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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
最終話:無自覚最強の二人は、今日も気ままに冒険する

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【幕引き】明日も明後日も冒険者

「魔王が倒された!!」

「ついに、あの魔王が討伐されたんだ!!」

「今日は祭りだーッ!!」



 転移魔法でフラウディア王国へ帰還すると、街中がお祭り騒ぎのような状態だった。


 通行人は肩を抱き合って泣きながら笑い、酔っ払いは酒瓶を取り出して浴びるように酒を飲む。知らない人同士で熱い抱擁を交わして、病人すらも喜びのあまり裸足で外を駆け出す始末だ。


 そんな騒がしい状態のフラウディア王国へ転移してしまったユウとゼノ、そしてローザの三人は揃って「うわ」と驚きを露わにした。



「みんな、どうしたんだろうね?」

「魔王が倒されたって言ってるけど、誰か他の冒険者が倒したんじゃねェか?」

「そうなの? ぼくたちが倒したのは工場長のおじちゃんだもんね、魔王を倒せた冒険者さんは凄いなぁ」



 ユウは感心したように言う。

 叶うことならば、自分が戦って倒してみたかった。まあ、世の中は早い者勝ちなので仕方がないのだが。


 しょんぼりと肩を落とすユウの頭を、ゼノがぐりぐりと乱暴に撫でる。



「まあまあ、気にすんなよユウ坊。ドラゴンとか色々強そうなのは他にもいるだろ?」

「うん、そうだね。強いの、他にもいっぱいだもんね」



 ゼノの言葉で明るさを取り戻したユウは、早速とばかりに冒険者ギルドの扉を開け放ち、大きな声で「ただいまー!!」と帰還の挨拶をした。


 ギルド内では、たくさんの冒険者が受付に詰め寄っていた。

 話の内容は「誰が魔王を倒したのか」というものばかりだったが、詰め寄られている職員たちも情報がないようで、返答に困っている様子だ。


 ユウとゼノは受付に詰め寄る冒険者たちを遠巻きに眺め、他人事のように呟く。



「大変そうだねぇ、おねーさんたち」

「そうだなァ。ありゃしばらくかかりそうだな」



 報告はまたの機会にしようか、と冒険者ギルドを去ろうとしたが、



「あ、おい。お前ら」

「あ、しゃちょー」

「誰が社長だよ」



 冒険者ギルドの責任者であるクラウド・リノアが、ユウとゼノを呼び止める。



「まさかと思うが、お前らじゃねえよな?」

「何が?」

「魔王だよ、魔王。お前らが魔王を倒したんじゃねえのかって、うちの職員の間でも囁かれてんだよ」



 クラウドがそう言うと、冒険者ギルド内が水を打ったような静けさに満たされる。


 受付に詰め寄っていた冒険者たちの視線が、ユウとゼノに突き刺さった。「まさか、あいつらが?」と疑っているような雰囲気さえある。


 だから、ユウとゼノはしっかりと首を横に振って否定した。



「違うよ。ぼくたち、カロンナイトを倒すお仕事しかしてないもん」

「そりゃ、魔王城には行ったけどよォ。あそこにいたのはただの工場長だぜ、工場長」

「こ、工場長?」



 クラウドが眉根を寄せるが、彼が何かを言うより先にゼノが仕事内容の記載された羊皮紙を顔面に突きつける。

 羊皮紙にはしっかりと『完了』の二文字が刻まれて、完璧に仕事が終わっていることを告げていた。



「後日、報酬は受け取りにくる。今日のところはユウ坊がうんざりしてる様子だから帰るぜ」



 ゼノに「行くぞ」と促されて、ユウは彼女の背中を追いかける。が、ピタリと足を止めると、クラウドへと振り返った。


 羊皮紙を片手に立ち尽くしていたクラウドは、ユウの視線を受けて「どうした?」と問いかける。



「今日もお仕事、ありがとーございました!!」



 しっかりとお仕事をくれたことに対するお礼を告げてから、ユウはゼノを追いかけた。



 ☆



「妾は疲れたのじゃ。先に帰って掃除でもしている故、お主らはゆっくり帰ってくるのじゃ」



 人混みにうんざりした様子のローザは、ゼノから鍵を受け取って森の中にある家へ帰っていった。


 一仕事を終えたご褒美として、今夜のご馳走の買い出しをする為に、ユウとゼノは市場へ繰り出す。


 やはりどこもかしこも人で溢れ返り、そして抱き合って「やった!!」と騒いでいた。魔王が倒されたことが、それほど嬉しいのだろう。

 人類全員が泣いて喜ぶぐらいの出来事なのだから、魔王はそれほど人類を脅かす存在だったのだと改めて実感する。



「ゼノ、ゼノ」

「あ? どうした、ユウ坊」

「魔王を倒したのって、誰なんだろうね?」

「そりゃ、あれだろ。巷で有名な異世界転生者」

「てんせ?」



 聞き覚えのない単語に、ユウは首を傾げる。



「ほら、よくあるだろ。神様が異世界の奴らを転生させて、その際に強い加護を与えたりする奴。そう言う奴らはめちゃくちゃ強いらしいぞ、ソイツなんじゃねェの?」

「そうなんだぁ」



 そんな強い人がいるとは知らなかったユウは、ポツリと「ぼくも会ってみたかったなぁ」と呟く。



「じゃあ、探しに行けばいいだろ。アタシらは冒険者なんだから」

「そうだよね、探しに行けばいいもんね!! 世界中を冒険してお仕事するのが、ぼくたちだもんね!!」

「そうそう。明日はどんな仕事を受けられるか楽しみにしておけよ」

「楽しみ!!」



 長杖ロッドを掲げて喜ぶユウは、



「ゼノ、ゼノ」

「何だよ」

「これからもぼくたち、冒険者だね!!」

「そうだな。明日も明後日も、アタシらは気ままな冒険者だ」



 魔王が討伐され、平和を取り戻した世の中を、最強の自覚がまるでないユウとゼノは、まだ見ぬ刺激的な明日の訪れを心待ちにするのだった。


 彼らは最強であることを知らぬまま、気ままな冒険を続けていく。

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