エピローグ
ここまでお付き合い頂き、お読み頂きありがとうございました!
あの旅行の日を境に、俺達は変わったそうだ。
イチャイチャがより酷くなったという話だったが、俺達はよく分かっていなかった。
高校生の時は健全な付き合いをしていたと思うし、人目を憚らずイチャイチャしていた記憶はない。
高校三年の時、公太が生徒会長となったのを良い事に、学園内での逢瀬は専ら生徒会室であったため、教師に指摘される事もほとんどなかったし。
先に陽乃姉さんが卒業して、俺達も卒業した。
進路、どうなる事かと思ったんだけど、俺の周りにいる人ってみんな頭が良くてさ……ああ、央平以外な。
俺と央平は彼、彼女らに扱かれながら、必死こいて勉強したのを覚えている。
そのかいあってか、みんな希望の大学に合格。公太と央平、そして俺は三人とも別々な大学に進学したのだが、今も変わらず仲良くやっている。
その証拠という訳ではないのだが、今日だって会う約束をしている。
なにやら公太から話があるようで、俺も彼女を連れこうしてやって来たと言う訳だ。
「よっす公太、久しぶり」
「やぁ九郎、久しぶり……っていっても、二か月くらい?」
変わらぬイケメンっぷりを発揮する公太と、その隣には随分と垢抜けた様子の大陰さんの姿もあった。
この二人も変わらず仲良くやっているようだ。
「こんにちは、脇谷君」
「こんちわ。どう大陰さん、公太のモテっぷりに疲れてない?」
なんかこの前、大学のミスターコンテストで優勝したって聞いたけど。そんなモテモテの人の彼女ってのも大変だろうなぁ。
「ちゃんと躾けてあるから。ね、公太?」
「も、ももちろん! 俺は零那一筋だから」
う~む、どうやら尻に敷かれているらしい。敢えて聞かないが、公太の表情を見るに満更でもなさそうだし。Mなのかなこいつ。
「お~! お待たせ~!」
背後から声が聞こえたと思って振り返ると、綺麗な女性と手を繋いで歩いて来る央平の姿が見えた。
ちなみに央平には俺の仕事を手伝ってもらっているため、ほぼ毎週会っている。
「西河さん、お久しぶりです」
「久しぶりだね~……ちょっと背伸びた?」
「いえ、伸びてないっす」
央平と手を繋いで仲良く現れたのは、西河四葉先輩。
央平の奴、あの温泉旅行でトチ狂って告白したらしいのだが、なんとオッケーを貰ったと言うのだから驚きである。
「おい九郎! 俺に挨拶はなしかよ!?」
「お前はいいんだよ。一昨日も会っただろ」
「お前ってほんと俺の扱いが雑だよな? なんとか言ってやってよ、彼女さん?」
げんなりした表情の央平は、先ほどから俺の腕を掴んで成り行きを見守っていた、俺の彼女に声を掛けた。
声を掛けられた彼女は、面倒くさそうに央平に目を向けた。
「……真中先輩って、そういうキャラなんですから仕方ないですよ」
「そういうキャラ!? なんてこと言うんだ月乃ちゃん!?」
西河さんという彼女がいるのに、関係ないとばかりに央平を蔑みだした月乃。
「今更ですか? 今も昔も、真中先輩はそういうキャラです」
西河先輩の機嫌が悪くなっても困るので、ここは彼氏として止めなければ。
「月乃、もうその辺にしとけよ。いくら央平でも可哀そうだぞ」
「九郎さんがそう言うのならやめます。いくら真中先輩でも可哀そうでした」
本当に分かっているのかこの子は? なんて昔っからこんな調子で変わらない月乃の心配をしていると、その兄が会話に加わってきた。
「相変わらずだね月乃。九郎とは仲良くやっているようだけど」
「兄さん、お久しぶりですね」
大学進学と同時に一人暮らしを始めた公太、月乃と会うのは久しぶりだろう。
陽乃姉さんも家を出ているので、月乃は寂しい一年を送ったのかもしれない。
「妹のそういう姿は、あまり見たくないなぁ」
「そういう姿? ああ、男にベッタリしている今の事ですか?」
「そうそう。それと結構前なんだけど、偶然街で九郎と陽乃姉を見かけてね。あんな楽しそうな陽乃姉、初めて見たよ」
「声は掛けなかったのですか?」
「……かけてない。なんか怖かったし、さっきも言ったけど身内のそういう姿はあまり見たく……」
「この程度でなんですか? 一週間くらい前、九郎さんは私と姉さんで姉妹丼を楽しんで――――」
「――――だぁぁぁ!! 何を言ってるんだ君は!?」
いきなりなんて事を言い出すんだ! しかし危なかった、どうやら公太には聞こえていなかったようだ。
月乃の言う通り、陽乃姉さんとも変わらず付き合いが続いている。
最近は陽乃って呼んでほしい自分と、変わらずお姉ちゃんと呼ばれたい自分がいて悩んでいると言う話を、月乃から聞いた。
そんな陽乃は本日、どうしても外せない用事があり欠席です。悪しからず。
「それより九郎、他の子は? もしかして……?」
「もしかして何だよ? 別れてないぞ? ちょっと遅れてるだけだよ」
「そ、そっか。月乃だけを連れて来てるから、もしかしてと思って」
「今日は月ちゃんに大学を案内してたんだよ、来年受験するからな――――ほら、来たみたいだぞ」
遠目からでも分かる目立った四人が、仲良さそうに会話しながら向かって来る様子が見えた。
大学に入学して、その容姿ゆえ目立っていた四人は、半年くらい前にとある事がきっかけで更に目立つ子達になっていた。
しかしその四人はすでに彼氏持ち。もちろんすぐバレて、今の俺は高校の時なんて比じゃないくらいに憎悪の視線に晒されている。
「ごめん九郎、お待たせ。また夏菜が化粧に手間取ったの」
相変わらず優しそうな笑顔の春香は、四人のリーダー的な感じになっていて。
「だって化粧ってよく分からないんだもん!」
化粧をするようになった夏菜の笑顔は、更に眩しくなっていた。
「クーちゃん見て! 凛ちゃんのスカート姿!」
髪を伸ばし始めたアキは、四人中で一番のお洒落さんになっていて。
「お、落ち着かないわ……制服は平気だったのに……」
色々な事に挑戦し始めたトーリは、更に魅力的になっていた。
「うわ~、このレベルが四人も集まると凄いね……」
「大学デビューの私なんか相手にもなりませんよ……」
「ファンクラブもあるくらいだしな! まぁあんな動画投稿していれば人気もでるか」
彼女達四人は現在、動画を撮影してアップする……まぁアレだよ、アレになっていた。
あの温泉街紹介動画。当初は顔出しなしの配信だったのだが、彼女達が大学生となった時に顔出しのフル番を配信。
その動画は瞬く間に話題となり、再生数がもうヤバかったらしい。
それを知った彼女達は、自分達で動画を作成、投稿を開始。人気が出るまで差ほど時間は掛からなかった。
ちなみに俺と央平が動画を編集している。央平なんかは編集する時、いつもニヤニヤしていて気持ち悪いので、そろそろクビにしようと思っている。
「でもちょっと面倒になってきたよね、声掛けられすぎるんだもん」
「まぁね~、でもまぁ目標額を稼ぐまでは我慢だよ!」
「あとどのくらいでしたっけ? まだまだですよね?」
「まだまだだと思うけど、帰ったら陽乃さんに聞いてみましょ」
「大丈夫ですよ先輩方、来年からは私も動画に参加しますので」
彼女達は本当に家を建てるつもりらしい。
あと何年かかるのか分からないが、まぁなんだかんだ楽しんでいるようだし。
ちなみに誤って俺の姿が動画に移り込んでしまった動画は、大炎上しました。とっくに火消し済みの削除済みだけど。
「そんで? 揃ったけど話ってなんだ?」
今日のメインは公太の話。この後はみんなで遊ぶ予定ではあったけど、集まったのは公太から話があるという連絡がきたからだ。
「いや~……実はさ、俺達結婚する事になりまして」
「お……おお! マジか!? おめでとう!」
「あ、ありがとう」
公太の言葉に俺と央平は公太に、女性陣は大陰さんに祝福の言葉を贈った。
が、しかし。結婚は目出度い事だし、いずれこの二人は結婚する事になるのだろうけど、なぜ今なのだろう?
「その……で、出来ちゃったんだよね」
「お……おお? マジ……? お、お……おめでとう」
「……お前さ、いつだったか学生結婚は厳しいとか俺に色々言ってなかった?」
「きゃー!? うそ!? じゃあこの中に赤ちゃん居るの!?」
「さ、さわって良い!? ちょ、ちょっとあやかりたい!」
「う……動いた気がします! いいなぁ……私もほしい……」
「いま何か月? そう……秋穂、動いたのは気のせいだわ」
女性陣はあんな感じだが、男としては色々と思う所はある。覚悟しなければならない、幸せにしなければならないのだから。
まぁ公太なら、上手くやるんだろうな。なんてったって、主人公様なのだから。
「あ、あはは~……まぁその、こうなった以上責任はとるよ! 周りの協力は必要だけどね」
「俺達だってできる限りは協力するぞ、なぁ央平」
「もちろんだ! だから俺の時もお願いします!」
色々と大変かもしれないが、公太なら大丈夫だろう。これが央平とかだったら、正直不安で仕方がないが。
かけがえのない友人だ。公太だろうが央平だろうが、俺に出来る事はなんでもするつもりだ。
なんて祝福モード全開に切り替わった俺の元に、興奮にした様子の彼女達が駆け寄ってきた。
「ねぇ九郎! あたしも赤ちゃんほしい!」
「男の子と女の子! 二人はほしい!」
「クーちゃんに似ている男の子だといいなぁ~」
「私は女の子がいいわ。可愛い服を着せたいもの」
「六人もいるのですから、時期をずらせば子育ても楽になると思います」
「い、いや……そんな事を急に言われてもだな」
「俺なんかより大変だぞ~、九郎は」
「だな。あいつ、どうするつもりなんだろうな?」
「きっと彼には見えてると思うよ?」
「何が?」
「選択肢が」
『う~ん……』
『どうしよう……』
『何も考えてなかった』
『なんとかなるだろう』
『とりあえずお茶を濁そう』
頭の中の選択肢は、きっとこんな感じ。
目の前に現れなくたって、いつも頭の中には選択肢が表示されているんだ。
「そ、それは帰ってからゆっくりと話しましょ……」
「逃げたよ」
「逃げたね」
「逃げました」
「逃げたわね」
「逃がしません」
どうなるのかなんて、自分でも分からない。
選んだ選択肢が、正しいのかどうかだって分からない。
ただこれからも、俺は選び続けていくのだろう。
→【ハーレムエンド】
【ハーレムつづく】
お読み頂き、ありがとうございます
1年と1ヶ月、本当にありがとうございました
今年に入って忙しく、間隔が空いた事もありましたが、とりあえず一区切りできました
当初の設定や内容から大きく変わったり、書けていないエピソードとか色々とありますが、個人的に贔屓なしのハーレムは難しい…ということで区切ります
ここまでこれたのは、冗談抜きで読者のみなさんのお陰です
ブクマや評価、感想を頂きまして、本当にモチベーションに繋がりました
飽きっぽい自分にしては、よくやったと思いますw
本当にありがとうございました!
そしてお知らせですが
選択肢を使ったファンタジー作品を執筆中です
宜しければ見てやって下さい




