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絆と連携のジャイアントキリング

 ギャスパーとトリスはレティシアの目前に迫った。

 しかしメリッサからはまだ少し距離がある。


 あきらめたのか?迎え撃つ気か?

 レティシアは足を止め振り返ると片膝を着いて剣を構えた。


 間に合わない!


 トリスとギャスパーは歓喜の瞬間を想像して目を見開き、口角を上げて獲物めがけて走る勢いそのままに剣を振り上げた。

「レティッ!」

 メリッサが思わず叫ぶ。

 しかし、次の瞬間突然トリスとギャスパーは同時に土煙を巻き上げながら豪快に倒れた。

「うあっ!!」

「あーーーーーーっ!?」

 すぐに体を持ち上げようとするも足に草が絡みつき立ち上がることができない。

 ユーゴの指示で事前にしかけておいた罠が発動したのだ。

「な、なんだこれは?!」

「くそ!トリス邪魔だ!」

「そ、そんなこと言われたって!」

 絡んだ草と足の間に剣を差し入れ、なんとか抜け出そうとするが互いの体がぶつかってしまい、思うように動けない。


「切れた!」


「やああああああ!」

 やっと抜け出したギャスパーに後方からメリッサが剣を浴びせる。

 ギャスパーは振り向きながら剣を頭上に掲げ受け止めた。

 メリッサは長い脚で正面に蹴り上げギャスパーをつき飛ばす。

「うぉ?!こ、この!」

 一回転し立ち上がるギャスパーにメリッサは猛烈な勢いで攻撃を繰り出した。

「たぁぁぁぁーーーーーー!!」

 技や形など無い。無我夢中で己が剣を浴びせ続ける。

「ああ・・・・あああ・・・!!」

 ギャスパーはそれまでレティシアに引っ張りまわされた疲労から徐々に腕が下がり始め、剣での防御ができなくなってきた。

 一方のメリッサはアンドレとの戦闘と50メートルダッシュ直後とは思えない動きでギャスパーを攻め続けた。


「ギャスパー!」

「させないわっ!」

 ギャスパーを援護しようとトリスがメリッサに打ちかかるがレティシアが体当たりで阻止。

 トリスは後方に、レティシアは前のめりで地を転がった。


 呼吸が苦しい!

 心臓が飛び跳ねる!

 手足にウエイトが乗っているのではないかと思うほどキツい。

「ま、まだ!」

 自主練での自信と仲間の期待がメリッサの背中を押す。

「おおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ダッシュからの掛かり稽古。

 修練は裏切らない。


 ―――ここしかない!今決める!―――。


 激しいラッシュにギャスパーの剣は弾かれ、手を離れて宙を飛んだ。

「や・・やめ・・・」

 剣を失ったギャスパーは両手で頭を守りながら打開策を見出そうと強引にメリッサとの距離を詰めるが再び長い脚に突き飛ばされメリッサの間合いで頭に胴に小手に激しく剣を受ける。

「~~~~~~!」

 そしてメリッサ渾身のメンを浴びるとずれた兜を守りながらよろよろと跪き、頭を抱え蹲ったまま動かなくなった。

 監視員が静止に入ったのを確認するとメリッサは息つく間もなくレティシアの援護に入った。


 残ったのは大将マークを付けたトリス一人。


 数的優位の場合、挟撃が基本だ。

 そして個ではなく呼吸を合わせて同時に攻撃する。

 長身のメリッサがいる場合上を任せ、もう一人は胸から下を担当する。

 一人で複数に対する修練と同時にこれも一年間磨いてきた戦法だ。


「もう一息だ!!! レティ!メリッサ!行けーーーーーー!」

 ユーゴの激が飛んだ。

「!!!!」


 疲労で足が出なくなってきた二人が最後の力を振り絞り兜の隙間から汗を飛び散らせて打ちかかる。

「・・・・・いいいいーーっ!」

「・・・・・やーーーっ!」

 二人による同時攻撃でトリスの肩の装具が外れ、手甲がはじけ飛んだ。

「そ、装具が!?」

 レティシアもまた一人で二人を相手に戦っていた時、ドロテ同様に隙を突きコツコツと装具の弱点を叩いていたのだ。

「たあああああああああああああああああああああああああああ!」

 僅かに残ったスタミナも全て使い、重量物を持ち上げるかの様に全身を使って剣をふりかぶる。

「メリッサ!」

「レティ!」

 メリッサがメンを放つとレティシアが胴を打ち込む。

「がはっ・・・!!」

 トリスの動きが止まった。

 交差してお互いの位置が入れ替わり、メリッサが装具の外れた肩にストロークの長い袈裟切り、レティシアが腕関節へ同時に打ち下ろす。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 装具を失った場所を同時に打たれたトリスは天を見上げ硬直、絶叫して倒れた。



 観客席は総立ちのまま静寂が流れた。

 メリッサとレティシアのはっはっという激しい息遣いだけが平原に広がる。


 監視員が駆け寄り、トリスの戦闘不能を確認すると抱えて連れ出した。



「や、やったのか?!」

 数秒後しんと静まる平原でルシアンが呟いた。


「う、嘘だ・・・俺たちが負けた・・・そ、そんな・・・・」

 ルシアンに羽交い絞めにされて動きを止められていたアンドレは抵抗をやめ、がっくりと肩を落とした。


「見事だ!」

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 途中からずっと立ったまま観戦していたジェラール王の拍手から平原は一気に歓声につつまれ、敷物、賭博のハズレ券、果ては金貨銀貨までもが宙を舞い、平原に投げ込まれた。


 ユーゴは殊勲のドロテを抱き上げ、ルシアンは肩を押さえながら、メリッサとレティシアは互いに支え合いながら集まってきた。

「・・・ユーゴ・・・ど・・・どうなったの?・・・みんなは?」

 瞼の開かないドロテがユーゴに問いかける。

「歓声が聞こえるだろ?俺たちの勝ちだ!みんな無事だ」

 メリッサ、レティシア、ルシアンがユーゴとドロテの周りに腰を下ろした。

「今日はドロテが主役ですね!」

「ドロテ凄かったわ!アルバンを一騎打ちで倒しちゃうなんて!」

「・・・ふふ・・・あたりまえでしょ…馬鹿にされたまま終われないわよっ・・・」

「お前、そういうときは みんなだって! っていうもんだぞ?!」

「はは。違いない!」

「あはははは!!」

 平原の真ん中で笑顔が弾けた。











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