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第1話 知らぬは本人のみ

第3章・自覚編です






 体育祭を終え、再び通常に戻っていた高校生活。


 次のイベントは、最大の難関である期末試験。中間試験では社会だけ赤点なので辛勝したが、ここで失敗すれば元も子もない。


 社会だけの補習なら、一日二日で終わる。輝かしい夏休み、それに対する期待感と、それを実現するために勉強に励まなくてはならないのだが。


 俺の心はモヤモヤで一杯だった。



「ねぇ九郎っ! 期末試験はみんなで勉強しようよ!」

「賛成です。私達が教えれば、バッチリだと思います」

「冬凛さんの家で勉強とかはどうかな?」

「ちょっと勝手に……まぁクローならいいけど」


「ああ、期末テストな……勉強、しなきゃな」


 中間テストの時と同様に、俺の頭の悪さを心配してくれる彼女たち。


 本来なら泣いて喜びたい事だが、この状況を喜んでいいものなのか分からなくなっていた。



「おい九郎~そりゃないぜぇ……」

「あはは! 央平、邪魔をしちゃダメだろ? 勉強なら俺が教えるよ」

「――――っ!?」


 聞こえてきた公太の声に、体がビクッとなった。


 俺は昔の公太を知らない。そのため、昔から知っている夏菜やアキ、そして月ちゃんや陽乃姉さんに聞いてみたのだ。


 最近、公太に変わった所はないか? 昔と違っている所はないかと。


 月ちゃんから返信はなかったが、他の三人は特に大きな変化はないと思うと言っていた。ほんの少しだけ、行動が変わったかもしれないとは言っていたが。


 選択肢が表示されなくなったとしたら、それは大きな変化だろう。行動だって変わってくるはずだ。


 やっぱり、本人に直接聞くしかないか。



「それで九郎、今日の昼はどうするんだ? 誰と食べる?」

「え? いつも通り、お前達と食べるよ」


「……お前も鈍いな~。じゃあみんな、悪いけど九郎の事は借りていくね?」


 なぜ急にそんな事を聞くのか。体育祭前は当たり前のように一緒に食べていたのに、公太はここの所やたらと確認をしてくるのだ。


 他に誰と食べろと……と思ったのだが、不意に視線を感じたため振り向くと、何か言いたそうで、どことなく残念そうな四季姫と目が合った。



「……ねぇ九郎くん。明日はあたしの番なんだ」

「あたしの番? えっと……何がだ?」


 話してきたのは蓮海。頬が若干桜色に染まっている彼女は、周りに公太たちがいると言うのに爆弾発言をしてくれた。


「明日はあたしがお弁当を作ってくるから、楽しみにしてて」

「お、お弁当……? え……俺にっ!?」


 ま、まじで? あの蓮海のお弁当!? 嘘だろ? そんな貴重なものを貰えるのか!?


 ……俺、明日誕生日だったっけ? いや、誕生日は九月のはず……。



「作ってきたら、食べてくれる?」

「ほ、本当に作ってくれるの!?」

「うんっ! じゃんけんに勝ったんだぁ」


 じゃんけん? もしかして罰ゲームか?


 いや、罰ゲームなら負けたらってのが基本なはず。漢気か……?


「ちなみに明後日は私よ?」

「その次は私です」

「ウチ……最後……」


 え……なにその幸せな罰ゲーム。


 火、水、木、金。日替わりで四季姫のお弁当!? 四季姫にとっては罰ゲームなのかもしれないが、俺にとったらただ幸せなだけなんだが。


 罰ゲームなのにみんな嬉しそう……いや、夏菜だけは悲しそう。夏菜の弁当は大当たりが確定してるのになぁ。


 ……というか、全員が行う罰ゲームって罰ゲームって言うのか?


 その後、ニヤニヤする公太とイライラする央平と共に学食へ。


 明日から楽しみだと、いつの間にかモヤモヤなんて吹き飛んでいた。



 ――――

 ――

 ―



 九< 明日から金曜まで、お弁当いりません。

 三< は? 小遣いはやんねーぞ

 九< いりません。

 三< それでどーやってメシ食うんじゃ

 九< あっははははあはあは!

 三< なにこいつきも

 九< それが息子に使う言葉かよ?



 母への手回しは済んだ。これで明日からは美少女手作り弁当週間だ。


 ……念のため、三百円は用意しておこう。三百円でも安いが。


 我が母が作ってくれた弁当をオープン。これが最後だと思うと名残惜しいが……名残惜しいか? これ、八割が冷食だぞ?


 しばらく冷食ともお別れか~。



「――――ッチ!! ニヤニヤしてんじゃねぇよ!!」

「ま、まぁまぁ央平」

「あらごめんなさ~い? 抑えきれなくて溢れちゃった」


 いや~こんな事になるとは。遠い昔、央平が女の子に弁当を作ってもらったと騒いだ事があったんだが、あの時とは真逆の立場だな。


 ……遠い昔って言うか、去年の話じゃなかったか?


「……てか央平。いつだったか、お前も弁当作ってもらったって騒いでたよな?」

「ま、まぁな」

「そうなのか央平? 詳しく聞かせてよ!」


「……バイト先の人だよ」

「あ~、年上の人だっけ?」

「ああ、春から大学生になったから……」


 央平は、その大学生のお姉さんに惚れているという話。去年は同じ学校に通う高三だったが、今年から大学生になったようだ。


「いつでも作ってくれるとは言ってくれるけどさ……大学生って、忙しいだろ?」

「作ってくれるって言ってるのなら、そこまで苦じゃないんじゃない?」


「……いや、流石に図々しいだろ! ってか俺の話はどうでもいいんだよ! 問題は九郎だろ!?」


 図々しい存在が何を言ってんだか。俺の話って、似たようなものだと思うが。


 彼女達が罰ゲームで弁当を作ってくれる、ただそれだけの話じゃないか。どうだ羨ましいだろ。


 ――――ピコン


 陽< 生徒会室に来なさい。


 せっかく央平にヘイトが向き始めていたのに、僅かな振動と音がそれをぶち壊した。


 うわ……陽乃姉さんからだ。これは無視できないけど、いま食べ始めたばかりなんだが。


 九< いま、昼食を食べ始めました。

 陽< 生徒会室で食べなさい。

 九< なら公太と央平も連れて行きますね。

 陽< いらない。早く来なさい。


 くそ、二人も巻き込もうとしたのに。ダメだ、逆らえない。後が怖すぎる。



「わり、呼び出し食らったわ」

「誰から?」

「陽乃姉さん」

「そ、それは行った方が良いね。悪いけど頼むよ、九郎」


 二人と別れ、心が拒絶するのを無視して足を動かした。


 恐らくこの前いっていた、生徒会がらみの事だろうなぁ。



 ――――――――



「――――あいつも大変だな」

「そうだね。九郎には申し訳ないけど、月乃と陽乃姉が、九郎の事を気に入ってるんだよ」


「……それってどういう方面で? まさか四季姫とぶつかったりしないよな?」

「そっち方面じゃないような気はするんだけど……想像したくないね」


 九郎が去った学食で、九郎の事を近くで眺める二人が会話を続ける。


 話題は専ら、九郎を取り巻く女性陣についてであった。


「結構さ、凄かったよな? さっき」

「だね。九郎は気づいていなかったみたいだけど、雰囲気がね」


 先ほどの教室内での事を思い出す二人。当の本人は気づいていない様子だったが、教室内の雰囲気が若干ピリピリしていたのだ。


「まぁ体育祭の活躍があるから、分からないでもないんだけど……」

「九郎に話しかけたがる女子生徒……それを牽制する四季姫……」


 九郎の活躍を見て、近づきたいと思った女子が何人かいたのだ。


 しかし一早く九郎を囲んでいた四季姫が、目と雰囲気でそれを牽制していた。


 実際、公太と央平は体育祭が終わってから、何人かの女子生徒に九郎の事を聞かれていたほど。



「一人ならまだしも、四季姫全員が相手となると勝てないわな」

「そうだね、誰も近づけてなかったよ。お前達の入る隙はない! って感じで」


 本人が気づかぬ所でモテモテ状態の九郎。これからどうなるのだろうというワクワク感と、近くにいる自分達への被害を懸念する。


「まぁ四季姫達は比較的最初から九郎の周りにいたからな。応援するなら四季姫か?」

「そうだねぇ……仕方ない! 友人として一肌脱ぎますかっ!」


 ポケットを弄り、何やらニヤつく公太。これを使えば、九郎は誰にも邪魔されずに四季姫と仲を深める事ができるはず。


 それは九郎のため、四季姫のため。とは言ってみるが、俺達を巻き込まないで欲しいと言う願望でもあった。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【姉の呼び出し、妹のあーん】

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― 新着の感想 ―
[一言] おっ!やっぱり公太は何か知ってる風な感じか! まぁ作者さんが公太には鈍感補正はないって言ってたし それで何も知らぬ存ぜぬって事はないよね。 仮に九郎とぶつかる前から公太には選択肢が出てなか…
[一言] 公太さんは何だかんだ言って、意外といい空気吸って楽しんでると思うw 央平さんは……まぁ……うん、イキロw
[一言] 公太に選択肢が見えてたとは思えないですけどね。 もし見えてたのなら、見えなくなったらもっと表向きの態度に影響出てるでしょう。 仮に主人公ムーブ出来る補正力みたいなものがあったとしても、それを…
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