第12話 違和感
「ねぇ脇谷君、どこに行く予定なの?」
「う~んそうだなぁ……愛川とアキはどこか行きたい所とかある?」
「私達はどこでも構いませんよ?」
「……とりあえず、歩きながら考えるか――――」
「――――あっ! 九郎くん」
丁度、D組の前を通りかかった時だった。
D組から天使が出て来たと思ったら蓮海だった。何を言っているのか分かるとは思うが、俺もよく分かっている。
この存在感、ヤバっ! その微笑み……ヤバヤバ。教室の扉が、天照で有名なあの岩戸に見えた。つまり蓮海は天照。
「蓮海、勉強教えてくれてありがとう。お陰で国語の赤点は回避できそうだ」
「ど~いたしましてっ! 次は期末試験かな? 次もビシビシ行くから覚悟しててよぉ~」
悪戯っ子のような表情で、蓮海はお道化て見せた。
ビシビシどころかプヨプヨだったと思うが……なんだと? 次回も教えて下さる? 蓮海マジ天照。
「お、おい九郎!」
「なんだよ? そんなコソコソして」
なぜか急に声を潜めた央平が脇腹を突いてきた。
「蓮海さんもさ、誘って?」
「はぁ? 自分で誘えばいいだろ?」
「でぇきるかぁぁぁぁぁぁ!!!」
うるっさ!? なんだコイツ急に、さっきまでヒソヒソしていたくせに。
みんなもビックリしてんじゃねぇかよ!? アキなんか……完全に不審者を見る目してんだけど。
「――――相変わらず賑やかね、あなた達」
「え……ああ、トーリ」
ビックリした。天照の後光に見惚れて気づかなかったが、すぐ近くに温氷の女王がいた。何を言っているのか分からないと思うが、俺はよく分かっている。
トーリって、冷たいのに温かいんだよ、分かる? 外見だけ見ると氷をイメージするかもしれないけど、言葉の温度とか眼差しとか、雰囲気が温かいのよ。
どっかのデンジャービューティーとは大違い……おっと、やめておこう。
「クロー。中間テスト、どうだったの? 特に数学に興味があるわ」
「おお! トーリのお陰でバッチリ赤点回避だ!」
「……私は赤点を回避させるために教えたのではないのだけど? まったく……期末テストの勉強では容赦しないわよ?」
腕を組みながら、仕方ないわね……といった感じの生温かい目を向けてくれるトーリ女王陛下。
流石です、こんな俺にも目を掛けてくれるなんて。貴女が建国するのならば、俺は喜んで国民になりましょう。
「クーちゃん、理科はどうだったのですか?」
「えっ!? も、もちろん……赤点回避したぜよ?」
え……? なんでこの子、急に胸を押し付けてきたの? 今はやる気は出さなくていいと思うんだけど。
ありがとうございます女神様。でもちょっと周りの視線がマジで悪魔的。
「ちょっと脇谷君、なに鼻の下伸ばしてんのっ!? 英語はどうだったのさ!?」
「も、もち! ノープログラム!!」
「ノープロブレムだしっ!!」
バンバンと叩いて来る天使愛川。そのボディータッチ、実はちょっと好き。
アキのようにガッツリだと、嬉しいけど冷静さを保てない。半面、バンバンタッチならニヤニヤできる余裕がある。
でもさ、天照と女王陛下の目が怖いから、ちょっとやめて欲しい。
「お、おい九郎!!」
「な、なんだよ!? お前のバンバンタッチは普通にいてぇわ!!」
「……向空さんも、誘って?」
「だから自分で……わ、分かったよ」
なんていう力強くも情けない目をするんだ央平。
何かを決意した目だと言うのに、どこかすでに負けを認めているような目。なんて不思議な目をするんだい。
まぁ央平に言われずとも、蓮海とトーリも誘うつもりだった。この二人にも凄く感謝している、幸せも教えてくれたし。
【蓮海とトーリも誘う】
分かってらっしゃる、まさかの一択選択肢。選択肢として提示される意味があるのかどうか、根本的に何か間違っている気がしてならないが。
そういえば最近、思うんだけど。突拍子のない選択肢とか、俺には絶対に選べないような選択肢って現れた事がないような気がする。
まぁ選びにくかったりする事はあるけど、一応は選ばさせてくれる。
これからそういうのも現れるのだろうか? こりゃまた、恋愛ゲームでもして選択肢というものを勉強しないといけないな。
「俺達これから遊びに行くんだけど、蓮海とトーリも良かったら行かない?」
「えっと、お邪魔じゃなければ、行っちゃおうかな?」
「私も構わないわよ? 帰っても特にやる事もないし」
よかった。気を遣ってたり嫌々と言う事はなさそうだ。
柔らかく微笑む蓮海と綺麗に微笑むトーリも入れて、全七人で廊下を歩きだす。
流石に四季姫と学年一のイケメンは目立つようで、すれ違う人すれ違う人に様々な視線をぶつけられた。
俺と央平以外は慣れているのか、特に気にした様子は見られない。央平は前を歩き、時折振り向いてはニヤニヤと四季姫を眺めていた。
しかし俺にはニヤニヤ出来る余裕がない。左隣には蓮海とトーリが、右隣には愛川とアキがいるからだ。集まる視線が尋常ではない。
「でも冬凛さんって、カラオケとかするイメージないなぁ」
「そんな事はないわ、大声を出すのは好きだもの。貴女も大声は得意そうよね? 愛川さん」
「まぁね~……って、それ喜んでいいのかな!? 得意だけどっ」
「うふふ。夏菜ちゃんはいつも大きな声ですよね、元気いっぱいです」
「あたしは連山さんが大声出すところ、見てみたいかも」
「わ、私は……大声は苦手かもです……」
「そう言われれば……秋穂の大声って聞いた事ないかも!」
「春香だって大声のイメージないわよ? それより春香、たまに凄く暗い目をするわよね」
「く、暗い目……? そんな事を言うのなら、トーリさんだってたまに子供っぽく――――」
「――――それはやめて」
仲良いのはいいよ? いいと思うけど、前にも言わなかったかな? 俺を挟んで会話するの止めてくれない?
「ねぇねぇ、ウチたちもさ……二人の事、名前で呼んでいい?」
「あっ私も、名前で呼ばせてもらいたいです」
「構わないわ。私もいいかしら? 夏菜に秋穂で」
「もちろんだよ。あたしも二人の事、名前で呼ぶね」
「じゃ~春香に冬凛! これからもよろしくね!」
「よろしくお願いします。春香ちゃん、冬凛ちゃん」
「ええ、よろしくね」
「よろしく。夏菜さんに秋穂さん」
ついに四季姫が……ヤバ。この辺りの雰囲気、ヤバッ! みんな笑顔で名前を呼びあって、幸せが渦巻いていやがる。
春夏秋冬、全ての季節がここにあります。
なぜその中心に俺が……こういうのは主人公である公太の役目だと思うんだけど。
そう言えば公太は……? と思い、辺りを見渡す。
公太は俺達の後ろにいた。微笑ましい物でも見るような、影など一切ない優しい笑顔を見せながらみんなを眺めていた。
「どした? 九郎」
「……公太? そこで……なにを?」
「ん? なにをって……え? なんの事だ?」
「あぁ、いや……なんでもない」
違和感。それが何なのかは分からなかった。
分かったのは、四季姫に囲まれているのは俺で、公太はそれを外から見ていたという事。
「九郎くん、どこに行こっか?」
「カラオケで叫んじゃう? 冬凛とデュエット!」
「楽しみですね、クーちゃん」
「はいはい。夏菜、少し落ち着きなさいよ?」
四季姫たちの会話を聞き、遊びへの期待感が胸を支配すると、いつの間にか違和感は消えてなくなっていた。
その後、昇降口で酒神姉妹とも会ったため九人で遊ぶ事になり、テスト勉強の開放感からはっちゃけた。
しかし数日後、再び俺は違和感を覚える事になる。
中間試験・学年順位…………二学年2位・酒神公太。
完全無欠の主人公。文武両道の酒神公太は、四風学園に入学して初めて、学年首位の座から転がり落ちたのだ。
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テスト勉強編、終了になります
次の章までの合間に、閑話として何話か投稿します
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→【閑話・選択難度高め】
【勘違い編・○○】




