第8話 他人の家でもお構い無し
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「なぁ酒神、これってどういう意味? 質問の意味が分からん」
「ああ、これは……作者の意図をAとした時、読者の願いはBとなるって事だから……」
「……なに言ってんの? これ国語だぞ?」
「え、えっとだな……作者の伝えたい事と読者が望む事は同じとは限らない、万人には受け入れられないって事で……分かるか?」
「「「「「…………」」」」」
「……まあ、それで?」
「質問はその時の作者の心情って事! 要望に合わせるべきなのかとか、色々あるだろ?」
「……なるほど。ふっ……くだらねぇ、そのまま突き進めばいいんだよ! これはお前の物語だ!」
「それは脇谷の心情だろ! 作者の事も考えてあげて!」
「「「「「…………」」」」」
「え~と……頭が痛い、胸が締め付けられる、僕は好きな話を書きたいのに、どうしてみんな分かってくれないんだ、こんな世界、我が力で滅ぼしてやる……どうだ?」
「……それ、心情か? なんか最後、急に小説家から魔王になったし……」
「難しいな……作者になりきったんだけど」
「と、とりあえず数学にしないか? 数学なら答えは一つだし」
「「「「「…………」」」」」
「よし脇谷! 数学にしよう! 真実はいつも一つだ!」
「……なぁ酒神。そろそろさ、名前で呼び合わないか?」
「え……あ、ああ! もちろん、喜んで!」
「……じゃあ、公太……」
「お……おう、九郎……」
「「「「「いやいやいや……見つめ合うなよ……」」」」」
て、照れるな、これ。まるで付き合いたてのカップルだ。
恥ずかしそうに視線を逸らす公太。俺も頬が赤くなっているかもしれない。
「なぁ公太。円周率って、イヨイヨ兄さんコロスだったよな?」
「その覚え方はやめて!? 俺、兄さんだから! ひとよひとよに……いやいや! そもそもそれ、円周率じゃ――――」
「――――わ、脇谷先輩!? ここちょっと分からないので教えてくれませんか!?」
続けて数学の質問を公太にしようとした時、珍しくも慌てた様子の酒神後輩が声を荒げた。
その声で顔を上げて気づく、部屋の中が異様な空気に包まれている事に。
みんなも勉強をしていたと思ったのだが、全ての女性の目が俺達に集まっており、その目はどこか批難めいていた。
「ほらっ! 兄さんは蓮海さんと向空さんに教えてあげて?」
「ど、どうした月乃? 急に……」
「……そもそもな酒神後輩。俺の頭で勉強を教えられる訳ないだろ?」
「脇谷先輩は二年生で、私は一年生ですよ?」
「関係ないね。俺の頭は中二で止まっている」
言わせんな恥ずかしい。まぁ今更か。ここにいる全員が、俺が馬鹿だと知っている。
よくよく考えなくても、俺……場違いだな。酒神後輩の成績は知らないが、俺以外みんな10位以内の成績なんだから。
……ん? あれ? 俺以外みんな……? んん? 何か忘れているような……?
「仕方ない…………兄さん! 私! 脇谷先輩にマンツーマンで教えてもらいたいので! そっちに行ってて下さい!」
「あ、あぁ……じゃあ蓮海さん、向空さん。どこか分からない所は――――」
「――――ないよ」「――――ないわ」
「え……そ、そう? じゃあ何か聞きたい事があったら――――」
「――――そんな事よりクロー、数学なら私が教えるわよ?」
「九郎くん、さっきまで国語してたよね? 国語なら私だね」
比較的近くにいたトーリと蓮海が、酒神が席を立ったのを見計らって距離を詰めてきた。
立ち尽くす公太には目もくれず、開いた俺の隣の席を狙うが――――
「――――よいしょ。クーちゃん、そろそろ物理や理科の勉強をしませんか?」
「「なぁっ!?」」
素っ頓狂な声を上がる蓮海とトーリを尻目に、俺の隣の席に座ったのはアキだった。
清楚なワンピースを着こなしているアキ。ああ、落ち着く……高原で風を受けて帽子を押さえてそう。
一緒にピクニックに行きたい。帽子は麦わら帽子でお願いしたい。
「……物理かぁ、苦手なんだよな」
「うふふ。得意な科目があるんですか?」
「……図工とか」
「そうなんですね。じゃあ、物理……私が得意にさせてみせます」
妖しく意気込むアキに見惚れていると、呆けて立ち尽くしていた蓮海とトーリが動き出す気配を感じた。
しかし反対側に酒神後輩が座っているのを確認すると、その足を止めた。
「ごめ~んつっきー! 場所代わってちょーだい!」
「あっちょ……夏菜さん!?」
「にゃはは、気分転換だよ気分転換!」
反対側に座っていた酒神後輩を押しのけたのは愛川。幼馴染の愛川は二人と違って、容赦がないようだ。
愛川……流石元気ムスメ。ちょっと長めのショートパンツ……うほほ、太ももがっ!
長めのショーパン? ハーフパンツって言うのか? しかしこりゃ夏が楽しみですね。
「……夏菜さん。去年みたいに兄さんの隣で勉強しないのですか?」
「ん~? 公くん頭いいからね! 今年はほら……お馬鹿さんがいるし」
「……おい愛川。いくら可愛いからって、言って良い事と悪い事があるぞ?」
「かっかわ、かわぃ!? かわ……かわ愛……川です……」
「知ってるよ、なに言ってるの」
酒神兄妹が両隣にいた状況は一転。
相変わらず胸を押し付けてやる気を引き出そうとするアキと、真っ赤になってメトロノームになってしまった愛川。
蓮海とトーリは、逡巡のち俺の向かい側の席に落ち着いたようだ。
立ち尽くす酒神兄妹などなんのその。数分前とは打って変わって賑やかになりだした一室。
君達、ここは酒神家だぞ? その家人を押しのけてどうすんの!?
「九郎くん、国語は私だけに聞いてね?」
「ウ、ウチは英語が得意! オッケー?」
「なんでも聞いて下さいね。私の事でも」
「ほらクロー、まずは数学からでしょ?」
どこか嬉しそうにする4人を見て思う。これ、今までの勉強会と変わらなくないか?
集中なんてできるはずがない。羞恥が倍……いや、酒神兄妹もいるから三倍か!?
「……に、兄さん」
「な、なに? 月乃?」
「……私、無理かもしれません」
「無理……?」
何やら話す酒神兄妹の言葉は俺には届かない。大方、人の家でなにやってんだ!? だろうなぁ……。
「……いえ、まだです。こうなったら最後の手段です」
「な、なにをするつもりなのかな?」
「……脇谷先輩を、私に惚れさせます」
「は……はぁぁぁ!?!?」
「サブキャラはサブキャラとくっ付けばいいのですよ……」
「月乃……ちょっと何を言ってるのか分からないよ?」
「兄さん、協力して下さいね?」
なんて会話があったなんて、知る由もなかった。
……んんん!? あれ、そういえば央平は? 慌てて切っていたスマホの電源を投入。
そこには駅に着いたというメッセージを皮切りに、夥しい数の不在着信。もうすでに、日が暮れようとしていた。
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次回
→【鬼(四季姫)の居ぬ間に】




