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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第12話:突撃、最強の魔王のお膝元!

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【Ⅴ】コルガ村でおやすみ

 景色が切り替わり、栄えた街並みから長閑な村の入り口に変貌を遂げる。


 二度目の転移魔法も成功させたユウは、自信満々に胸を張って「えへん」と言う。



「成功です!!」

「おう、そうだな。凄ェぞ、ユウ坊」



 胸を張るユウの頭を撫でてやるゼノは、素直な称賛を口にした。


 ぐりぐりと頭を撫でてくる彼女の手が心地よく、ユウはゼノの手のひらに頭を押し付けて「もっと撫でてぇ」と強請る。

 二度も座標計算による転移魔法を用いたのだ、これぐらいのご褒美は然るべきだろう。


 ローザもユウの腰に抱きついて、我がことのように「凄いのじゃ、凄いのじゃ!!」と喜んでいた。



「さすがユウ坊だな、本当に優秀な魔法使い様だよオマエは」

「凄いのじゃ、ご主人!! 座標計算による転移魔法を二度も成功させるなど、お主は天才なのじゃ!!」

「え、えへへ」



 二人から手放しの称賛を与えられ、ユウは照れ臭そうに笑う。

 ここで傲慢さを見せない辺りが、精神的に子供と同程度のユウならではだろう。美人と可愛い女の子に褒められれば、男であれば天狗になってもおかしくない。



「よし、今日はこの村で休むぞ」

「うん」

「賛成なのじゃ」



 ゼノの言葉にユウとローザは頷き、コルガ村の敷地内へ足を踏み入れる。


 ユウとゼノが最初に降り立った村よりも発展しているが、やはり村は村である。エレノラよりも建物の数は少なく、武器屋と雑貨屋が一緒くたになっていた。

 人の影も疎らであり、子供たちが村の広場で追いかけっこをして遊んでいる姿が見える。畑もあるのか、老人たちが農作業に精を出していた。



「おや、この村に旅人さんがいらっしゃるとは珍しいねぇ」



 宿屋を探している最中のユウたちは、通行人の老婆に呼び止められる。


 ニコニコと人当たりの良さそうな笑みを浮かべる老婆は、ローザを見るなり「お嬢ちゃんに、これをやろうかねぇ」と籠から袋を取り出した。

 中身はどうやら焼き菓子のようで、綺麗に包装されている。彼女の手作りだろうか。


 ローザは子供扱いされたことが気に食わないようだが、純粋な好意を無碍にするほど礼儀を知らない訳でもないにで「感謝するのじゃ」と焼き菓子を受け取った。



「婆さん、このコルガ村に宿屋はあるか? アタシらはそこに泊まりたいんだが」

「私の孫娘が経営してるのがそうさね。ほれ、広場の手前にあるじゃろ」



 しわしわの指先を伸ばして老婆が示した先には、確かに寝台の形をした看板が吊り下がっている建物があった。宿屋の証拠である。



「最近ねぇ、孫娘が階段から落ちて足を骨折しちまったんだ。私も手伝ってやりたいんだが、この通りの老ぼれでねぇ。すまないが、夕飯は自分で調達してくれないかねぇ」

「そうなの? 大変だねぇ」



 老婆の言葉に、ユウはそう返す。

 夕飯が食べられなくてしょんぼりしている様子はなく、ただ純粋に老婆の孫娘の怪我を心配している様子だった。


 杖をつきながら歩き去っていく老婆を見送り、ユウたちは宿屋に向かう。


 扉を押し開けると、来客を告げるカランカランという小さな鐘が音を奏でた。

 やや狭い待合場所の先に受付があり、そこに松葉杖をつく若い女性がいた。どうやら窓の掃除をしたいようだが、体が思うように動かずに困っているらしい。



「あ、すみませんお客様。少々お待ちください」



 女性はユウたちの存在に気づくと、掃除を中断して受付までやってくる。



「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」

「おう。ここで一泊したいんだが、部屋は三人一緒でいい。いくらになる?」

「でしたら一泊五ガルドになりますが、よろしいでしょうか?」

「ああ」



 ゼノが三人分の宿泊費を支払い、女性から部屋の鍵を受け取る。


 骨折という怪我を負いながらもにこやかに対応する女性を見据え、ユウは「おねーさん」と呼びかける。



「おけが、大丈夫?」

「え、ええ。大丈夫よ」



 見た目は立派な青年だが、口調がまるで幼い子供のようなユウに話しかけられ、女性は若干混乱したように応じる。



「この村にはお医者様はいらっしゃるけれど、治癒師ヒーラーはいらっしゃらないから……治癒師は基本的に大きく発展した街にしかいないし」



 困ったように言う女性に、ユウは長杖ロッドを掲げて言う。



「ぼくが治したげる!!」

「え、き、君が? 治癒師じゃないわよね?」



 治すと宣言するユウに、女性は驚く素振りを見せる。


 しかし、ユウの意思は変わらない。

 彼は治癒師ではないが、治癒魔法は得意なのだ。魔法全般が得意でよかった、と心の底から思う。


 掲げた長杖を振り回すユウは、いつものように魔法の呪文を唱える。



「《元気になーれ》」



 緑色の光が女性を包み込む。


 治癒魔法をかけられた女性は「え、え?」と驚いた様子で、自分の骨折した足を見下ろす。

 分厚い包帯と石膏で固められた足は、治癒魔法によって綺麗に回復してしまった。松葉杖を脇に置き、女性は治ったことを確認するように床を強く踏んでみる。


 女性は「え、嘘……治ってる……」と呟き、



「君、魔法の天才なんだね」

「えへん。ぼく、魔法が得意なんだ」



 ユウは自慢げに胸を張り、だが身内以外に自慢げな態度で振る舞うのが恥ずかしいのか、すぐに照れ臭そうに顔を赤らめて「えへへ……」とはにかんだ。

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