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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第11話:おにーさんはへんたいさん

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【Ⅰ】おうちを買おう

 魔王四天王の首なし騎士ダーウィンと大魔女サラサを倒したユウとゼノは、すっかり有名人となった。


 フラウディア王国内を歩けば注目され、隙あらば新聞記者がユウを取り囲んでゼノに追い払われ、挙げ句の果てに根城にしている宿屋にまで信者らしき人々が押し掛けてくる始末である。

 ここ数日はそんな扱いばかりだったので、ユウは完全にヘソを曲げてしまっていた。



「もーやだ、お外行かない!!」



 布団を被って饅頭まんじゅうのように丸まり、寝台を占領するユウは駄々を捏ねた。


 駄々を捏ねたくなるのも当たり前である。

 何せ、街を歩けば必ずと言っていいほど新聞記者に取り囲まれて、訳の分からない質問の嵐に巻き込まれるのだ。ゼノがいてくれなければ、確実に魔法の餌食にしていただろう。


 ゼノも「確かになァ」と困り果てていた。



「毎度のように新聞記者に囲まれてりゃ、そりゃ嫌になるよなァ」

「しかしのぅ、お主らは格好のネタじゃからな」



 優雅に紅茶を啜りながら、侍従メイド姿のローザが言う。



「新聞記者にとって、魔王四天王を二人もあっさりと倒してしまったお主らは生きたネタの宝庫じゃ。彼奴きゃつらも飯の為にお主らの尻を追いかけ回すのじゃろ」

「だからって、こっちが参るまで追いかけ回してくるかよ普通」

「仕方ないのじゃろ。そうでもしなければ、他社に追い抜かれてしまいそうになるんじゃし」



 注目されていないローザは、まるで他人事のように応じる。


 ゼノは恨みがましそうな視線をローザにやり、そしてふと何かを思いついた。

 というより、前々から話していたことをようやく思い出した、というような感じだった。



「ユウ坊」

「……なあに、ゼノ。お外は行かないよ、ぼく」



 こんもりと山を成す布団の下から、ユウが顔を覗かせる。


 ここ数日、新聞記者に囲まれていた影響で、彼の顔にも疲弊の色が滲んでいた。

 混乱状態に陥って魔法をぶっ放そうとしなかったのは、褒めてやるべきだろう。彼にしてはよく我慢した方だ。


 ゼノはユウの頬を指先でくすぐると、



「家を買うぞ」

「おうち?」

「前に言ってただろ。報酬の金が貯まったから、家を買うって」



 そう言えば、首なし騎士ダーウィンを倒したことで報酬の金がたくさん貯まっていた。


 レイド戦に参加する前に、ユウとゼノは不動産屋に行こうとしていたのだ。

 結局はうやむやになってしまったが、今こそ我が家を購入する時なのだろう。


 布団を跳ね除けてガバリと起き上がったユウは、ゼノの両腕を取るとぶんぶんと上下左右に振り回す。



「行こ!! おうち買お!!」

「そうだな。静かな森の中に家を買おうぜ」



 すっかりその気になったユウは、壁に立てかけてあった長杖ロッドを手に取ると「すぐ行こ!! 売り切れちゃう!!」とはしゃいだ様子で外出を促す。

 先程まで絶対に外には出ないと息巻いていたというのに、態度がまるっと変わってしまった。


 ゼノは呆れたように肩を竦め、



「家はすぐに売り切れねェよ。まあでも、善は急げだな」



 同じように立てかけてあった銀色の長弓ロングボウを背負ってゼノは、



「じゃあ、不動産屋に行くか」

「うん!!」

「日当たり最悪の家を選ぶんじゃぞ」

「何言ってんだ、オマエも来るんだよ」

「うええッ!?」



 完全に留守番するつもりでいたローザの首根っこを無理やり引っ掴んで、ゼノは問答無用で外に連行するのだった。



 ☆



 冒険者ギルドから紹介を受けた不動産屋の名前は、キラヌア不動産という店だった。


 小ぢんまりとした不動産屋であり、フラウディア王国で最も物件を取り扱っている不動産屋らしい。全てギルドの受付嬢から聞いた話なので定かではないが、信用に値する情報だろう。


 新聞記者や他の人々に取り囲まれないように気をつけながら、ユウとゼノはついにキラヌア不動産の前までやってきた。


 古びた看板には『キラヌア不動産』の文字が並んでいて、それだけこのフラウディア王国に昔からある不動産屋であることが分かる。

 家を借りよう、購入しようという客はいないようで、窓から店内を覗き込むが人の姿はなかった。



「すいませーん」

「はい、いらっしゃ――」



 ユウが店の扉を開ければ、小さな眼鏡をかけたお爺さんが出迎えてくれた。


 着古したシャツに毛糸のベストを着ていて、優しそうなお爺さんである。何故かユウとゼノを見つめて、石像のように固まっているが。


 店内に足を踏み入れて、しっかりと扉を閉めたユウは、石像のように固まるお爺さんに詰め寄った。



「おうちください!!」

「え、あ、ユウ・フィーネさんとゼノ・シーフェさんですか?」

「知ってるの?」

「もちろんです。お二人とも、とても有名ですから!!」



 お爺さんは居住まいを正すと、



「ようこそ、キラヌア不動産へ。店主のディラン・キラヌアと申します」



 お爺さん――ディラン・キラヌアは小さな眼鏡をかけ直し、



「ご要望は一軒家でございますか?」

「まあな。静かな場所にあるところがいい」

「ええ、ええ、承知しておりますとも。毎日のように追いかけられると、うんざりしますね」



 ディランは分厚い冊子をパラパラとめくって、一枚の羊皮紙を取り出した。


 その羊皮紙をゼノへ差し出して、



「ちょうどいいのが一件ありまして、是非いかがですか?」

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