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激戦の予感

「昼飯ぐらいゆっくり食べたかったよなぁ・・」

「今日と明日の二日間だけだ。我慢するんだなルシアン」

「分かってるけど、なんて言うか休憩した気分にならないぞ」

 待機用天幕に戻ってきてルシアンが不満をこぼした。各チーム二戦した後昼食となったのだが食堂でも各チームに監視が付き落ち着いて食事が出来なかったのだ。

「ルシアンの言う通りね。お昼の休憩は一時しかないですしね」

「うちは2戦して殆ど消耗していないのが救いだな」

「次はどこと当たるんだ?」

「ちょっと待って。ええと」

 対戦表を広げるレティシア。

「次はGチームね」

「最下位チームか!楽勝だな!」

 ぱぁんっ!

 ドロテがルシアンの後頭部を叩いた。

「って~~~っ!なにすんだっ!」

「最下位はウ チ なのっ!それに油断は禁物よ!」

「わ、わかってるよ・・・そんなの・・」

 ~Hチーム!全員いるか?!~

 外から声を掛けられた。

「は、はい!います!」

「ありゃ?まだ随分と時間があるはずだぞ?」

 レティシアが返事をすると係員が天幕に入って来た。

「まだ時間早くないですか?」

「うむ。合の誘導で来たのではない」

「??」

「Hチームの次の対戦相手のGチームが棄権をしたので君達は順番が一つ飛ぶという事を伝えに来たのだ」

「!」

「え?!Gチームに何かあったのですか?!」

「規則なのでな。私の口からはこれ以上の事は言えない。その次の対戦に備えておけ。以上だ」

「なんだ?!何があったんだ?」

「??」

「・・・しまった・・・」

「どうしたんですか?お兄様」

「Gチームの二戦目はBチームだったな?」

「ええと・・・そうです。対戦表ではB対Gになっています」

「恐らく、GチームはBチームに潰されたんだ」

「えええ?!」

「ほんとか?!」

「多分・・・。その前のFチームもBに二人潰されててCとの対戦の時は4人しかいなかっただろ?」

「あ・・・そう言えばあの時イザークの奴楽勝な顔して帰って来てたわね」

「さっき二勝目を挙げた後、Bチームの試合を見ずに引き上げてきちゃったからな・・・多分複数人が戦闘不能になってしまって棄権を選択したんだろう・・・。すまない、俺のミスだ」

「お兄様のせいじゃありません!」

「みんな初勝利で浮かれてたからしかたがないわよ」

「そうですね。私もうっかりしていました」

「みんな有難う」

「Bチームの試合なら私達が戦う前に一回だけ見られるからそれで対策を立てましょう」

「そうだな!」

「レティ、Bチームの次の対戦はどこだ?」

「ええと・・・あ!」

「どうした?」

「Cチームよっ!イザークの!」

「ええ?!何戦目なの?」

「午後からの第一戦は私達だったのだけど、不戦勝になったから繰り上がって・・・第一試合だわ!」

「今度は見逃せないから早めにいきましょう!」

 ユーゴ達は次戦の準備をして天幕を出て行った。


「ガスパー、午後の対戦はどうなっている?」

「は、第一試合のH対GはGが棄権をしましたのでB対Cからとなり、D対E、A対Fという順番で進んで行きます」

「そうか、ではHチームは早くも3勝という事か」

「は、陛下は随分とHチームをお気に入りの様ですな」

「うむ!初戦の見慣れぬ剣術を使うシュバリエ家の者の活躍も驚いたがユリウスの話では女子が3人もいて農民の子まで混ざっているそうではないか?そして一人少ないにも拘らず三勝だ。注目せぬわけがない」

「そうですな、しかしチームHの次の相手はチームBですので試練の一戦となるでしょう」

「なるほど。ラファエルの息子率いるAチームとグロッソ家の次男所属のBチームは実力が頭一つぬけているがあ奴らであれば乗り越えられるのではないかと期待をさせるものがあるな」

「全くです。私もそう思います」

「む?あ奴らを最下位にしたのはお前ではないのか?」

「それを言われると剣術教官としては非常に苦しいのですが、入学時の彼らは間違いなく最下位でありました」

 ジェラール王の脇に立つガスパーはやや困った表情ですっきりとしている頭をポリポリと掻いた。

「はっはっは。別にお前を責めているのではない。私と同じようにお前もチームHの戦いを楽しそうな目で

 見ていたのでちょっと可笑しくなったのだ」

「恐れ入ります・・私は立場上いずれのチームにも肩入れはできませぬが、彼らは休日も返上して自主的に修練に励んでいた唯一のチームですので果たしてどこまでやれるか非常に楽しみにしているのです」

「ほほう、見上げた根性だ。ますます興味が湧いてきたぞ。B対Hの戦いが楽しみだ!」

 ジェラール王は満足げな表情をして腕組みをした。


 平原ではBとC両チームのメンバーが対峙していた。その中でも二人の少年がくっつく程の至近距離で睨み合っていた。

「Bチームに入らなかった事を後悔してるんじゃないのか?イザーク」

 長身で肩幅が広く、ガッシリとした体格の少年が上から見下ろす。

「ふん!後悔などあるはずがない。アルバン、君が僕を受け入れられないみたいだったから僕の方から辞退してやったのだ、有難く思え」

「お前がリーダーになる事を俺が反対したのがそんなに気に入らなかったのか?」

 イザークは切れ長の目を吊り上げ、キッと無言でアルバンを睨んだ。

「小さい奴だ。その程度の事どうでも良いじゃないか。そもそも貴様はリーダーの器じゃない」

「なんだと!僕は君の様に単に王国騎士団に入団出来ればそれで良いなんて思っていない、騎士団でもリーダーになるんだ!グロッソ家に生まれたというだけでいい気になっているんじゃないぞ」

 イザークは更に半歩前に出て顔が当たるほど近づいて反論した。

「そのために騎士学校でもリーダーとなってアピールしようってか?先の事を考えすぎだ。見栄えにだけこだわっていると眼下のチームに足元をすくわれるぞ。ただグロッソに生まれただけではないと言うところをみせてやろう」

 アルバンは小さく笑った。

 イザークは何かを言いかけたが監視員の「整列!」という号令で遮られた。

 薄笑いのアルバンと険しい顔のイザークも離れ、一列に並んで敬礼をした。


「始まるわ」

「どっちが勝つかな?」

「お兄様はどちらが勝つと思いますか?」

「AとBは実力が一段上でCとはかなりの差があると思う。それにあのアルバンは学校でも一、二を争う強敵だからな、正直言ってCの勝ち目は薄い」

「そんなに・・・ですか?アルバンは背はメリッサよりも高くて威圧感はありますけど修練ではそんなに目立っては居なかったような気がしますが・・・」

「確かにな。修練では何度も剣を交えたが騎士団で稽古をしてきたという割に手ごたえの無い奴だった。多分俺達と同じで手の内を隠していたんだろう。アルバンは見た目よりも頭が切れるのかもしれないぞ」

「だとしたら装具は重装だし相当厄介ね・・・」

 重装を装着しているのは両チームの中で大柄なアルバンただ一人だ。どんな戦い方をするのか?皆固唾をのんで開始を待つ。


「はじめーーーっ!」

 開始と同時に両軍が前に出て6対6の真っ向勝負となった。

 先頭で突撃したアルバンは勢いのまま敵少年の防御もお構いなしで剣を叩きつけそのまま体をぶつけて吹き飛ばした。

「え?!」

 万歳の格好で倒れた少年に対し嵐の様に激しく剣を打ち下ろした。

「がはっ!・・ま、待て・・・!!」

 少年の手から剣が離れても容赦なく剣を叩きつける。

 兜が脱げ両腕で頭を抱えて転げまわる少年の額から鮮血が飛び散る。

「うああああっ!!」

「そ、そこまでだ!!」

 監視員が止めに入ったが既に少年は手足が痙攣を起こして危険な状態となっていた。

「まずいぞ!」

 慌てて二人の監視員がその場でヒールを施す。

「マ、マジなの?・・・」

「アイツ、相手を殺す気か?!」

 ドロテとルシアンは観戦席の手すりから身を乗り出し、メリッサは恐怖で半歩下がった。

「・・・」

 険しい表情でゴクリとつばを飲み込むレティシア。

 アルバンは直ぐに背を向けると近い距離で打ち合っている二人の間に強引に体を入れて敵少年に斬りかかった。

 体制を崩したCチームの少年に前後左右から二人掛かりで挟撃する。

 アルバンが巨体を生かし、またしても体当たりで相手を押し倒すと二人掛かりで打ちまくる。

「やめろ~~~~!参った・・・・!!」

 二人の敵少年を倒し、3人目のターゲットに二人で向かい三対一であっという間に倒してしまった。

 さらに4人目に向かい四対一で、5人目の敵に対し五対一という状況を作り一人づつ確実に潰して行った。

 そして最後に残った大将マークを付けたイザークをBチームの6人が取り囲む。

「さあ、どうするイザーク?あとはお前ひとりだが六対一でも戦ってみるか?」

 兜のアイガードを上げたアルバンが剣をだらりと下げたまま余裕の表情でイザークを見下ろす。

「くっ!・・・・」

 イザークは兜を取り悔しそうに地面に叩きつけた。

「ア、アイツこっちを見てるわよ!」

 Bチームの勝が確定した瞬間、観客席を見たアルバンとユーゴの視線がぶつかった。

 まるであらかじめ戦法を見せつけて「こういう戦いをするぞ。覚悟しろ」と言っている様だ。

「ああしてGチームを棄権に追い込んだのですね・・・」

「・・・」

「他の5人は無理をせずアルバンを待って数的有利になってから攻撃に転じていましたね」

「そうね、とびぬけて強い奴が一人いて有効な戦法ね」

「もしうちが6人だったらお兄様を中心にこういう戦い方をしていたかもしれないわね」

「ああ、そうかもしれない」

「あ、アイツと戦うのはキツそうだな・・」

「・・・」

「みんな、俺達はこういう強いチームと戦う事を想定して頑張ってきたんだろう?稽古通り出来れば勝てる。大丈夫だ!」

 弱気になってしまった4人の前に回りユーゴが力強く言った。

 下を向いていた皆が顔を上げた。

「メリッサとルシアンの役割はなんだ?」

「なるべく早く、600秒以内に目の前の敵を倒して支援に向かう・・です」

 ルシアンが頷く。

「私達は支援が来るまでとにかく時間を稼ぐ。ね」

「そうです」

 レティシアとドロテが視線を交わす。

「みんなで一年かけてじっくりと煮詰めて来た戦法だ。やってきたことを信じて戦えば必ず勝てる!」

「そ、そうだな・・い、今まではてごた・・手ごたえのなな・・無い相手ばっかりだったけどそろそろちゅよい敵とたたた・・・戦いたいぞ!」

 ぱんっ!

 ドロテがルシアンの後頭部を叩いた。

「~~いてぇっ!!」

「何が”ちゅよい”よっ?!あんた大事なセリフを噛みまくりじゃないのっ!」

「うふ。でもルシアンの言う通りね。相手が強くてもやれるんだぞという所を見せないとですね!」

「あら?言うじゃないレティ」

「いえ・・その、お兄様が言うとなんとなく勝てそうな気がしてくるので・・・」

「私もそんな気がします」

 メリッサがにっこり微笑んだ。

「おー!なんか俺も勝てる気がしてきたぞ!」

「ほんとルシアンは単純なんだからっ!」

「よーし!がんばるじょー!」

 ルシアンが拳を突き上げた。

「おー!?」

「おお?」

 ぱぁんっ!

「”じょー!”ってなによっ!?」

「いたいぞドロテ・・・」




                ~毎週土曜日更新します。よろしくお願いします(*‘∀‘)~

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