第九話
シルヴァの周りで渦巻き出したエレメント、おそらく能力を使うつもりだろう。それにしても先程の閃光はなぜ回避された?間違いなく不意はついたはず、能力で回避というのが一番有力だろうが、調べた限りは相手への干渉系能力だと思ったが……
「っと!」
考え込んでいると、シルヴァが切り込んでくる。
「おいおい、考える時間くらいくれよ。せっかちだな」
「あなたに考える隙を与えると碌なことにならない気がしまして」
シルヴァは不敵に笑っている。ったく、普段は穏やかどころか若干天然のくせに、戦闘となったらまるで油断しやがらねえ。
「性格悪いぞ!」
「なんとでもいってください。それにあなたが言える義理じゃありませんよ」
せめてもの仕返しに非難してみたがまるで効果がない。その間も切りかかってくるシルヴァをいなしながら、なんとか突破口を探すが、やはり近接戦は全くの互角。能力を使うしかないのだが、先程回避されたのが気になる……が、情報得るためにも試してみるしかないか。そう考えて俺はもう一度閃光を、今度は至近距離で生み出してみる。どうせ回避されるだろうがその方法を探るためにも、シルヴァの方に集中する。
「っ!?また閃光ですか。でもそれが効かないのは先程理解しているはず、悪あがきですか?」
すると、シルヴァは少し怯んだ後にすぐ目を開いた。しかし目のあたりで微かにエレメントの動きがあった。なるほど回避しているわけでなく、なんらかの能力で閃光をくらった直後に治癒しているのか。能力の全貌はわからないが、回避しているわけではないのがわかっただけでも重畳だ。
「まさか!立派な戦略だよ。今のでお前が回避しているわけではないことがわかった。なら色々やりようはあるさ」
「なるほど、やけになったわけではないということですか」
「あぁ、もちろん。とりあえず今度は趣向を変えて——」
そう言いながら今度は閃光ではなく、電撃を生み出そうとしたところで、俺が変換しようとしたエレメント干渉された。
「情報が取れたと喜んでいましたが、そう何度もやらせるとお思いですか?」
そう言いながらシルヴァは干渉は強めていき、ついに完全に手元のエレメントの支配を奪われ、散らされてしまった。
「そいつが噂の能力封じか。さっきの治癒といい、お前の能力反則すぎやしないか?」
「伊達に最強と呼ばれてませんから。さて、もう諦めはつきましたか?ついたなら大人しく今までのことを洗いざらい話して欲しいんですけど」
「バカ言うなよ、諦めちゃいないさ」
「でも、先程からずっと能力を使おうとしていますが、全く発動できてませんよね?」
シルヴァの言うように話しながらも能力の使用を試みているが、今のところ完全に押さえつけられていた。
「それは諦める理由にはならないさ、干渉型ならレジストできる可能性もあるしな」
「近接戦で互角なら、時間を可視であるいは、ということですか。ですが私の能力は能力封じだけじゃありませんよっ」
「っ!」
再び切り込んできたシルヴァの斬撃を止めようとして俺は吹っ飛ばされた。先ほどより力が明らかに上がっている……?
「まだまだいきますよ!」
「勘弁してくれよ!お前はびっくり箱かなんかなのか!?」
互角であった近接戦はシルヴァの謎の強化によって、不利になった。いなすのが精一杯で反撃もできそうにない。
「失礼な、能力の使い方が柔軟なだけです!それよりだいぶキツそうですけど!」
「あぁ、きついさ、きついからちょっと手加減してくれない?」
「えぇ?あなたプライドないんですか!?あんだけ煽っておいて手加減してだなんて!」
「プライドなんて飯の種にもならねえからな!ちっ、挑発は失策だったか!」
実際、軽口を叩いてはいるが、いつ倒されてもかしくないくらいキツい。レジストも試してはいるが、これだけ激しい戦闘の中でもシルヴァはしっかりと干渉を緩めない。あと少しでコツを掴めそうな気もするんだが……。
「中々しぶといですね!ならこれはどうでしょう、破調!」
シルヴァがそういった次の瞬間、世界が反転した。クソっ、ここで情報にあった平衡感覚を狂わせる能力か。そう考えている間にもひっくり返った視界の中で、シルヴァの刃が迫る。エレメントによる強化で死にはしないだろうが、受けたら間違いなく戦闘不能にはなる。能力の発動は博打がすぎる——なんとか狂った平衡感覚の中でいなしきるしかない!
「ぐ、らあああああああああ」
目を閉じることで平衡感覚の乱れを緩和し、あとは直前に見ていた剣筋から軌道を予測し弾くっ!
「えぇ!?なんですかその気持ち悪い動き!」
「お前あんだけタチの悪い攻撃しといて、なんて言い草だよ!頑張ってかわしたのに!」
「そんなこと言われても……、敵ですし?」
「あぁ、そうだな!そうだけどよ!!!」
こいつやっぱ天然だわ、戦闘中の言動じゃねえ!それはそうと今の平衡感覚への干渉でこいつのエレメントの流れを掴んだ。今ならレジストも可能な気がする。
「変換!」
「それは使えないとわかっているはず、えっ」
「どうやら、レジストできたみたいだな。おっと、どうしたシルヴァ?お口があんぐりだぞ?」
俺がレジストに成功したのによほど驚いているらしい、シルヴァは戦闘中ということも忘れて、驚愕している。
「そんな、私の調律をレジストできるのは特務官クラス、しかも強化中でないと不可能なはず……」
「なるほど、だからそんなに驚いているのか。どうだ俺の実力がわかってくれたなら、今すぐ手を組んでくれてもいいんだぜ?」
「馬鹿なことを言わないでください!特務官は私を含めて5人います。それと多少拮抗する程度で政府をひっくり返すなんて調子に乗るのもいい加減にしてください。それに私はまだ全くダメージを受けてませんよ!」
「ま、そうだよな。だがこれでお前を倒す手札は揃った。覚悟しろよシルヴァ」
「もう勝った気ですか?そんな油断をしているような人に負ける気はしませんね」
「言ってろ、変換!」
そう言って電撃を生み出すと同時に、切りかかる。しかしシルヴァに届く前に電撃は明後日の方向に飛んでいき、そのまま鍔迫り合いになる。
「レジストができたところで、あなたの操作から外れたエレメントなら干渉は容易です。あなたの能力では私に有効だを与えることはできません」
「はっ、確かに変換では無理だろうな。だがお前は一つ勘違いをしている、それがお前の敗因になるとも知らずにな!」
「あなたの言葉遊びはもう飽きました!私との打ち合いでエレメントももう限界のはず、さっさと投降してくださいっ!」
シルヴァの強烈な一撃をいなし、少し距離をとる。
「確かに、お前との打ち合いでだいぶ消費したな。そんな儚い見た目でで馬鹿みたいな力出しやがって、詐欺だぞ詐欺!」
一応、エレメントを補充する手立てもあるが、それを許すシルヴァじゃないだろう。
「馬鹿力!?ひどくないですか!?」
「馬鹿力は馬鹿力だろ。で、その怪力で削られちまった俺はもう余裕がないから、次で決めさせてもらうぜ」
「訂正する気はないんですね……。それにしても次で決めるとは大きく出ましたね」
「このままいってもジリ貧だからな」
そういいながら俺は最後の一撃の準備をする。
「最後に聞いておきますが、投降する気はないんですね?」
「ああ、お前を倒して手を組んでもらう」
「勝ったら手を組むなんて誰も言ってないんですが、覚悟は決まっているようですね。なら私も全力で相手をしましょう」
そういって刀を構えるシルヴァ。
「OK。なら最後は正々堂々、変換なしの一撃でいかせてもらうぞっ!」
そう言って俺は待ちの構えのシルヴァに突っ込んでいく。
「その姿勢は素晴らしいですが、小細工なしでは私の方が上とわかっているはず。——諦めましたか」
あぁ、そうさ小細工なしでは今のお前に勝ち切るのは難しい、だが変換も対処されるとわかっている。ではもう詰みか?違う、変換じゃダメなだけだ。そうシルヴァは勘違いしている、俺の能力は変換だけじゃない、ここまでの戦闘と今までの行動は全てこの一撃のための布石。まともにやり合っても最後を決めきれないと思った俺が用意した切り札。お前はもう騙されないと言っていたが、騙し切ったぞシルヴァ!
「何を!?」
俺はこちらの刀を受けようとするシルヴァの刀に手を触れる。最悪手が切られるかと思ってたが・・・、シルヴァは咄嗟に刀の勢いを止めていた
「ま、お前なら止めるか、つけ込むようで悪いんだが俺も必死なんでな。いくぜ、還元」
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