表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第10話:魔物の大群なんて聞いてない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/94

【Ⅴ】ぶっ飛ばせ、魔女様!

「それなら早速――」



 サラサは手のひらに浮かぶ黒い球体を掲げると、



「――坊やを殺してあげる!!」



 ぶん投げてくる。


 全力で投球されてきたそれに長杖ロッドを突きつけ、ユウは「《ぽーい》」とあらぬ方向へ黒い球体を逸らした。

 簡単な軌道魔法である。魔法の軌道を逸らしたり、砲弾の軌道を逸らしたりなどの『軌道』を操るのだ。一種の妨害魔法である。


 明後日の方向へ飛んでいった黒い球体は、ちゅどーん!! と大量の魔物を巻き込んで爆発した。

 盛大な爆発だった為か、地面は抉られてその部分だけ凹んでしまっている。土も黒ずんでしまって、粉塵がもうもうと舞う。


 ユウは「ひえええ……」と顔を青褪あおざめさせ、



「あ、危なーい!!」

「殺すつもりでやってるんだから当然でしょう?」



 危険を訴えてくるユウを、サラサは鼻で笑い飛ばす。


 黒い球体を生み出してはユウに投げつけるが、ユウはそのたびに軌道魔法で軌道を逸らして妨害する。

 ちゅどん、ちゅどん、ちゅどーん!! と爆発がそこかしこで起こり、粉塵が立ち込める。ボコボコと地面が抉れることも厭わずに、魔女は爆弾をどんどん投げつけてきた。


 軌道魔法で黒い球体の軌道を逸らし続けるユウは、むぅと頬を膨らませる。



「《ぴかぴか》!!」



 軌道魔法を使用しながら、ユウは上級雷魔法を発動させる。

 並列魔法発動は並大抵の魔法使いでも使える者はおらず、他の冒険者がユウの所業に目を剥いて驚く。


 ぴしゃーんッ!! と雷がサラサの脳天めがけて落ちる。


 しかし、



「無駄よ」



 サラサの周囲を守るように透明な結界が張られ、空から落ちた雷を受け止めてしまう。雷は掻き消えてしまい、サラサは見事に無傷だった。


 ユウは「むーッ!!」と苛立ちを露わにし、



「おねーさん、いぢわる!!」

「あーら、意地悪で当然でしょう? だって私の方が優れた魔法使いだもの!!」



 サラサは豊満な肢体を抱きしめて、身を捩らせる。


 恍惚とした表情で笑うサラサに、ユウは「むー!! むー!!」と地団駄を踏む。

 こんなにおちょくられたのは初めてだ。


 ユウは魔法の腕前に絶対の自信を持っているし、今まで魔法では誰にも負けたことがなかったのだ。

 それがサラサが相手だと、まるで子供の遊びのようにあしらわれる。苛立ちが募っていくばかりだ。



「ゼノ!!」

「お?」



 いつでも側にいてくれる美しきダークエルフ――ゼノへ振り返ったユウはサラサを指差して叫ぶ。



「あれ撃って!!」

「お、いいのか?」



 ゼノは銀色の長弓ロングボウに矢をつがえると、迷わずサラサへぶっ放した。


 空気を引き裂いて飛んでいく矢。

 それを見ながら、サラサは「無駄よぉ」と嘲る。どうせ自身を覆う結界が守ってくれると思っているようだが、



「いたッ」



 結界を突き破って、矢がサラサの額に刺さる。


 サラサは額から伸びる矢に触れて、絹を裂くような甲高い絶叫を轟かせた。



「きゃあああああああッ!? な、な、何これどういうことぉ!?」

「おお、面白いぐらいに刺さるな」



 ゼノはケラケラと軽い調子で笑い飛ばし、



「なるほどなァ。首なし騎士の時はユウ坊の独壇場だったが、今度はアタシって訳か」

「ゼノ、ぼくたくさん強くしてあげるから!! あのおねーさん倒して!!」

「任せろ、ユウ坊」



 ユウは支援魔法をゼノに重ね掛けし、ゼノは銀色の長弓に矢をつがえて放つ。


 すでに能力値が限界を迎えている状態で、さらに支援魔法の効果で攻撃力が上昇しているのだ。

 そんなゼノの攻撃を受ければ、タダで済むはずがない。


 サラサは「こんなものッ!!」と風魔法で蹴散らそうとするが、



「なッ!?」



 サラサは驚愕する。


 風魔法で飛んでくる矢を振り払おうとするが、矢が逆に風魔法を蹴散らしてサラサめがけて飛んできたのだ。案の定、結界を突き破ってサラサの左眼球を的確に射抜く。

 左眼球から矢を生やし、血の涙を流すサラサはゼノへ怒鳴る。



「この、どうして!? 結界によって守られてる私を、どうして傷つけられるの!?」

「ぼくが《なしなし》してるから効かないもんね!!」



 ゼノの背後から、ユウは自慢げに言う。


 ユウの言う《なしなし》とは、イグリアス大陸でも特に使い手のいない特殊な支援魔法だ。

 その正式名称は魔法無効化キャンセル魔法である。分かりやすく言うと、全ての魔法を無効化にする支援魔法である。


 本来であればその本人にかけてべき支援魔法だが、ユウはゼノの放つ弓矢にこの魔法無効化魔法をかけているのだ。


 ユウは「べー!!」とサラサに向けて舌を出し、



「ぼくの方が強いもん!!」

「く、このッ!! ――イッタ!?」



 魔法を使おうと掲げた右腕を、矢が貫く。


 サラサが気づいた時には左腕、右足、両肩にも同じような痛みが生じる。見れば、痛みを感じる全ての場所に矢が突き刺さっていた。


 ゼノは淡々とサラサめがけて矢を放つ。ユウによって魔法を無効化させる支援魔法がかけられた矢を、何度も何度も放つ。



「ま、ま、待って、待ちなさい」



 サラサは待ったをかけた。


 全身に矢が突き刺さり、ドレスはボロボロになって血が染み込む。満身創痍の状態だった。

 そんな状況で、自分の身を守る為の結界を維持できるとは思わない。すでにサラサの周りには結界がなかった。


 ユウはその瞬間を見逃さなかった。

 素早く長杖を握りしめると、



「《ごろごろどん》!!」



 最上級雷魔法を叩き込む。


 雷が脳天に落ち、サラサは「か、は……」と黒焦げの状態となって地面に落下しそうになる。

 だが、落下しただけではサラサを完全に討伐できたとは言えない。それを分かっているのか、ゼノは最後の矢をつがえる。



「くたばれ、魔女!!」



 彼女は矢を放つ。


 真っ直ぐ飛んでいく矢は、サラサの胸元で輝く赤い宝石を的確に射抜いた。


 パキン、と砕け散る宝石。

 サラサはカッと紫色の瞳を見開き、掠れた声で悲鳴を上げた。



「な、何で……!! ま、魔王様、申し訳、ございま……ッ!!」



 全ての言葉が終わるより先に、サラサは黒い粒子に変換されて消えてしまった。


 魔物の大群が頭領を討伐されて唖然としている中、ユウは勝利宣言とばかりに叫んだ。



「ぼくとゼノの方が強くてゆーしゅーだもん!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ