長男の葛藤
「体中が痛いわ・・・」
午後6時、食堂で席に着いたドロテがこぼした。
これまでは剣の持ち方、構え方、振り方のという基本稽古のみだったが装具を装着した本格的な修練が始まった。相手を次々に変えての”自稽古”ではチームHのメンバーは激しく打ち込まれ、倒される。そこに自主練も加わって運動量がかなり増えたので体格的にハンデのあるドロテやレティシアは特にきついかもしれない。
「良い傾向なんだぞ」
隣に座ったユーゴがにっと微笑んだ。
「どこがよっ?」
「筋肉は一度壊れて再生するときに増えるんだ。痛いというのは筋肉が壊れたという事で、筋力増加の前段階なんだ。つまり強くなるということだ」
「ユーゴは本当に物知りですね。どこから情報をえているんですか?聞いても教えてはもらえないのでしょうけれど・・・」
「はは・・・まぁ、そのうちにね・・・」
信じて貰えるかどうかは別として自身の事を話しても問題は無いと思うが、今は余計な情報で皆を混乱はさせたくない。
「おっと、スマン」
後ろを通った生徒のトレイが少しレティシアの背中に当たった。
「いえ、大丈夫です・・・!!」
振り向いたレティシアの顔がこわばった。
「これはこれは名家のお嬢様ではありませんか?ご機嫌は如何ですか?」
レティシアの知り合いだろうか?大柄で筋肉質な体躯のその生徒はとても15~6歳には見えない。
レティシアはキッと眉尻を吊り上げ、男子生徒を一瞬睨みつけたがすぐに正面に向き直った。
「おや、俺なんか相手にできませんか。つれないですねぇ」
「あなたなんかと話す事はなにも無いわっ!」
いつもは穏やかなレティシアのきっぱりとした拒絶反応に皆おや?という顔をした。
「まぁせいぜい頑張れ。模擬戦で御祖父さんの二の舞にならないようにな」
生徒は品のない笑みを浮かべた。
ばんっ!
レテシアが両手でテーブルを叩いた。
「!」
驚いた。レティシアがこんなにも怒りを表面に出すとは。
「ん?そこの小さいのは”ロシュフォールの残念な末娘”じゃないか?」
「!・・・し、知らないわよっ!」
突然矛先を向けられたドロテは顔を隠す様にぷいと横を向いた。
「いいや、間違いない、お前ロシュフォールだろ?ロシュフォール侯爵家の兄妹に女子は一人だけだからな」
「それにそっちのデカいのは”ブリュセイユの巨人”だ」
同じチームだろうか?もう一人の生徒がメリッサを指さした。
「茶会だけでは飽き足らず騎士学校にまで男を漁りに来たのか?」
メリッサは眉間にシワを寄せて下を向いて耐えている。
・・・なんの話をしている?会話の内容が理解できないが悪口をいわれているのは分かった。
「おい、良く分からないけどいい加減にしろよ!」
止めに入ろうとフォークとナイフを置いた時、ユーゴより先にルシアンが反応し立ち上がった。
「ふん!平民風情が意見するなっ!チームHはなかなか賑やかで楽しそうだな!」
「おいおい、最下位チームなんてほっとこうぜ」
「そうだな、色々と頑張っているみたいだが無駄なあがきだ。はっはっは!」
二人の生徒は散々悪口を言って立ち去った。
周囲からはクスクスという静かな笑い声とともに「やっぱりな」とか「あいつがそうか」等と聞こえて来た。ユーゴは知らなかったがどうやらウワサになっていたらしい。
「(・・・みんな色々と何かを抱えているみたいだな)」
レティシアの事もとても気になるがここは触れずに行こ・・。
「なあ、”残念な末娘”ってなんだ?」
ぶ・・・・・!!。
「それ以上言ったら殺すわよ」
「(はは・・・)」
立ち上がってメリッサをかばった態度に感心したが、ルシアンは読めない少年だ。
「ルシアン、さっきはその、有難う・・・」
「いや、なんかちょっと腹が立ったからな」
礼を言ったメリッサにぽりぽりと頭を掻きながら答えるルシアン。ちょっと照れているみたいだ。
「私はあんたにも腹が立ったわよっ」
すかさずツッコミを入れるドロテ。
この難解な三角関係はどうしたら解消できるのだろう・・・。
「なぁ、ちょっと気になったんだけどあいつが言っていた”最下位チーム”というのは俺たちの事か?」
「うーん、言おうかどうか迷っていたんだが、入学初日に各チームにつけられたアルファベットはその時点での実力順らしいんだ」
「なんとなくは思っていました・・・」
「やっぱりそうなのか」
「絶対に見返してやるわっ!」
人一倍負けん気が強いドロテは頼もしい限りだが、険しい表情のまま黙り込んでしまったレティシアが少し心配なユーゴだった。
「みんな、明日は実家に帰るのか?」
ユーゴ達が始業前の1時間と、夕食後午後7時から9時までの2時間の自主練を始めて一週間が過ぎ、明日から初の2連休となる。昼休みもそうだが帰る事が出来る者は帰っても良い決まりだ。門限も特にない。最終試験の模擬戦で結果を出して騎士団に入団できるか出来ないかが重要なのであって、全ては自己責任という方針なのだ。
「俺は帰れない。休みが二日では往復も出来ないしな」
「私はお兄様と一緒にいます」
「私は・・今回は帰らないわ。馬車を頼んでいないし」
「私も帰らない」
「そうか、なら明日は朝からちょっと手伝ってくれ」
「何をするのかしら?」
「まぁ、土木工事かな。ははは」
「?」
翌日の早朝ユーゴは皆を連れて学校から30分程走った場所にある森の入口に来ていた。
「え?馬車よ」
「こんなところに?なんでしょう?」
荷馬車はユーゴ達の前で止まった。
「レティシア~元気か~!」
手綱を引いていたのはユーゴトレティシアの父セルジュだった。隣に母イザベルもいた。
「お、お父様、お母さま?!」
セルジュとイザベルはレティシアに駆け寄ると満面の笑みを浮かべ交互に抱きしめた。
「ど、どうされたのですか?!」
「ユーゴに頼まれてな、色々と持って来たのだ」
「お母様まで?!」
「レティの所に行くって言うから私もついてきちゃったわ!」
イザベルはぺろっと小さく舌を出した。
「父さん、有難うございます。手紙で呼びつけるような事をしてすみません」
「なになに!これぐらいの事ならいくらでも協力するぞ」
「ユーゴ、これは?」
皆が馬車の周りに集まった。
「おお!彼らがユーゴとレティシアの仲間だな?紹介してくれないか?」
「あ・・す、すみません・・・」
ユーゴはこういう事にまだ不慣れだ。
「こちらは、ロシュフォール侯爵家のドロテ嬢です」
「レティシアさんのご両親ですね?お初にお目にかかります。ドロテと申します」
ドロテは右足を半歩引き、丁寧なお辞儀をした。”稽古着”という所が不釣り合いだが、流石は名門のお嬢様だ。挨拶はきっちりしている。
「こちらはアルネゼデール男爵家のメリッサ嬢です」
「シュバリエ様、初めましてごきげんよう。メリッサと申します」
長身のメリッサはセルジュよりも低くなるまで腰を落とし挨拶をした。
「そしてモレル家のルシアン君」
「は、初めまして・・お、俺、わ、私は、貴族ではないので、その、よろしくお願いします・・」
ユーゴ同様こういった事にあまり慣れていないのだろう、普段はぶっきらぼうでマイペースなルシアンがカチコチになっていた。
「みなさん初めまして私は二人の父のセルジュ・シュバリエです。ルシアン君、ユーゴとレティシアの仲間ならば貴族だろうと平民だろうと関係ないぞ。二人をよろしく頼みます」
「妻のイザベル・シュバリエです。よろしくお願いしますね」
「ユーゴ、それで持って来た物はどうしたら良いのだ?」
「ああ、そうでした。この森の中に特訓場を作るのでみんな、荷台の資材を森の中に運んでくれ」
荷台には丸太や長椅子の様なものが沢山積まれていた。
「私も手伝うぞ!」
「お父様無理はしないでくださいね」
「これぐらいは大丈夫だ」
「これは何かしら??」
皆不思議に思いながらも手分けして資材を運び始めた。
「わっ!」
「おっと!」
鉄の棒を運んでいてよろけたドロテをルシアンが支えた。
「あ、有難う」
「いや。それは俺が運ぶからドロテはもう少し軽いのを運んでくれ」
言うとルシアンは5本もの鉄の棒を担いで歩き出した。
「す、すごい力ね」
「俺は農家だからな、こういう事は慣れている・・・」
夕暮れ時、広い畑のまんなかで一人の少年が剣を振っていた。
継ぎはぎの服を着ていて足元は土で汚れている。
とても騎士等には見えないが玉の汗をかき一心不乱に幅広の長剣を振っていた。
剣は畑で拾ったもので刃こぼれが激しく錆付いてしまっているが棒切れを振るよりはぜんぜん良い。
「ルシアン兄ちゃ~んっ!そろそろ帰ろうよ~!」
「わかったー!今行く!」
遠くのあぜ道から弟たちに呼ばれた少年は振っていた剣を地面に刺してゆっくりと歩き出した。
「兄さん、昨日より腕が大きくなったね!」
小学校低学年ぐらいの小さな女の子が笑顔でルシアンの腕にぶら下がった。
「ばっかだなぁチアラは、一日で大きくなんてなるもんかっ」
女の子よりも少し背の高い男の子が指摘すると女の子は鼻先にシワをよせてべーっと舌を出した。
「はは、ソラル、チアラもそのうち分かるようになるさ」
「よいしょっ!ただいまー!」
チアラが全身を使って建付けの悪い引き戸を開けた。
「お帰りルシアン兄さんソラル」
「ただいま、セシル」
「チアラもいるもんっ!」
「はいはい、お帰りなさいチアラ」
お帰りなさいを催促したチアラはえへへと、セシルの腰に抱き着いた。
「兄さんお帰りなさい!今ご飯の用意をするね」
「ああ、頼む」
家の中には男の子が二人と女の子が一人いた。皆ルシアンの弟と妹だ。
12畳程の広さの平屋に母と6人の兄妹が住んでいる。父はルシアンが10歳の時領主同士の争いに巻き込まれて死んだ。
「母さんは?」
「領主様の所に行ってるよ。先にご飯たべててって!」
「・・・またアイツのところか」
母アリシアは村でも評判の美人だ。結婚し6人もの子を産んでも尚美しく優しいアリシアは兄妹自慢の母だ。そんな母を父が死んでから領主のガブリエル・ステブナン伯爵が事あるごとに呼びつけ何かと用事を押し付けるようになり、最近はほとんど毎日伯爵家に出向いている。
父の死の原因を作ったガブリエル公爵をルシアンは許せなかった。いくら駄賃を貰っていて家計の為だと言ってもそんな奴の所に通う母の事も最近はあまり良くは思っていない。
「はい、どうぞ」
長女のセシルが食事を運んで来てくれた。
食事と言っても家の横で採れた芋や野菜を煮ただけのシンプルな物だ。広い畑で小麦を育てているが高価で小作人である自分たちの口には入らない。
「それにしてもお母さん今日は遅いわねぇ・・・」
ふと窓の外に目をやったセシルが呟いた。
「もう少しで兄さんを騎士学校に行かせてあげられるって言ってたからお仕事がんばっているのかなぁ?・・・」
「!だめっ!」
セシルが四男のソラルの口を慌てて塞いだ。
「何の事だ?」
「な、何でもないのよ兄さん、何でも!・・・」
ルシアンは数秒セシルを見つめた後受け取ったばかりのスプーンと皿を置いた。
「迎えに行ってくる、先に食べてるんだ」
「あ!兄さん!・・・」
ルシアンは家を飛び出して行った。
領主の屋敷前まで来たが、門前で立哨している衛兵が敷地内には入れてくれなかった。
ルシアンはしかたなく門から少し離れた木陰で母を待つことにした。
暫くすると屋敷から出てくる人影が見えた。
人影は小走りで門を出て来た。母アリシアだ。
「母さん・・・!」
夕暮れ時で良く分からなかったが、近くで母の姿を見たときハッとした。
明らかに髪や着衣が乱れていて首筋には赤い痣の様なものが見えた。
「ル、ルシアン!む、迎えに来てくれたのね・・・」
突然現れたルシアンを見て母は驚き、慌てて着衣のあちこちを引っ張りながら体裁を整えていたが15のルシアンには母に何が起こったのか、何をしてきたのかすぐにピンときた。
「か、母さん・・・」
「ルシアン・・・なんでもないのよ、ちょっと水差しをこぼしてしまって・・・」
くっ!
ルシアンは駆けだした。
「ルシアンッ!」
何故だか分からないが走らずにはいられなくなって闇雲に走った。
貴族の奴らは父の命を奪った!母はその貴族に体を売った!自分の為に!
いや、母が望んだわけではなく、無理やり犯されたのかもしれない。
くそっ!くそっ!
涙があふれた。
領主が母にちょっかいをかけるようになった時から注意しておくべきだった。
貴族なんてクズしかいない。
領主の抱える兵士は修練と言って畑の中でチャンバラを始める。時には馬に乗ったままやってきて一生懸命面倒を見て来た畑を滅茶苦茶にしていく。そんな奴らの口に入れる小麦を自分達が作っている矛盾。
へらへらと笑いながら丹精込めて育てた作物を平気で踏みつける兵士の顔が目に焼き付いて離れない。
元々貧乏な家だったが領主同士の争いに巻き込まれ、父が死んでから家計はより一層苦しくなった。
ある日騎士団の収入が高額だと知ってからはずっと「騎士団に入りたい」と言い続けていたが騎士団に入れるのは貴族だけだと知った。騎士学校への入学金は平民が一生かかっても払える額ではないからだ。
それでもルシアンは畑で拾った剣を毎日振った。騎士学校では座学もあると聞いて学校に通う生徒が捨てて行った教科書で読み書きを覚えた。母は「一緒に夢を叶えよう」と言ってくれて毎日泥にまみれて働いた。
村の連中からはあそこの長男は仕事もしないで毎日錆びた剣を振っている親不孝者だと罵られてきたが騎士団入団を夢見て耐えてきた。
絶対に騎士になって貴族を領主をぶちのめして父の仇を討つんだ!母を辱めたアイツを絶対に許さない!
あれ以来母とはろくに話もしていない。騎士学校への入学手続きをしてくれた後も「有難う」と礼の一言も言っていない。
自分の夢の為に働き者の父を裏切った母に対してどう接したら良いのか分からないからだ。
しかも自分は今憎い貴族から借りた金で騎士学校にいる。
自分は間違っているのだろうか?あのまま農民として我慢して生きていれば母も辛い思いをしなくて済んだのかもしれない。母に、家族に楽な生活をさせたくて騎士学校に入ったのに自分がみんなを苦しめているのではないか?!。
違う!騎士学校を卒業して騎士団に入れば全ては解決する。
いや、待て、そのあと俺は金を貸してくれた貴族に刃を向けるのか??
様々な矛盾を処理できず、答えが見つからない。
ルシアンは入学後も眠れない日が続いている。
「(俺はどうしたら良い!!)父さん・・・」
「・・・シアン」
「ルシアンってば!!」
「あ?」
「あ?じゃないわよっ!ぼーっとしてないで、仕事してよ」
「うるさいっ!!」
「ひ!!・・・」
驚いたドロテは胸の前で両拳を握って硬直した。
突然怒鳴ったルシアンを皆唖然として見つめた。
「あ・・・すまん・・・」
メリッサが何かを言いかけたドロテの肩に手をのせて制した。
「言いたいことは分かります。でも今はやめておきませんか?彼も何か悩んでいるのかもしれない」
「・・・分かったわよ・・」
「ユーゴ、お前に言われて作らせたんだが、このタコの様な形のものはなんだろう?」
セルジュが指さしたのは直径が40センチ高さが50センチの丸太で丸太の外周から下方に向かって1メートル程の足が4本生えている。
「それは手用築頭といって、長い杭を打ち込む道具です」
「ほう・・??」
「どうやって使うんだ?」
「この脚みたいな棒の先を二人か四人で持って・・・じゃあ、やってみよう。一番力があるルシアン、反対側の脚を二本持ってくれ」
「分かった」
「それからメリッサは杭を立てて支えていてほしい」
「分かりました」
ユーゴとルシアンが向かい合い、メリッサの支える杭の頭に手用築頭の本体を乗せた。
「これで準備完了で、次に二人で声を掛け合って手用築頭を持ち上げて腕力と体重を使って杭の頭に叩きつけるんだ。一で腰を落として力を溜めて、二で築頭を持ち上げる。そして三で体重を使って一気に引きき下ろして杭を打ち込む」
「なるほど」
「いくぞ!。イチニッサン!」
杭の上方に浮いた手用築頭を二人が力一杯下方に引っ張ると、カーン!という乾いた音と共にメリッサよりも背の高い杭が少し地面に沈んだ。
「おー!」
「こうやって打ち込んでいくんだ」
「なるほど、これは便利だな、高い所に登らなくても長い杭が打てるのか。ユーゴ、今度厩舎を修繕するときにやってくれ」
「あはは・・(1年後にね)」
杭を二本打ち込んだ後、空いている穴に鉄の棒を通して鉄棒を作った。
「これで一つ完成だ」
「これはどうやって使うんだ?」
「じゃ、やってみせよう」
ユーゴは鉄棒にぶら下がり、懸垂をしてみせた。
30回ほど懸垂をやってみせると「次私がやってみるわっ」と、やる気満々でドロテがぶら下がったのだがもじもじするだけで一度も体を持ち上げる事は出来なかった。
「えええ・・・」
へばって着地したドロテが驚愕の表情をユーゴに向ける。
「・・・あなた、ホントに何者なの?」
「はは、毎日頑張れば必ず上がるようになる」
昼を知らせる鐘が聞こえたところで一旦作業を中断し、ユーゴ達は昼食を摂りに学校へ一旦戻った。
セルジュとイザベルは号泣しながら帰って行った。
昼食後すぐに作業を再開した。
ユーゴ、ルシアン、メリッサの三人は残りの鉄棒を、レティシアとドロテは鎌とかけやを使ってトレーニング場の足場の整備だ。
その後綱登り用の綱を樹上から吊るし、5基のトレーニングベンチを設置して午後4時頃森の中にトレーニング場が完成した。
「おお!」
「できましたね!」
「どうやって使うのかわからないけど!」
鉄棒5基と腹筋用に傾斜になっているトレーニングベンチ5基、それに森にある樹木からぶら下げた綱5本だけだが、これだけでも十分な筋トレが出来る。
「まず、鉄棒だけど、あげられる回数で構わないから頑張る」
「さっきやってみたけど、7回しか上がらなかった。ユーゴ凄いな」
「ルシアン、7回上がるならインターバルを挟んで7回を3セット朝夕毎日やればいい。そのうちに7回が8回に、8回が9回と必ずできる回数が増えていく」
「そうなのか」
「ああ、それから、傾斜のついている長椅子は仰向けで低い方に頭をのせて、皮ベルトに足を挟んで腹の筋力だけで起き上がる。これを50回」
「ご、50?!」
「・・・」
「綱登りは往復3回、それとスクワットを100回で1セットだ」
「ふ、ふんっ、た、大したことないわね・・・」
「以上を朝夕各3セット必ずやること」
「!」
「さ・・・!」
それに加えて朝1時間、夕半時間のランニングだ。
「!!」
「マジか・・・」
「まだやらなければいけない事は沢山ある。だけどこれはあくまでも基本なのでこれぐらいはサクッとやれるようにしよう」
「・・・」
・・・これを学校の修練以外に毎日やるのか・・・。
笑顔のユーゴとは対照的に皆堅い表情だ。
「じゃ、ランニング行くぞ!」
「えええ!?」
「い、今からですか?!」
「もちろんだ!せっかく作ったんだ、やらないと勿体ないだろ?それに今やらなきゃいけない事は今やるんだ。行くぞ!!」
「おにいさま、待ってください~」
「鬼様だ・・・」
「鬼様ですね・・・」
「鬼様だわ・・・」
チームHは次のステップに入った。




