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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第12話:突撃、最強の魔王のお膝元!

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【Ⅲ】計算式転移魔法

 どうやら、フラウディア王国からカザンドラまでの直行便はなく、いくつかの馬車を経由しなければならないようだ。


 地図と馬車の時刻表を睨みつけながら、ゼノが低い声で唸る。



「何本も馬車を乗り継いで行かなけりゃならねェなんて、面倒なところだな」

「遠いの?」



 ゼノのすぐ側でローザと一緒に馬車を待っていたユウは、難しい表情を浮かべるダークエルフに問いかける。



「遠いな。めちゃくちゃ遠い」

「どれぐらい?」

「最低でも馬車を三回乗り換えるぐらい」



 ゼノが端的に遠さを表すと、ユウは「ええー」と不満げに唇を尖らせた。



「三回も乗るの?」

「それぐらいにカザンドラは遠いんだよ。諦めろ、ユウ坊」

「むー……」



 不満は口にするものの、ユウはゼノに強く意見を言わない。


 遠いと言うならば、ユウが転移魔法でカザンドラまで行ければ問題はないのだ。彼は魔法の天才であり、転移魔法さえ使えればカザンドラまで一瞬である。


 しかし、転移魔法は一度訪れたことのある場所にしか行けないのだ。

 カザンドラには初めて行くので、ユウの転移魔法は使えない。どうしてもカザンドラまで転移魔法を使いたければ、座標の計算や難しい工程を経なければならないのだ。


 ユウはガリガリと長杖ロッドの先端で石畳を擦ると、



「けーさん……まほーじん……」

「ユウ坊、何をぶつぶつ言ってんだ?」



 ぶつぶつと独り言を呟くユウに、ゼノが地図をしまいながら問いかける。


 ユウはガリガリと長杖の先端を石畳に擦り付けていたが、唐突にピタリと動きを止めると「分かった」と言う。



「けーさんと、まほーじん!!」

「計算と魔法陣?」

「頑張る!!」



 ユウはムンと握り拳で気合を示すと、



「ゼノ、ゼノ。紙とペンない?」

「さすがに持ってねェな。買わねェと」

「買って!!」



 紙とペンを要求するユウの熱意に押し負け、ゼノは「お、おう。分かった」と頷く。



「おい、ドジっ子メイド。うちの魔法使い様が紙とペンをご所望だ。ちょっと走って買ってこい」

「何故に妾なのじゃい!!」



 ゼノに命じられ、ローザは渋々と金を受け取って雑貨屋に走る。


 ユウは「あれで、これで……」とぶつぶつと呟き、ひたすら計算式を頭の中で組み立てる。カザンドラまで直接飛べなくても、経由するべき街には飛べると思うのだ。



 ☆



 しばらくして、ローザが紙袋を片手に戻ってきた。



「ほれ。紙と普通の羽ペンでよかったのじゃ?」

「うん。ありがと、ローザちゃん」



 ユウはローザの手から紙袋を受け取り、袋をひっくり返して中身をぶち撒ける。


 ローザが購入してきたのは、そこそこの質の紙が麻紐で束にまとめられたものと、羽ペンと黒いインク瓶だ。書ければ問題ない。

 羽ペンを持ち、インク瓶に先端を浸して、紙の表面に羽ペンを走らせる。



「…………」

「…………」

「…………何書いてんだろうな、ユウ坊は」

「…………何を書いておるんじゃろうな、ご主人は」



 ユウはゼノとローザの話し声に気づかないぐらい、ガリガリガリガリと紙に計算式を書き連ねていく。


 ゼノとローザには彼が何を書いているのか不明だが、これは魔法式である。

 特に転移魔法は、行ったことのある場所以外を訪れる場合は、出発地の座標と目的地の座標を結んだ上で魔法によって繋がなければならないのだ。この作業が極めて面倒臭い。


 カザンドラまでの座標計算となると、あまりに遠すぎて座標の計算が面倒になるので、今回は近くを転々と経由するのが最適解だろう。


 ガリガリと魔法式を書き込んで三〇秒ほど、ユウはやり切ったとばかりに額の汗を拭って「ふう」と一息吐いた。



「出来た!!」



 ユウは自信満々に、ゼノとローザへ計算式を見せる。


 しかし、二人はその計算式が何を示しているのか全く分かっていなかった。

 揃って首を傾げると、ゼノが紙に記された計算式を示す。



「これ一体何を示してるんだ?」

「あ、書いてなかった」



 ユウはゼノの指摘を受けて、新たな紙に「えーと、えーと」と計算式から算出された魔法陣を書き込んでいく。


 ぐるりと円を描き、その中に幾何学模様を追加していく。事情を知らない相手から見れば、子供の落書きのようにいびつだ。


 だが、その魔法陣を見たローザが「あ」と声を上げる。



「転移魔法じゃな。にしてはかなり歪な仕上がりになってるのぅ」

「うん。近くの街まで転移するの」



 ユウはゼノに「地図見せて」と要求し、彼女から地図を受け取る。


 地図を広げて、彼が指で示した街の名前は『エレノラ』だ。



「街を転々と転移魔法で移動するの。そうすれば移動に長い時間をかけなくていいでしょ?」

「オマエ……やっぱり天才だな?」



 ゼノにポンポンと頭を撫でられ、ユウは自慢げに「えへん」と胸を張る。



「じゃあね、早速飛ぼうか。あとは魔力を流すだけだよ!!」

「おう。そうすっか。ドジっ子メイドもいいな?」

「何故に妾の扱いはそんなに酷いのじゃ。まあ妾も転移魔法に関しては文句ないのじゃ」



 ローザはチラリとユウを見やると、



「……こんな子供っぽいのに、魔法式まで計算できるとは凄いものじゃな」

「ローザちゃんにも褒められた!! ぼく嬉しい!!」



 まさかローザにも褒められるとは思わなかったユウは本気で喜ぶと、魔法陣に長杖を向ける。


 しゃらしゃらと装飾がぶつかり合って綺麗な音を奏でると同時に、紙に書き込まれた魔法陣が光り輝き――。


 転移魔法が発動する。

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