ボウリング
閑話
ゲームコーナーでの遊びもほどほどに、俺達はボウリングができるフロアへと足を運んでいた。
カラオケというのも案に上がったのだが、部屋は狭いしこの人数だ。
そのため、勉強漬けによる運動不足も解消できると、満場一致でボウリングに決まったと言う訳だ。
「ボウリング、久しぶりだな!」
「そうだな。確か去年のクリスマスに……――――ッチ」
「ど、どうしたんだ? 九郎」
「……去年のクリスマス、コイツとずっとボウリングしてた事を思い出したんだよ」
「カップルばっかりだったよな! カップル割にしますかって聞かれた時は、マジでビビったぜ!」
「ははは。まぁ俺も、特に何をしていた訳ではないけど……」
公太はモテるのに彼女がいるという話は聞いた事がない。でも俺達とは違って、望めばクリスマスだって異性と過ごす事ができるだろう。
俺だって今年はッ!!
「今年は絶対にお前らとは遊ばんからな!」
「はいはい。楽しみにしてるぞ、今年も」
「大丈夫だよ九郎。ケーキは買っておくから」
友達の心遣いが目に染み――――るかっ!! 目にもの見せてやる。なにがなんでもクリスマス、度肝を抜いてやるぜ。
「ちょっと公太! 九郎! 早く来なさいよ!」
三人で下らない事を喋っていると、いつの間に準備が出来たのか陽乃姉さんがいた。
「姉さん、まずは靴を借りなければいけません」
「……はぁ? 靴なら履いているわよ」
「姉さん、ボウリングした事ないのですか?」
「ば、馬鹿にしないで! 平均スコアは80くらいよ」
「……80? もしかして、ゴルフのスコアと勘違いしてませんか?」
「に、似たようなものでしょ? 同じ球遊びじゃない」
「球遊びって……」
月ちゃんが呆れた顔をしている。陽乃姉さんって、残念な子だったんだ。
でもスポーツが出来ないって訳ではなさそうだな。ちょっと興味があって調べたんだけど、ゴルフのスコア80ってそれなりに凄かった気がするし。
なんて姉妹のやり取りをボンヤリ聞いていると、みんな準備が整ったようだ。
慌てて靴を借りに行った陽乃姉さんが戻ったタイミングで、三人チームを三つ作る事になり――――
【ぐー】
【ちょき】
【ぱー】
――――俺は拳を選択!! 頭がパーの央平はパー、公太は洒落っ気を出したのかチョキを選びやがった。
女性陣は人数が多かったので、多少の時間は掛かったもののグループはできたようだ。
ちなみに央平の小賢しい提案で、男が固まらないように男女別れてグループ分けをしていた。
ナイスだ央平。頭はパーでもやる時はやるようだ。
「グーのグループは~?」
「あ……やった!」
「私と秋穂がグーよ」
俺のチームはアキとトーリのようだ。良かった、陽乃姉さんは回避された。
しかしアキ、やったって……聞こえたよ。なんて可愛い子なんだ。よほど央平のチームになりたくなかったんだね?
トーリも心なしか嬉しそう。人見知りをする性格じゃないと思うが、まだ俺が一番やりやすいと思ってくれているのだろうか。
「アキとトーリって、ボウリングはどんな感じ?」
「う~ん、普通……だとは思いますけど」
「私も、得意でも不得意でもないわ」
九郎+秋姫&冬姫チーム。
THE・普通。可もなく不可もなく。裏を返せば、1位は無理でも2位なら普通に入れるはず。普通にやれば普通に2位だ!
実はこの勝負、男達の中で最下位は罰ゲームという事になっている。まぁジュースを奢るなんて可愛らしい罰ゲームではあるが、勝負は勝負だ。
他のチーム次第だな。問題は運動神経抜群の公太の行方だが……。
「よ、よろしくお願いしますっ!!」
「アンタ、真ん中だっけ?」
「姉さん、真中先輩です。んがいりません」
央平+陽姫&月姫チーム。
THE・未知数。央平の運動神経は並みだが、酒神姉妹がどれほどなのか。少なくとも陽乃姉さんはボウリング初心者のはず。
「二人とも、よろしくね」
「よろしく、公くん!」
「よろしくお願いします」
公太+春姫&夏姫チーム。
THE・優勝候補。まず公太、平気でスコア250とか出しそう。愛川もあの元気っぷりで、運動が苦手という事はないだろう。
蓮海には申し訳ないが、穴としたら蓮海だ。自称運動苦手女子、彼女がそれなりに良いスコアを出せば、1位はまず揺らがない。
「いくぞお前ら!! 目指すは2位だ!!」
「……普通、目指すのは1位なんじゃないかしら?」
「現実を見ろ! 俺達は普通なんだ!」
「あはは。頑張りましょう! クーちゃん、冬凛ちゃん!」
普通な俺達が勝つには、士気を高めるのが良いだろう。失敗しても責めず、ストライクを取った時は大げさなほどに喜ぶなどだ。
「いいか! 失敗を恐れるな! ミスは俺がカバーしてやる! 全力でやるぞ!!」
「はうっ……カッコいい……」
「……あなた、そんなキャラだったかしら? ちょっと暑苦しいわ」
どちらかと言うと大人しい二人とペアなのだ、俺が道化を演じてでも引っ張っていかなければ。
「8ピン以上倒したらハイタッチだぞ!」
「……ハ、ハイタッチなんて、恥ずかしいわよ……」
「むむっ! 頑張ります!」
いざ開戦!! チームワークを武器に敵をブチ倒すのです!!
――――
――
―
「あと1ピンでハイタッチ……! あと1ピンで……!」
「いやアキ、スペア狙おうよ?」
「もういやっ! あのピン、鉛で出来てる! じゃなきゃおかしいもんっ」
「鉛だろうが何だろうが、ガターなんだから変わらねぇよ」
「――――ッチ」
「はぁぁ……」
「ひぃ!?」
「公くん、何者……?」
「ちょっと引くかも……」
「いや、引かないでよ……頑張ったのに」
――――
――
―
結果。見事に俺達は普通に2位に輝いた。
8ピン以上倒せなかった時に、珍しく地団駄を踏むアキと拗ねるトーリ。
特にトーリの拗ねっぷりは宥めるのに苦労したが、アキも上手くフォローしてくれたので雰囲気は良かった。
逆に雰囲気のせいで最下位になったのは央平チーム。
央平がミスをすると、陽乃姉さんの眉間に皺が寄り、月ちゃんが全力で溜め息を付いていた。
そんな二人にビクビクの央平はミスを連発。見ているこっちが居た堪れなくなった。
公太チームは言わずもがな。圧倒的だったよ。公太の変態的なスコアは、高校生離れしてる。
————スコア————
九郎・160 秋穂・110 冬凛・120 計390
央平・90 陽乃・70 月乃・130 計290
公太・260 春香・90 夏菜・140 計490
公太バケモンすぎ! スコアシート真っ黒なんだもん。
ていうか陽乃姉さん!? 貴女あれだけ怒っておいて央平より下じゃん!!
まあ最後はみんな、楽しく終われたので良かったです。泣くなよ……央平。
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