第12話 体育祭・お昼休み
秋穂推し発見記念
本日2話目
夏姫エピソードだけは、小出しの構成となっております
お昼休憩。ここで体力を付けないと、午後の全員参加の競技を乗り切る事は難しい。
午後はまず全員リレー。飯を食い終わっていきなりリレーかよと思うが、100メートルならばまぁ走れなくもない。
アンカーの公太くんは200メートルだが……まぁ頑張ってくれたまえ。
そして次は騎馬戦。俺の騎馬は先頭が俺で、後ろは央平と土台君というクラスメイト。上に乗るのはもちろん公太。公太が乗るだけで優勝候補と名高い注目馬だ。
先頭だからなぁ……まぁ、頑張るしかないよね。体張ってやるよ。
最後は最強リレー。これに俺は出場しないが、一番の盛り上がりを見せる最終競技。
俺だって全力で応援してやるつもりだ。声が枯れるまで叫んでやるぜ。
「――――脇谷君、それコンビニ弁当?」
「まぁね。ちょっと今、母親が出張中でさ」
代表テントで一緒に昼食を取っていた愛川が声を掛けてきた。
他の生徒は涼しい教室での昼食だ。なぜ代表だけが……まぁ愛川と食べれるのはラッキーだが。
ちなみに少し離れた所には、陽乃姉さんと月ちゃんの姿もあった。
今週は父親の浮気監視目的の出張期間。母である三枝子は予告なし、つまり抜き打ちで父である六斗の元に出張する。
よりにもよって体育祭の週が出張期間と重なるとは……母の手作り冷食弁当が恋しい。
「じゃあはいこれっ! お裾分け~」
そう言うと愛川は、いくつかのおかずを分けてくれた。俺のお好み焼き弁当に彩が加わり、華やかしい物へと昇華した。
「いいのか? 愛川、腹へらない?」
「大丈夫だよ? それにウチ、最強リレーもあるから、あまり食べるとね」
「そういう事なら……遠慮なく」
愛川から頂いたものを口に放り込み、咀嚼。
美味い、単純に美味い。あぁ、母の冷食とは訳が違う……涙が出てくるぜ。
いやでもさ、今の冷食って美味いのよ。ただねぇ、冷めるとどうしてもね。温かい冷食が食べたい。
「めっちゃ美味い! ありがとな」
「ほんと!? 良かったぁ~! ちなみにそれ、ウチの手作りだから!」
「ぐふっ……え、まじ?」
「うん、マジ! もっと食べてっ」
初めて女の子の手作り弁当を食べた。母は女の子ではなく母なのだ。
いかん、適当に咀嚼してしまった。心して食べなきゃないものを、俺は……!!
「ど、どうしたの? もう食べない?」
「……いや、もったいなくて……愛川の手作り弁当……」
「そ、そんなに意識しないでよ!? そんな大層なものじゃないからっ!」
愛川は女の子の手作り弁当の価値を分かっていないようだ。それが証拠に、隣の男子生徒が悔しそうに箸をギリギリ噛んでいる。
「大層なものだっ!! 可愛い女の子の手作り弁当……それは男の夢ッ!!」
「だ、だから可愛いとかサラッと言うなよぉ……もうっ! お弁当くらいまた作ってあげるしっ!」
【絶対だぞ?】
【必ずだぞ?】
【きっとだぞ?】
「きっとだよ? 必ずだからな? 絶対だぞ!?」
「う、うん……そんなにウチのお弁当、食べたいの……?」
「食べたい、めっさ食べたい」
「うぅ……分かったよぉ……」
よし、ここまでハッキリ言ってしまえば愛川も断れまい。ちょっと卑怯な気がしない訳でもないが、そもそも提案してきたのは愛川だし。
そんな愛川が、顔を赤くしながらもどことなく挑戦的な目で俺を見つめてきた。
「さ、三百円だからねっ! 仕方なく作るんだから!」
「な、なにっ!? さ、三百円……」
「それが嫌なら別にぃ――――」
「――――安すぎワロタ。買います」
「じょ、冗談で言ったのに~!! 終わらせてよこの話ぃぃっ!!」
どうしてか愛川が泣きそうになったので、慌てて話を切り替えた。
三百円とか、恐ろしいな。美少女手作り弁当三百円……街の弁当屋を倒産させるつもりかよ。
――――
――
―
「――――いけェェェ公太ぁぁぁぁ!! 死ぬ気で走れェェェェ!!!」
「公太ぁぁぁぁ!! ぶちかませ――――」
「「「「「「――――キャーっ!! 公太く~ん!! カッコいいぃぃぃぃ!!!」」」」」
女子の結束力よ。央平の声なんか簡単に掻き消された。
トラックの周りに集まる女子! 女子っ!! 女子ッ!!! 一年生も三年生も、何なら走り終えた二年生の女子も疲れた体で声援を送っていた。
「すげぇな公太」
「まぁな。俺達が応援しなくても…………ほら、一着だわ」
当たり前のように一着でゴールテープを切った公太。その瞬間に集まる女子! 女子っ!! 女子ッ!!!
敵味方関係なく女子が集まっていく。ハイタッチの一つでもしたいものだが、あの中に入って行く勇気はない。
今までは単純に羨ましかったのだが、最近は公太の気持ちがなんとなく分かるかもしれない。
「モテモテだな、公太。あまり嬉しそうじゃねぇけど」
「苦笑いしてんな! まぁあの数に囲まれると、しんどいのかね」
しかし、これぞまさに主人公だ。やっぱ主人公はこうでなくちゃな! やれやれ……って感じでさ。
「……でもお前もさ、最近モテモテじゃね?」
「はぁ? 俺がモテモテ?」
確かに女子の友達は増えた。話す事も遊ぶ事も信じられないほど増えた。
それもこれも選択肢のお陰。もしそれをモテていると良い解釈をしたとしても、それは俺の実力ではない。
「嘘だろ? 四季姫に囲まれてさぁ…………ほら、見ろよ?」
「見ろって何を……おぉ」
公太の方から目線を外し、央平の視線を追ってみると……。
それぞれのクラスカラーのハチマキをした、四人の美少女たちがお互いに会話しながら近づいて来る所だった。
楽しそうに話す四人だが、足が俺たちのいる方に向いており、それは公太がいる位置とは真逆だった。
そしてピタッと、俺の前で足を止める。
「九郎くん。騎馬戦、頑張ってね? 足に気をつけてよぉ」
「蓮海じゃないんだから」
「あ~酷いんだぁ……クスクス」
「脇谷君。騎馬戦はバッチリだよねっ! ウチの食べたんだし」
「まあ、お腹はバッチリだ」
「お腹だけかいっ!」
「クーちゃん。応援してます! クーちゃん一推しの私が」
「おお、まぁやれるだけな」
「怪我はしないでくださいね……?」
「クロー。まぁ敵だけど私も一応、応援してあげるわ」
「B組だけには負けないようにするぜ」
「負けたら慰めてあげるわ……一番最初にね」
この子達は、公太じゃなく俺を囲んでいる。選択肢を選んだから……だよな?
この子達って、選択肢を選ばなければ……もしかして公太の周りに……――――
「――――こぉのやろぉぉぉ!! なんでお前ばっかりーー!!」
「な、なんだよ央平!? 耳元で大声を出すなよ!!」
驚きや四季姫の声で、頭を駆け巡っていた考えが消えてしまった。
まぁいいや。こんな時に考えても仕方ない。
「真中君の事も応援してるよ? 一応」
「うん! 一応がんばって!」
「一応、応援してます」
「まぁ一応ね」
「ありがとぉぉぉ!! ございますっ!!!」
……一応でいいのか? 央平よ。
ここまで応援されたら頑張らなきゃな。次はいよいよ、騎馬戦だ!!
お読み頂き、ありがとうございます
次回
→【敵将ッ!ハチマキ取ったりぃ!】




