第16話 みんなすげぇな
少し遅れたという事もあるが、あっという間に終わってしまったビーチクイーンコンテスト。
司会者の誘導の元、準備された投票箱に次々に投票用紙が入れられていく。
参加者は延べ28名。一枚のリストには名前と番号が記載されており、投票者は一人を選んで投票する形となっていた。
(どうしよう……)
周りを見渡すと、あまり迷っている様子の人は見られない。結果発表は二時間後に予定されているため、投票した人は次々に会場を去って行っていた。
俺だって絞り込んだ。28名の中から4名にまで絞り込んだのだ。
【No17 向空冬凛】
【No19 連山秋穂】
【No22 愛川夏菜】
【No24 蓮海春香】
ただここから先が選べない!! みんな魅力的で、甲乙つけがたかった。
この投票人数なのだ、俺の一票で結果が変わるとは思えない。結果が変わらないのだから好きに、もしくは直感で投票すればいいのに……。
誰かを選ぶと、どうしても誰かを裏切ってしまったようで憚られた。
(どんだけ優柔不断なんだ俺は……)
どうして一人しか選んじゃいけないんだ!? いいじゃないか、みんなを選べば!!
そして最後は意味のない、決まり事の批判する俺。そう決まっているんだから、どうしようもないというのに。
(いっそのこと、四人全員に投票するか? 無効票にはなるだろうけど……)
選択の放棄を選択。全員選びたいのに、選べないのなら選ばないという最低の選択。
この表示されている選択肢を全て選ぶ事は出来る。でもこの用紙の中から選択できるのは一人だけ……一人だけか。
(やば……人が減ってきた。そろそろ時間切れか)
結局決められず、ウダウダと投票用紙を眺める事しか出来ない。
決めなきゃ、何かは選ばなきゃ。彼女達は俺のために出るって、冗談なのかもしれないけど口にしたんだ。
選ばないのはダメだよな、やっぱ。
【全員を選択】
【他人を選択】
優柔不断な俺への情けか、選択肢がマイルドになったぞ。やっぱり選択肢も、俺が一人を選ぶ事はできないと判断したか。
いいよ、決めた。この二択なら、迷う事などないよ。
――――
――
―
いったん出場者も含めて解散後、二時間経過。
四人は再びステージに上がり、結果発表を待っていた。
解散後、彼女達からは誰に投票したのかと問い詰められたが、俺は口を割らなかった。
彼女達は面白くなさそうな表情をしていたが、どこかニヤニヤしていたので俺の選択に気づいてしまったのかもしれない。
『――――みなさん! お待たせ致しました! ビーチクイーンコンテスト、結果発表を行いますっ!!』
『『『『おおおおおおっ!!!!』』』』
ついに結果発表。会場の盛り上がりとは逆に、参加者は緊張の色を隠せない人が多いようだ。
堂々としている人もいるな。こういう舞台に立ちなれている人もいるようだ。
『クイーンはもちろん一人! しかし今回はグランプリの他に準グランプリを設け、一定の票を集めた人には入賞という形を取らせて頂きました!!』
28人の中から1人だけ選ばれると思ったが。準優勝や入選という可能性もあるようだ。
四人であれば優勝だって狙えるはず。俺が一番魅力的に思ったのは四人なのだから、他の人だってそう思う人がいるはずだ。
『ではまず……入賞者の発表を行いたいと思います!! 番号を呼ばれた方は一歩前に進み出て下さい!』
いよいよ始まる結果発表。出場者だけではなく、投票者にも緊張が走るのが分かった。
自分が投票した女性が選ばれるのは嬉しいだろう。俺だって四人が選ばれる事を願っている。
『では参ります!! エントリーNo4! No9! No13! No16! No17! No19! No20! No22! No24! No27! 以上の方が多くの票を集めた入賞者となります!!』
『『『『おおおおッ!!!!』』』』
割れんばかりの歓声が上がる中、俺はすぐさま彼女達の番号を確認した。
「お……おおおおぉぉぉぉッ!!」
入ってる!! みんな入ってるよ!! 春香も夏菜も、アキもトーリも!!
優勝準優勝には届かなかったけど凄い事だよ! あんなに美人揃いのコンテストで、多くの票を集められたのだから。
『おめでとうございます! 人数と時間の関係で一言を頂くは控えさせていただきます、ご了承ください!』
四人の様子を確認すると……ちょっと複雑そうだけど笑顔でいる。みんな優勝を狙ってたっぽいからなぁ。
いやしかし、本当に綺麗な人しかいないな。この中で多くの票を集めて入賞できたんだから、本当にすごい事だと思う。
……ん? は……? あれ、あの人……ええええっ!?!?
ステージに立っている出場者を見渡していた時に目に入った女性。なんというか……ええ? 他人の空似か!?
『ではいよいよ……準グランプリの発表です!! 準グランプリは……エントリーNo3!! 酒神陽乃さんですっ!!』
「ひ、陽乃姉さん!?!?」
間違いない、司会の人が名前を呼んだ事で確信した。
なぜここにいる? なぜそんな煽情的な水着を身につけ、高圧的な態度で下々の者を睨みつけているのだ?
しかも準優勝とは……確かに遠目からでも目を引く容姿、スタイルだけど……性格を皆さんはご存じないのか!?
「凄いですね、姉さん。準優勝してしまうとは」
「ほんとだよな、ビックリだよ……って!? 月ちゃん!? いつの間に!?」
呆けて陽乃姉さんの事を眺めていた時、隣から聞こえてきた聞き覚えのある声。
水着に上着を羽織り、肌の露出を防いでいる可愛らしい少女、酒神月乃がそこにいた。
「月ちゃん……いつ来たの?」
「今日ですよ? 行けたら行くって言ったじゃないですか」
言ったような記憶もあるけど、それって断る時の常套句だと思っていた。
まさか本当に来るとは……そしてなぜ陽乃姉さんはコンテストに参加しているのだ?
「はぁ、準優勝……まぁ妥当ね。アンタ達、ありがとう。一応お礼を言っておくわ」
『『『『陽乃様ぁぁぁぁ!!!!』』』』
あれは親衛隊かなにかか? なんかすごい数の男性が固まっていて、陽乃姉さんに声援を送ってるが……。
ああ、確かにビーチクイーンだよ。クイーンって言葉があれほど似合う女性もいないな、準クイーンではあるけど。
トーリに迫るほどの高身長、アキには及ばずもデカッ! 夏菜のような美脚に、春香とは真逆のショトカ女子。
「先輩たちも凄いですね。みんな入賞するなんて」
「そう……だね、凄いよ。君のお姉さんの方が凄いと思うけどね」
そんな事を月ちゃんと話していると、ついに優勝者……ビーチクイーンの発表が始まったようだ。
「ああ、やっぱり優勝はあの方ですか。あの人、モデルさんですよ? よく雑誌にも載ってます」
「ああ……そうなんだ」
月ちゃんはあの優勝者の事を知っているようだが、そんな有名なモデルさんが参加していたのか。
もう優勝者になんて興味がなかった。確かにすんげー美女がステージで何かを言っているが、頭に入って来ない。
俺の周りにいる女の子……すげぇな。月ちゃんは参加しなかったようだけど、参加したら間違いなく入賞しただろう。
みんな凄い。それに比べて俺は……普通だ、普通の脇役だわ。
やっぱ傍にいるのは俺じゃ……いや、それじゃ今までと何も変わらない。
いれないのは分かってる、どうすればいれるようになるのか考えよう。
……顔か? さっそく無理じゃん。
「ところで先輩は誰に投票したんですか?」
「……え? そりゃもちろん…………内緒っ!」
「え……きも」
「ひどい」
お読み頂き、ありがとうございます
来月からは徐々に投稿ペースが戻せるかとは思います
次回
→【怪しく光る月の夜に】




