第2話 地獄からの天国
R15を外した影響かと思っていましたが、ランキングに載ったと教えられました
ありがとうございます
軽い気持ちで4人に勉強を見てもらう約束をしてしまった俺に、選択肢が表示されていた。
しかしこれは、とてもじゃないが選べない。選ぶべきなのだろうが、選べない。
おぉ神よ、まだその時じゃない気がするのですけど。
【春香と勉強する】
【夏菜と勉強する】
【秋穂と勉強する】
【冬凛と勉強する】
これって……終盤、もしくは中盤以降に出てくる選択肢ではありませんか!?
今は序盤も序盤ですよ!? まだ三日目なのよ!? なぜこのような試練をお与えになるのです!?
しかも本人の目の前での選択。つまり、選ばれた選ばれなかったという明確な差を、ヒロインに与えなければならない。
ごめん、勝手にヒロインにしたけど許してね。
「でもさ~、他のクラスの人より同じクラスの人の方が都合良くない?」
「私もそう思います。授業の合間に教える事も出来ますし」
「あら、今は放課後よ? クラスメイトというアドバンテージはないわ」
「授業の合間は厳しいんじゃないかな? 集中できないよ」
頭をグルグル回している間にも彼女達の会話は続いている、誰も引く気はなさそうだ。
以前のように、時間が経っても選択肢は消えてくれない。そりゃずっと選ばないでいれば消えるだろうが、その時は何か他のものも消えそうな気がする。
番号交換の時は、紙に番号を書いて交換をした。誰も選ばなかった……と言うよりは全員を選んだ形で回避した。
(そうだな、そうしよう。選択肢にはないけど、今回も全員を――――)
「――――ちょっと宜しいですか?」
ガヤガヤとしている廊下に響いた、透き通るような声。意識をそっちに持って行かれると、その瞬間に選択肢は消えてしまった。
一瞬の静寂のち、新たに現れた二人の男女に注目が行き、再び廊下は喧騒に包まれる。
四季姫も例外ではなく、会話を中断し後ろから聞こえてきた声の主に振り返った。
「ありゃ? 公くんとつっきーじゃん!」
「こんにちは、夏菜さん。いつも兄がお世話になっています……秋穂さんも」
「あ、うん。こんにちは、月乃ちゃん」
そこにいたのは酒神兄と酒神妹。兄の公太はどこか挙動不審だが、妹の月乃は喧騒なんて物ともしていない。
彼らに反応したのは幼馴染で友達の愛川とアキ。酒神兄妹に軽く微笑みを送る二人とは対照的に、蓮海は戸惑っており、トーリは興味なさげに目を逸らした。
「お二人とは初めましてですね。酒神公太の妹で、酒神月乃と申します」
「……は、はぁ。初めまして、蓮海春香と……申します?」
「酒神と言われても知らないのだけれど……向空冬凛よ」
愛川たちとは違い、蓮海たちは酒神兄妹を知らないようだ。二人とも意味が分からないといったり、どこか警戒しているような表情をしている。
しかし酒神兄妹のカットインはある意味助かった。選んでいないのに選択肢が消えたという事は、時間切れ……もしくは次の場面に強制移行したという事なのだろう。
「二人とも、どうかしたのですか? 夏菜ちゃんに用事……ですかね?」
代表してアキが二人に問いかける。愛川は同じように酒神に目を向けているが、蓮海とトーリの視線は二人から外されていた。
「夏菜さんと秋穂さん……それに蓮海さんと向空さんに用事があります」
無関係だと視線を外していた蓮海たちの目も、その言葉で酒神後輩に向けられる。一体、初対面の二人を含んだ四人に何の用事があるのだろう。
相変わらず公太は居心地悪そうにしているが、居心地が悪いのはこっちなんだが。学園の有名人がこんなに集まって……。
「兄さんの事も仲間に入れてあげてくれませんか?」
「うん?」「えっ?」「はい?」「はぁ?」
「あんだって?」
「お勉強会をするのですよね? 兄さんは頭がいいので、役に立ちますよ?」
そう言って酒神後輩は微笑むが、こっちの五人は誰も笑っていない。
皆一様に、どういう事? といった様子で呆けている。俺だってイキナリ何を言い出したと思った。
別に突拍子のない事を言われた訳ではない、勉強をするという話で騒いでいたのだし。
しかし勉強会ではなく、誰が俺と勉強するのかと言い合っていた所だ。何より異様なのは、それをなぜ妹が言うのかと。
みんなでワイワイやろうとする雰囲気ならまだしも、あのような雰囲気に外部から入った、妹からの兄の推薦。公太本人からの申し出ならまだしも。
それも愛川とアキだけなら分かるが、蓮海とトーリは酒神兄妹とは初対面なのだから、面を喰らうのも仕方がなかった。
「えっ……と、どうしようか? 九郎くん」
「そ、そうだな。トーリはどう思う……?」
「……どうもこうも、私は勉強会をするつもりじゃなくて、クローに勉強を教えようとしているだけよ」
「う、うん。あたしも……そうかな」
「大体、その人は頭が良いんでしょう? なら一緒にやる必要性がないじゃない」
カッコいいなぁトーリは。キリっとした目とハッキリとした物言いに憧れる。テンパると幼児退行してしまう子だけど。
蓮海も、あまり乗り気ではなさそうだ。彼女は優しいから断れないのだろう。押されたら受け止めてしまう子だろうし。
「あらあら、出会い方だけでここまで拗れるんですね」
「つ、月乃! みんな困っているだろう!? もういいから……」
「……はぁ。兄さんがそんなんだから……本当にどうしてしまったのでしょう」
公太にはしては珍しく歯切れが悪い。妹には頭が上がらないのだろうか?
公太本人の意思というより、妹が兄を推したいようだ。とは言っても、乗り気じゃない子がいるのならばここは――――
【今日は春香、冬凛と】
【公太を入れた六人で】
【公太を抜いた五人で】
【今日は夏菜、秋穂と】
――――あぁ……いい、すごくいい。さっきの選択肢と比べると天と地ほど違う。
本人達の前で一人を選ぶなんて無理。選ぶべきなのかもしれないけど、どうしても選ばれなかった子の事を考えてしまう。
こんな、選択できない奴に選択肢が与えられるなんて……何れ誰かを選ばなければならないのだろうか?
ともあれ、そうだとしてもそれはもっと後だろう。公太たちの介入で色々と選択する理由が出来たし、ここは――――
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次回
→【ちなみに央平は190くらい】




