し、踊り始めた。
「っ!やるね君、まさか、たまたま声をかけた人がこんなに踊れるなんてね!」
「そっちこそ、ここまで歌って踊れるなんてな!」
俺たちはお互いのパフォーマンスに触発されどんどんテンションを上げていき、曲が終わる頃には汗だくになっていた。
「はぁはぁ、だいぶ疲れたな……」
「あれ?これだけでもう疲れちゃったの?まだ一曲目なのに」
「あぁ!?まだいけるわ!」
「そう?じゃ、二曲目いくよ!」
「お、おう!」
やべ、つい売り言葉に買い言葉で乗っちまったけど、俺まだ病み上がりなんだよな……。曲が始まって焦っていると、思わぬ形で俺たちのパフォーマンスは止められることになった。
「おい!貴様ら何をしている!もしやまた同じやつの仕業か!!!」
「「「AIGISがきたぞーーー、散れ散れ!!」」」
「やばっ、AIGISきちゃった。というかまたいいところで、もう!」
「は?AIGIS、というかまた?」
怒声が聞こえてくると同時に、観客が散っていった。と言うかすごい流れるように逃げていってたけど、慣れすぎじゃないか?謎の少女もまたとか言ってたし、最近よく起こってるとは聞いてたけど、どんだけ常習犯なんだよ。
「おい、また金髪女の仕業か!今日という今日は絶対に逮捕するから覚悟しておけ!!」
脱兎の如く逃げる観客の向こう側から捜査官の怒鳴り声が聞こえる。
「だそうだが、どうするんだ?」
「ふん、あんな奴らすぐ倒して終わりよ。あなたも危ないからさがってなさい」
俺が少女に問いかけると、先程の溌剌とした少女然とした仕草とはうってかわって、まるでAIGISをバカにするような冷たい態度をとっている。それにしてもAIGIS相手に微塵も怯んでいないが、何か秘策でもあるのか?見た目はか弱い少女にしか見えないが……、それはシルヴァも同じか。そうこうしているうちに観客が全員いなくなり、AIGISが俺たちの前に出てきた。ってこいつは——
「やはりお前か金髪女め。この前は不覚を取ったが、今回はそうはいかないぞ!本部のユリス捜査官に同行をお願いしたからな。隣の男は彼氏か何かか知らんが、共犯として同時に逮捕してやろう」
「あなた、私に何もできずにやられたのに随分強気なのね。しかも自分じゃ勝てないからって他の人に頼るなんてさすが偽物ね」
「貴様、言わせておけば!!!お前など——」
「それくらいにしておけルーカス。犯罪者相手にムキになるな。AIGISの名前に傷がつく」
ルーカス何某が激昂したところでようやく、ユリスとかいう奴が出てきた。そう、例のピンク頭だ。あれだけ俺にムキになっておいて、笑えるな。つい笑いが抑えきれず出てしまった。
「っく」
「ん?貴様今から何を笑っている。今から掴めるというのに暢気なものだな」
「いや、すまん思い出し笑いだ。それより、あー、あんた。あのピンク頭はそれなりにやるから気をつけろよ」
「それなりにやるって……なんであなたが知っているのかわからないけれど、まぁ関係ないわ。すぐに倒すから、先に逃げておきなさい」
強気だな……。口ぶり的にルーカスとかいうやつに勝ってるみたいだけど、ピンク頭はあのシルヴァに結構やると言わせてるからな。捕まられても寝覚めが悪いし、一応手を出す準備はしとくか。
「さ、いい加減あなたたちには飽き飽きしていたところよ。そこのピンクのはそれなりの立場の人みたいだし、倒したらもうころてほしいわね。じゃあ早速ーーーーー♪」
そういうとエレメントを立ち上らせ、少女は歌い出した。なるほど能力持ちだったのか。けど歌い出したのは………、いや声にエレメントが乗っている?
「グッ、一度ならず二度までも……」
少女の歌に顔を顰めて、膝をつくルーカス。なるほど歌を媒介に相手に干渉する能力か。ただこの規模でいくとピンク頭は——
「ふん、ルーカスが苦戦すると喚き散らすからどれほどかと思えば、この程度か」
「なっ!?なぜ効いていないの!」
ま、レジストするよな。それにしてもレジストを知らないってことは戦いに慣れてるわけじゃないのか。これは少し不味そうだな。
「さて、程度もしれたところで。早急に終わらせるとするか——」
そう言って身体強化を施し、少女に迫るピンク頭。少女は身体強化などは未熟らしく、反応できそうにない。仕方ない、あんまり目立つとシルヴァにどやされそうだが、それより見捨てる方があいつは怒るだろうしな。個人的な恨みもある。
「まぁまぁ、か弱い少女にやりすぎじゃないか?」
「なっ!?」
「えっ!?」
俺が彼女らの間に割って入り、ピンク頭の打撃を止めると、二人とも驚愕の表情を浮かべる。さ、正体がバレてもまずいし、さっさとトンズラしよう。そう考え俺はシルヴァ戦でも使った閃光を使う。
「変換!」
「がっ!!!」
はは、シルヴァですら回避はできなかったんだ。お前じゃ無理だよな。さて今のうちに——
「おい、逃げるぞ!!!」
「えっ、ええ?」
動揺する少女の手を掴み、俺は広場から逃げ出すのだった。
お読みいただきありがとうございます!
評価、感想、ブックマークよろしくお願いします!!




