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『連続殺人鬼の棲む廃病院』

 俺の名前は『高梨勇たかなしいさむ。』今は、特に定職にも就かず、YouTuberをやっている。おっと、誤解しないでくれよ? これでもちゃんと食っていけるぐらいの収入はあるんだ。


 俺がやっているチャンネルは廃墟探索のチャンネルだ。特に人気なのは心霊スポット探索だ。今日もこれからメンバーと共に、廃墟探索に行くんだが、今日は一味違うんだ!


 メンバーは今までと違うメンバーにしてきたし、それに何よりあの『連続殺人鬼が棲む廃病院』と呼ばれる廃墟で撮影するんだ。きっといい画が撮れるに違いない!


 早速俺は車に乗り込み、それぞれのメンバーの家に行きメンバーを集めた。メンバーはカメラマンの『鷲津太一わしづたいち』、照明担当の俺、盛り上げ担当の『小林光也こばやしみつや』と『金屋美香かなやみか』の合計四人。俺達はそれぞれがSNSで知り合った新メンバーだ。


 俺たちは道なき道をカーナビの指示通りに進んで行く。買っておいた車が四駆でよかったぜ……。

「なぁ、勇。本当にこんなところに『連続殺人鬼の廃病院』なんてあるのかよ?今回初めて行くんだろ、大丈夫なのか?」

「俺も初めは信じられなかったさ。だけどあそこには昔集落があったみたいでな。そこで唯一の病院だったらしい。」

 集落も過疎化が進み、次第に廃れてしまい、病院も必要なくなってしまったというわけだ。ただここには登山を楽しむ人間が多いらしく、そいつらを狙った物盗りの連続殺人鬼がいるんだ。

 山深い場所にあるから、死体もあがってこないらしい。


ーーーー。

「よし、みんな降りろ。こっからは歩きだ。太一、まだカメラは回さなくていいぞ。あの廃病院はな、俺が見つけたとっておきの場所なんだ、誰にも知られたくはない。」

「わ、わかった。」

 俺達は照明をもとにただひたすら歩いて行く。時間は夜の十時。俺達は社会人で、それぞれ一人暮らしをしているため、親にどうこう言われる、そんな心配もなかった。


「見えてきたぞ、あの木々の向こうにチラッと見える白い建物、あそこがそうだ。太一は、そうだな……建物の前あたりで動画を回してくれ。」

 俺たちは藪漕ぎをしながら少しずつ少しずつ廃病院へと近づいていく。

「今日は撮影が終わったら、パーッとやるぞ!光也、バーはおさえてあるか!?」

「勿論ッスよ!今日は派手に飲みましょう、いい動画が撮れますよ!」

「私もたくさん飲むぞー!!」

 それぞれのやる気も十分だ!俺達は、勢いそのままに廃病院へと足を踏み入れた。


 俺達は、病院の入り口すぐで撮影を開始する。廃病院の中はカビだらけで、ホコリまみれ。天井は抜け落ち、床板も朽ちて草が生い茂っている。

「はい、皆さんこんにちは!心霊スポット探索の『Ghost TV』です!」

「今日は伝説となっていた『連続殺人鬼の棲む廃病院』を遂に見つけ、今日はその廃病院の探索を行いたいと思います!」

 光也と美香は、二人ともまだメンバーに入ったばっかりで、馴染めていないと思っていたが、息ぴったりの様だな。

 俺は喋るのが苦手な為、表舞台に立つことはない。だから新メンバーを見つけるのにも苦労した。


「うわっ!ここの部屋……。病室かな……。めちゃくちゃ朽ちてるよ……。」

 光也は今にも抜け落ちそうな床をゆっくりと確認しながら歩いて病室の中を探索していく。

 特にこれといって収穫のあるような動画は撮れたわけではないが、これはこれでリアリティーがあって面白いと思う。

 俺達は続けて二階、三階と探索を続けたが、やはり目立った収穫は得られなかった。


 特に目立った収穫もこれと言ってなく、俺達は一階まで降りてくると、霊安室を見つける。

「さ、さすがに……この中には……。」

 光也は一歩後ずさって霊安室に入る事を拒んだが、積極的な美香が光也の背中を押し、霊安室のドアを開けて中に入っていく。


「ここが……霊安室……。」

 俺達の眼前には、いくつもの引出しの様な物がついた壁が立ちはだかっていた。まるで、この中を開けるな、と言っているかの様に……。

 そう、かつてはこの中には遺体が入っていた事もあるのだ……。


「あ、おい、美香!!」

 光也が叫んだ先には、霊安室の遺体を安置する為の引き戸に手を伸ばす。

「なーんてね、さすがにそこまではしないわよ。さ、他のとこに行きましょ!?」

 美香はパッと手を引っ込めると、ニカッと笑いながら先に霊安室から出て行ってしまう。


「あら…………?これ、何かしら……。」

 美香の声が霊安室の外から聞こえてくる。俺達は走って美香の声のした場所に向かう。

 美香が指差したのは、霊安室のすぐ脇の小さな隙間にあった、金属の蓋のような物だった。

「コレは……ハッチみたいだね……。中に何かしらあるかも。」

 光也はハッチを近くに置いてあったバールでこじ開けると、そこには地下に通じる階段があったのだ。

「やったぞ、こりゃ大発見だ!」

 光也と美香は歓喜に沸きながら、すぐ

様階段を駆け下りていく。

 そして俺達が目にしたのは……凄惨たるあり様の血の池地獄だった。さっきからしていた鉄のようなニオイはこのニオイだったのか……。

「うっ………うぉぇっ!!」

「うげぇっ…………!!」

「おげぇぇっ…………!!」

 三人共に、血の池地獄に耐えられなくなり、遂に吐き出してしまったのだった。



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