ぬいぐるみ
閑話
中間テストが終わったその日、いつもに比べて早めの下校となった事もあり、俺と公太、央平の三人は遊びに行く事にした。
途中、四季姫と陽月姫も一緒に遊ぶ事となり、総勢九人で何でもある複合レジャー施設へとやって来ていた。
「なぁ、ヤバくね」
「あぁ、ヤバいな」
「うん、ヤバいね」
三人の視線の先には、楽しそうにクレーンゲームに興じている六人の姫が。
二人ずつのグループになっているが、みんなそれぞれ楽しそうにしている様子だ。
「な、夏菜さん!? 行き過ぎ行き過ぎ!」
「えぇぇ!? あれ? 戻るボタンは!?」
「そ、そんなのないよぉ……」
「秋穂、もうちょっと前……そう! そこよ!」
「ととっ……あっず、ズレちゃいましたかね?」
「大丈夫、行けるわ……あぁんもうっ! なんでぇ!?」
「姉さん、これで十回目ですよ?」
「う、うるさいわね。あと少しなのよ!」
「はぁ……黙って兄さんに頼めば良かったのに」
四季姫の四人は大分打ち解けたようで、パートナーを色々変えつつ楽しんでいる。
陽乃姉さんは……付き合えるのは月ちゃんくらいだろうしなぁ。
「あの姫達と遊んでるの、俺達なんだぜ? ヤバくね?」
「まぁな。公太はともかく、俺と央平は不釣り合いだな」
「そ、そんな事ないだろ! 大体、夏菜たちを誘ったのは九郎じゃないか!」
まぁ、それはそうなんだが。果たして公太がいなかったら、来てくれたかどうかは怪しい所があると思う。
「くっそ~。あんな美人な姉ちゃんもいたとは……」
「な? 陽乃姉さん、ヤバイ美人だよな? 性格もヤバいけど」
「……なぁ酒神! 期末テストは絶対に俺も勉強会に参加するからな!?」
「あ……ああ。九郎だけじゃ心配だから、俺とも番号交換しておこうか」
そう言って二人は番号を交換し始めた。まぁ忘れたのは俺が悪い、今度は公太もいるし忘れる事もないだろう。
さて、俺達もそろそろ――――
【春姫、夏姫の所に】
【秋姫、冬姫の所に】
【陽姫、月姫の所に】
――――……深く考えなくていいだろ、どうせ全員の所を回るつもりだったし。
そう思い、俺は最初のペアの所に足を運んだ。
「――――よっ、どんな感じ?」
「あ、九郎くん」
「脇谷君! 仇を取ってぇぇぇ!!」
蓮海と愛川の元へ。
見た感じ、まだどのペアも景品をゲット出来ていないようだ。隣を見るとアキとトーリの所には央平が、陽乃姉さんと月ちゃんの所には公太が向かったようだ。
「任しとき! 俺、こういうの得意なんだよ」
五百円玉を投入。そうするとあら不思議、一回多くプレイできるんだよ。流石に一発で取れる自信はない。公太ならサラッと取ってしまうそうだが。
「よし、行けっ……そのままそのまま――――ヨッシャー!!」
「キャーすごいすごいっ! 一発で取っちゃった!」
「さすが脇谷君! ねぇ、もう一回やって見せて!」
「お、おお……おう、任しといて」
テンション上がったのか、ピョンピョン跳ねながら感情を表現する蓮海と、羨望の眼差しを向けてくれる愛川。
ここまで喜んでくれると、こっちまで嬉しくなる。
結果から言うと、残りの回数をすべて使って、もう一つぬいぐるみをゲットした。
「ほい――――蓮海はこれで……愛川はこれな」
蓮海には子犬、愛川にはリスのぬいぐるみを手渡した。キモカワがコンセプトなのか、少しだけブチャイクだけど。
「い、いいの!? ありがとー! すっごく可愛い!」
「あはは。この犬、ブサカワだね。やば、可愛い……」
可愛いのはお前らだっ!! なにその笑顔、ぬいぐるみに向けているのは分かっているのに、可愛さが周囲に溢れてやがる!
「お、俺、あっちの様子みてくるな?」
ダメだ、ここにいたらドキドキし過ぎて心臓がオーバーワークだ。
「九郎くん、ありがとう。一番最初に来てくれて嬉しかったよ……なんて」
「にひひっ! 脇谷君は、ウチたちが一番だったんだ~?」
「そ、そういう訳では……!? お前達が一番ポンコツペアだと思ったんだ!」
「あぁ~、酷いんだぁ~」
「誰がポンコツだぁー!」
ニヤニヤと笑う二人から逃げるように、俺はアキとトーリがいる場所に足を動かした。
そこには、泣きそうになっている央平の姿が。
「ま、真中さん? もう、無理をしない方が……」
「諦めなさいって。もう二十回近いわよ?」
「うぅ……ここまで来て、諦めるなどっ!」
そこにはすでに公太達もおり、俺達が合流した事によってちょっとした人だかりとなった。
そのプレッシャーのせいか、央平はさらにミスを重ねてしまう。ついには硬貨がなくなり、両替する為にイソイソと離れていった。
「……ねぇクロー。真中君、取れるまで止めないつもりよ?」
「クーちゃん、お願いします……」
「あ、ああ……」
申し訳なさそうな顔をするアキと、呆れた様子のトーリに頼まれ、俺はクレーンゲームに硬貨を投入した。
硬貨三枚ほどで、二つのぬいぐるみをゲット。子猫をアキに、ウサギをトーリに渡すと大層喜んでくれた。
その後戻ってきた央平には、アキとトーリがフォローを入れたようだ。ドンマイだ央平。
「ところで私のイメージって、クローから見るとウサギなのかしら?」
「え? いや、そういうつもりじゃ……」
「じゃあ私のイメージは猫なんですか? にゃんにゃんっ」
「やめろ、可愛すぎる」
「あたしは犬かぁ……まぁ一途ではあるかな?」
「まぁ確かに、蓮海は犬っぽい」
「ウチはリスなの!? ちょー意外なんですけど!?」
「そうか? めちゃくちゃ口に食べ物含みそうだけど」
本当にそういうつもりはなかったんだけど、案外、間違っていないのではと思った。
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次回
→【普通VS未知数VS優勝候補】




