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第13話 春との出会い






「――――ほら、さっさと入れ!」

「ぐへっ」


 荒先に引きずられ、とある教室にぶち込まれた。しかし首を掴まれていたのだが、なぜか不思議と痛くないのだ。


 ちなみに凄い事を教えよう。荒木先生は女性だ、それも美人だ。どうだい? 首を掴まれて引きずられた俺が羨ましく思えてきただろう?


 まぁ四十代だが。


 はいそこダウト!! げぇ!? とか思っただろ? 美魔女はいるんだぞ!?


 そしてぶち込まれたその瞬間に集まる目っ、目ッ、目ぇぇ!! 他の代表は全員集まっていたようで、俺が最後の一人だったようだ。


 俺を入れて全六人、各クラスから選出された雑用係。こいつらも遅刻したのかと思ったが、真面目そうな人ばかりなので違う理由なのだろう。



「あっ……昨日の」


 ……ん? ウオォッ!? なんか一人、ものすげえ美人がいるぞ!? 綺麗な黒髪で、安易な表現になるが日本人形みたい! 大和撫子ってやつか!?


 しかしめっちゃ目が合ってんだけど!? くっそ恥ずかしい、荒先のせいで変に注目を浴びてしまった!



「早く座れ脇谷! あまり時間がないんだ!」

「あ、はい……あれ、でももう椅子が……」

「なら立ってろ!!」

「えぇ……」


「――――あははっ」


 か、彼女に笑われてしまった!? なんて柔らかい笑顔なんだろう。笑った瞬間に、彼女の周りに花が咲いたかのようだった。


 日本人形みたいなんて思ったが、全然違った。普通にしているとどこか儚げな印象を受けるのに、笑ったり笑顔になった時の存在感が半端ない。


 これは心臓に悪い。直視できず目を逸らしながら教室の隅に移動した。



「よし――――じゃあ一年生のオリエンテーション補助の説明をする。まず六クラスを三つに分けるぞ! AとB、CとD、EとFに分かれてもらう。各チームには教師が一人ずつ付くから、指示に従うように」


 荒先の指示で動きだす代表者たち。その動きに迷いはなく、自分の相方が分かっているかのような動きだが。


 ちょっと待ってよ。俺は誰がどの組なのか全然分からない――――



「――――よろしく、脇谷くん」


「…………マジで? 君が俺の相方?」

「まぁ、そうなるのかな? 脇谷くんはC組で、あたしはD組だから」


 そう言って微笑んだのは、先ほど見惚れてしまっていた黒髪の彼女だった。


 ご都合主義ありがとうございます!! 遅刻して良かった! 酒神より劣等生で良かった! C組で良かった! 荒先万歳ッ!!



「あたしは蓮海(はすみ)春香(はるか)。脇谷くん……名前を教えてもらってもいいかな?」

「あ、ああ……初めまして、脇谷九郎だ」


 優しそうな印象を受けるアーモンドアイ、長い黒髪をハーフアップにしている蓮海。


 先ほどは包み込まれそうな柔らかな微笑みを携えていた彼女だが、今はどうしてか不機嫌そうに口角が下がっていた。



「……ふ~ん、初めましてね~。気づいてないの?」

「気づく……? えっと、どゆこと?」


「あたし達、初対面じゃないと思うんだけどな?」

「はぁ? いやいや、こんな美人の知り合いなんて記憶にないぞ?」


「ず、随分とストレートだね。悪い気はしないけど……本当に分からないのかな?」

「えぇ……と、ううん……?」


 冗談抜きでこんな美人に知り合いはいない。大昔に会った事があるというのなら別だが、残念ながらそんな主人公的な思い出はない。


 美人と言えば、系統は違うが愛川やアキの顔が浮かぶ。蓮海も二人と同じくらいに美少女だと思うが、二人と明らかに違う所と言えばやはり……。


(すっげー綺麗な髪……手が吸い寄せられそうになる)


 目を奪われる漆黒の髪、それでいてとても艶がある。触りたい。長すぎると言う訳ではないが、この長さであれば手入れも大変なのだろうな。触りたい。


 ほんと吸い込まれそうな……黒髪……? あれ、どこかで……――――



 【合法冷却スプレー冤罪事件の原告】

 【空手道場にたまに現れるアラサーOLの娘】

 【麻雀仲間である南雲五郎丸41歳の孫】



 ――――って、まさか黒髪ロング五郎丸さんの孫!? アラサーOLさんも綺麗な黒髪だったけど……って南雲夫婦に子供はいないし、アラサーOLは独身じゃないか! って事は……。



「昨日の捻挫女子!? やっぱり訴える気!? あれはほんの出来心なんです!!」


「な、なにを言っているのか分からないけど、とりあえず捻挫女子はやめてくれるかな?」

「いやだ! 被告はいやだっ!! 確かに綺麗な脚に見惚れたしベタベタ触ったけど、あれは良かれと思って!!」

「ちょっ……なんか本当に原告になりたい気分になったよ」

「くっそ理不尽だ! 立場が逆なら問題ないのに、なんで男ってだけで――――」



「――――わ・き・た・にぃ!! そろそろ静かに……しろッ!!」


 テンパる俺を鎮めたのは荒木女史。年季が入った拳骨は、お前の弁護人になってやると言っている様だった。


 お陰で冷静さを取り戻した俺は思う。やっぱり理不尽だと。


 これが女子生徒を叩く男教師なら糾弾されただろう。しかし逆だとどうだろうか?


 たちまちご褒美に大変身だ。美人教師にご褒美の躾を施される男子生徒。誰も文句を言わないし誰も悲しまない。


 まぁ元美人の四十代ではあるが……はいダウト。


お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【結局最強は内外完璧】

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