第10話 下級生の廊下で激突する上級生
本日2話目
一学年の廊下は、異様な雰囲気を醸し出していた。
集まった上級生、18名ほど。向こうの構成はバランスよく、男女四人づつが補佐についているようだ。
後輩たちは面白そうに目を輝かせる者や、集まった美女イケメンに心を奪われている者、はたまた恐怖に顔を引き攣らせている者など様々であった。
当事者としては不安しかない。集まっている目の数も尋常では……って、俺と央平には大して集まっていないようだが。
ともかく、戦うにしても代表同士で勝手に……と思ったのだが、どうやらそうもいかないようだ。
「どちらがより支持を集めるか……人気勝負でどうだい? 条件は同じだろう?」
「……いいわ。単純な人気勝負、公約なんてどうでもいい」
……よくねぇだろ。任木田先輩の挑発に軽々乗った陽乃姉さん。
そりゃ一年生を審査員にするんだから条件は同じかもしれないが、俺達に一体なにをさせるつもりだ?
「ではまず僕から……召喚!! 井家面太郎!!」
「よっしゃー!!」
任木田先輩に呼ばれて飛び出した井家先輩。おお、イケメンだ。
「ふんっ! その程度の面で……召喚!! 酒神公太っ!!」
「ええ? 陽乃ねえ、なにを言って――――」
「――――早く来い」
「はい……」
哀れ公太。確かにあの眼力には勝てん。それにしても陽乃姉さん、ノリノリである。
互いの陣営より召喚されたイケメン二人が、中央に進み出て向き合った。
「井家先輩……こんちわっす」
「おう酒神! お前が出て来たか!」
どうやら公太と井家先輩は知り合いのようだ。やりづらそうにしている公太と、どこか勝ちを確信しているかのような表情をしている井家先輩。
どういう勝負をするんだ? イケメン勝負か? 俺からみたら圧倒的に公太なんだけど。
「……容姿はどちらも素晴らしい。身長も同じくらい、共にサッカー部のレギュラーで運動も出来る……引き分けかな?」
「あん? なに言ってんのよ? おい井家、アンタ……中間テストの順位は?」
若干顔を曇らせた任木田先輩が引き分けに持ち込もうと画策するが、それを意地の悪い顔で阻止する陽乃姉さん。
「うっ……ひゃ、102位だ」
「プークスクス! ほら公太! 言ってやりなさい!」
「……中間テストは、2位でした」
井家先輩が罰の悪い顔をすると、ワザとらしく噴き出す真似をする陽乃姉さん。
性格わる……ともあれ、どうやら頭は公太の方が上のようだ。
天は二物を与えずか……公太は二物も三物も与えられているが。
「ほら九郎っ! さっさと勝利宣言をして盛り上げなさい!」
な、なんていう無茶ぶりを!? そういうのはあまり得意じゃないんだが。
だからイヤそうな顔をしてみると、俺は何をふざけた事を思っていたんだと、一瞬で改心させられるほどに陽乃姉さんに睨まれた。
「こ、後輩諸君!! 聞きましたかね!? 頭は圧倒的に酒神公太の方が良いみたいですね!? 顔も良くて運動出来て、更には頭も良い先輩!! 良くないですかぁ!?」
「「「「キャー!! 酒神せんぱ~い!! 勉強教えてくださ~い!!」」」」
「こ……酒神公太の勝ちだと思う人~!?!?」
「「「「は~いっ!!!」」」」
ノリノリで手を挙げる後輩女子。見た感じはほとんどの女子生徒の手が挙がっており、誰が見ても公太の勝ちだろう。
やべ……ちょっと楽しくなってきた。俺の後ろにいる四季姫と月ちゃんは、ちょっと引いている感じだけど。
「ふふ……早々に公太君を切り出すとはね」
「あん? なに勝ち誇ってんのよ?」
「……では次だ! 召喚!! 加古良介!!」
「くっ!? 加古まで連れていたなんて……」
次に出て来たのは加古先輩。うわぁ……カッコいい。眼鏡を掛けてクール、知的。ちょっとミステリアスな雰囲気も後輩受けはバッチリだろう。
陽乃姉さんの顔が珍しく歪む。公太はもう使えない……どうするのです!?
「……真ん中。来なさい」
「おっしゃー!! お任せください!!」
公約が書かれた紙を投げ捨てて、意気揚々と飛び出した央平。周りは唖然、なぜ央平を? という感じだが、人員的には仕方がない。
……え? もしかして俺って央平より不細工だと思われているのか? 陽乃お姉ちゃん……僕、悲しいよ。
「真中央平君……ふむ。身長は真中君の方が高い……アルバイトをしていて社会的な経験、財もあるかもしれない……他に加古君に勝っている所は?」
言ってやってよ姉さん。男は顔じゃない、央平だってアピールの仕方を工夫すれば!!
「……捨て試合よ。いえ、消化試合かしら」
「「「「えっ!?!?」」」」
「真ん中、もういいわ。下がりなさい」
「え……? でも俺、まだ何もアピールしてな――――」
「――――時間の無駄。早く下がりなさい」
キツイっ!? それはキツイよ姉さん! 周りも流石にそれは……って目をしてるし!
あれでも一応、俺の友人だ。フォローすると、あいつは別に不細工じゃないよ? 俺には劣ると思うけどな!!
「これで一対一……そろそろ真打登場といこうか?」
「そうね。あまり時間もない、次で決着をつけるわ」
そういうと任木田先輩が後ろを振り向き、合図を送る。
後ろから進み出てきたのは全員が美女。任木田先輩を中心に、四人の先輩女子が横並びとなった。
「紹介するよ。三学年が誇る人気女子――――色姫だ」
色姫……? 四季姫? 三年の季節姫か? 聞いた事があるような、ないような。
しかし人気なのは頷ける。みんな綺麗で可愛くて、存在感がある。
「……色姫? 先輩たちは綺麗で有名な人達だけど……そんな風に呼ばれてたっけ?」
死んでいた央平の目に光が戻った。何やら疑問符を浮かべているが、有名な先輩方である事は分かった。
「――――ッチ。随分と用意がいいわね」
「君が二年の四季姫を味方につけた事は知っている。僕だって策を講じるさ」
つまり四季姫に対抗するために集められた精鋭という事だろうか?
「東野赤音、西峰青依、南条真白、北島百桃。覚えやすくていいだろう? 固有名詞があった方が、人気が出るんだよ」
色できたかぁ……でも色より方角の方が目立ってない? よく集められたものだよ、みんな綺麗だし。
陽乃姉さんを見ると目が合った。やっぱりそうだよね。
そっちが色ならこっちも四季だ! 彼女達には見世物になるみたいで申し訳ないけど、頑張って頂くしかない。
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→【俺様系ハーレム】
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