炸裂!銃剣格闘
「だ、第一試合だぞっ!試合開始は半時後だぞ!ど、どうする?!どうする?!」
「どうするって、どうもしないわよっ!」
「はは、おちつけルシアン。確かに第一試合は緊張はするけど、相手はEチームだし、この対戦表を見ると結構運にも味方されていると思うぞ」
ユーゴ達はHチーム専用の待機場所である天幕で決まったばかりの対戦表を見ていた。
「そうですね。優勝候補のAチームとの対戦は一番最後ですし、Bチームとも今日の最後四戦目ですしね」
強敵との対戦がその日の最後の戦いで消耗した後の試合が無いというのはとても大きい。
「そ、そろそろ準備して出ていかないといけないんじゃないのか?」
「もう・・・時間になったら係の人が呼びに来てくれるって言ってたじゃない、ドロテじゃないけどルシアンちょっとビビリ過ぎよ」
「そ、そうだったか・・・」
「それより、さっき対戦チームがうちと決まった後のチームEのリーダーの顔見た?ニヤケ顔で『ははん?』みたいな、思い出しただけでムカムカしてくるわっ!」
ばんっ!
ドロテは隣で胡坐をかいているルシアンの後頭部を叩いた。
「て・・・!な?!なんで俺?・・・」
「うるさいっ!なんでもいいから叩かれなさい!」
「えええ・・・」
「チームH、全員いるか?時間だ。準備をして移動しろ」
天幕の外から係員の声がした。
「はい!」
「よ、よしいくぞっ!」
「あ、ちょっと待ってくれ」
「な、なんだよユーゴ」
勢いよく天幕を出ようとしたルシアンの腰が砕けた。
「ちょっと俺に考えがあるんだ、初戦は俺に任せてくれないか?」
「なんだ?」
「お兄様、どういう事でしょう??」
「他のチームを混乱させる、というか二戦目以降の為にちょっと頭を使わせてやるんだ」
「??」
「そろそろかな?」
「は。陛下、間もなく初戦を戦うチームが出てくると思います」
王の問いにフェリクスが答えた。
ジェラール王の後方には王国騎士団長フェリクス・ラースロー、時期王国騎士団長ユリウス・ロシュフォール、剣術教官のガスパー・ランバートが控えている。
「陛下、初戦はEチームと最下位のHチームの対戦ですのであちらでお茶などは如何でしょう?」
ジェラール王に近づいた側近の男ががわざとらしい笑顔で機嫌を伺った。
「ラファエル」
「は!」
「今日ここで戦うのは全員未来のブリュセイユを背負って立つ少年達なのだ。例え王国騎士団入団の水準に達していない生徒の戦いであっても私には見届ける義務がある。年端もゆかぬ若者が皆家の為王国の為に命を投げ出す覚悟で臨んでいるのだ、見なくても良い試合など一つもないと思わぬか?」
「は!・・・お、恐れ入ります・・・」
「まあ良い、考え方は色々あるだろう。時間があるならばアレクサンドを連れて行ってやってくれ」
「父上、私も父上と一緒に全ての戦いを見届けたいと思います!」
ジェラール王の隣に座る息子のアレクサンドが元気よく答えた。
「ふふ。そうか、では共に見届けようぞ」
ジェラール王は満足げに息子を見やった。
おおおおおおお!!!!!
おおおおおおお!!!!!
チームEとチームHのメンバーが平原に姿を現すと歓声があがった。
「私達、こんなところで戦うのね・・・」
あまりの熱気にレティシアは気圧されているようだ。
「でも、さっきよりいくらか人が減ってますね」
「そりゃあきょう一日で16戦もあるから最下位のチームの試合なんて見ない人もいると思うわ」
「それもそうですね・・・」
「それにしても、セルジュのおっちゃん達まだきてないのか・・・あっちのチームの応援はいっぱいいるけど、俺達の応援は二人だけみたいだぞ」
観客席中央の王座の直下は対戦チームの家族の為に設けられた特別席だが、チームH側には二人しかおらず、ルシアンはちょっと寂しそうだ。
「うちの家族は多分来ないと思いますが・・・セルジュ様は子供ばっかり大勢連れてこなくてはいけないので支度で時間がかかっているのではないでしょうか?」
「そっかぁ・・・で、あの二人は誰の家族なんだ?」
「あれはうちの兄よ」
「ええ?ドロテって何人兄貴がいるんだ??」
「一番上が国王陛下の横にいるユリウスで、その下に兄が二人で私が一番下・・・って、前に言ったじゃないっ!」
「そ、そうか、そうだったな、悪い」
「色々あったみたいだけどちゃんと応援に来てくれたんだな。よかったじゃないかドロテ」
「・・・ええ、まあ、そうね・・・」
ドロテはユーゴの言葉にちょっと複雑な表情で答えた。
ユーゴがふと横を向くと、相変わらず賑やかなドロテやルシアンとは対照的に険しい表情で玉座の方を睨見つめるレティシアがいた。
「そんな怖い顔をしてどうした?レティ?」
「・・・あそこに居るのはラファエル・クルーゼです」
「クルーゼっていうとAチームのリーダーの・・・」
皆レティシアに顔を向けた。
「クルーゼ?ということはあれが・・・」
「・・・祖父の仇!」
「・・・」
「どうしてあいつがあんなところに!!」
「レティの話を聞く限り策略家みたいだからいろいろ手を回して取り入ったのねきっと」
唇をかみしめ拳を握るレティシア。
そんなレティシアの肩にユーゴがぽんっと手を置いた。
「レティ、焦るな、必ず俺が仇を討つチャンスを作ってやる」
「お兄様??」
「まあ、直接、というわけには行かないがな」
「??」
「行けーーっ!Eチームっ!!」
「最下位のHチームなど蹴散らしてしまえーっ!」
「はっはっは!あそこに居るのはワシの、ワシの息子だぞ!」
一般観客席以上に”特別席”も盛り上がっていた。
「おやぁ?チームHの応援はおふたりだけですかぁ?」
「おおお、誰かと思えばロシュフォールのご兄弟ではありませんか?天下のロシュフォール家が何故に最下位チームの応援を?」
チームEの家族がにやけ顔で空席だらけのチームEの特別席に座るドロテの兄二人を弄り始めた。
「こ!この!言わせておけば!・・・」
やめておけ、ニルス。
立ち上がろうとした三男ニルスの袖を掴んで次男エリアスが制した。
「でも!アニキ!」
「チームHは一人少ない為に騎士団入団は微妙だが一人だけウデの立つ男がいるからそう簡単には負けないだろうとユリウス兄さんが言っていただろう?ここはあいつらに頑張ってもらおうじゃないか」
「むぅ・・・しかしあいつらのニヤケ顔で『ははん?』みたいな態度が頭にくるぜ!」
ドロテと同じ表現で怒りを表す三男ニルス。
「せいれーーーつ!!!」
「始まるぞ、ニルス」
監視員の一人が号令を発し、両チームのメンバーが六人の監視員を中央に挟み、観客席の玉座に向かって一列に並んだ。監視員とは審判員の位置づけである。
Eチームは大将マークを付けた生徒だけが重装で他は皆中装で全員が木剣装備だ。
対してHチームはユーゴが軽装≪ライトメイル≫に手甲だけ中装のもので木銃。レティシアとドロテはユーゴ同様軽装に手甲だけ中装で得物は木剣、腰に短木剣。メリッサは中装≪ミドルメイル≫で木剣、腰に短木剣。ルシアンは中装で左の手甲のみ重装に木剣という装備だ。
国王に敬礼後双方10メートル程距離を取り構えた。
「みんな、手はず通り頼む」
「分かったけどユーゴ、途中でやっぱり助けてくれっていうのはナシだからねっ!」
「はは、頑張るよドロテ」
「ユーゴ、やられるんじゃないぞ!」
「はじめーーーーー!!」
開始の合図とともにユーゴだけが猛然と敵陣に突っ込む。
「え?・・・」
面くらい、立ち遅れた正面の少年Aに対しユーゴは猛烈な速度で踏み込み、初一本を放つ。
「やーーーーっ!!」
木銃を少年の胸に命中させると、床尾を自身の右肩前に固定し、勢いまま体重を乗せて押し込んだ。
「がはっ!!!」
突かれた少年Aはスピードと体重の乗った一撃に真後ろに数メートルもすっ飛んだ。
「な?!」
隣で唖然とし、棒立ちの少年Bに対し、差し出した木銃を引き戻しつつ右足で踏み込み、、床尾を顔面に叩きつける。
ガチンッ!という金属音で少年Bは一撃で直下に崩れ落ちた。
「な!なにをしている!?そ、そいつを止めろ~っ!!」
大将マークを付けた少年が大声を張り上げた。
斬りかかって来た少年Cの剣を木銃を振り上げ、高い位置で受けると素早く右に回り込み”右フック”の要領で床尾を使い兜の側面を殴りつける。
「うあ・・・!!!」
少年Cはハンマーの様な形状の床尾の一撃でアイガードが弾け飛び、少年Dを巻き込んで派手に転がった。
「ひ・・・!」
恐怖のあまりむちゃくちゃに剣を振る少年Eの攻撃を易々と躱し間合いを詰めるとユーゴは一発、二発、三発連続で直突を放った。
「あ、!い!、うっ!・・・」
ユーゴの連撃で重心が後ろにいってしまい動きの止まった少年Eの鳩尾目掛けてアッパーの様に床尾を当てる。
「え!・・・」
そして前かがみになった顔面に今度は床尾を水平に叩きつけると兜からいくつかの金属部品を飛び散らせながら少年Eは糸の切れた人形の様に力なく倒れた
更にユーゴは素早く振り返り少年Cに巻き込まれて起き上がろうとする少年Dを再びけり倒し、仰向けに転がった兜に向かって真下に床尾を打ち付けた。
ゴ!
ゴ!
ゴ!!!
次第に兜が変形して行く。
「ま、ま、待て待て~~~!!参った!!助けてくれ~~っ!」
アイガードが外れ、顔面が露になると蒼白の少年Dは降参した。
慌てて監視員の一人が駆け寄ってくるがそれより早くユーゴは残った大将に向かって猛然と走り出す。
「な、なんだお前は!なんなんだお前は~~っ!!」
ユーゴは敵大将の剣を右に躱し木銃の中ほどに持ち替え、膝裏目掛けて床尾を打ち下ろした。
大将の左膝がガックリと折れると同時に左手を木剣から離し兜に手をかけて力ずくで押し倒した。
「たあああああっ!!!」
「がはぁ!!」
後頭部から倒れた敵大将がうめき声をあげる。
更に重装で動きの緩慢な大将をうつ伏せにひっくり返すと剣を持っている右手を後ろ手にねじ上げた。
「うわーーーーーー!!!やめろーーーー!やめてくれーーーー!ま、参った~~っ!!!」
「ま、待て!そこまでだ!」
監視員が止めに入りEチームの大将を引きずって行った。
静まり返る観客席。
「な、なんだ・・・と・・・?!」
ジェラール王は思わず立ち上がった。
ユーゴは兜を取って振り返り、にこやかにVサインを送ったが、チームHのメンバーも衝撃のあまり呆然と立ち尽くしていた。
特別席にいたチームEの大応援団も全員総立ちで目を見開き口を開けたまま動かない。
「ろ、六人全員を瞬殺だと・・・!?」
「兄貴、俺は一人で六人倒した奴を始めて見たぞ・・・」
「わ、私もだ・・・」
「よ、よお!大勢で応援ご苦労だったな。こっちの奴が一人で全部倒しちまったみたいだから応援も一人でよかったかなぁ?・・・は、ははは」
ここぞとばかりにさっきのお返しをするニルス。
チームEの家族は驚いたままの顔をゆっくりとニルスに向けると数秒後全員が呼吸を合わせたかのようにそのまま首を元に戻した。
おおおおおお!!!!
うおおおおおお!!!
地鳴りのような大歓声が平原全体に響き渡り、大量の敷物やタオル、金貨等様々な物が宙を舞った。
「フェリクスいや、ガスパーは居らぬかっ!?」
立ち上がったジェラール王が騎士学校剣術教官のガスパーを呼ぶ。
「は!ここに」
ガスパーはジェラール王の傍まで行き、片膝を着いた。
「あの剣術はなんだ?!私は見てないぞ。それにあの学生はどこの誰なのだっ!?」
「は。・・・あれに関しましては私も初めて見ましたので説明しかねます。しかしあの生徒はユーゴ・シュバリエという者で御座います」
「ユーゴ・シュバリエ?シュバリエ?知らん家だ・・・」
「以前は王国騎士団に血筋の者をいくらか送り出していた古くからある名家ですが数年前領地争いに敗れ降爵となり男爵に甘んじている家です」
「それがここでこの活躍か。更にそれが最下位のチームHとは実に面白い。あの奇妙な剣術が何であるのかも気になる。しかし最初にチームのランク付けをしたのはお前ではないのか?ガスパー」
「は、それを言われますと何とも冷たい汗が止まらなくなります」
「はっはっは!お前が読み誤るなど珍しいな!次戦がますます楽しみになってきたぞ」
ジェラール王はとても嬉しそうに笑った。
そして王の周囲で観戦していた騎士達の動きも慌ただしくなった。
「ユーゴ・シュバリエだ」
「シュバリエ!」
「シュバリエ家だ!」
シュバリエという家名が次々に伝播して行き端まで到達すると数名の王国騎士が走り出した。
~毎週土曜日更新します。よろしくお願いします(*‘∀‘)~




