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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第10話:魔物の大群なんて聞いてない

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【Ⅱ】参加しないの?

 レイド戦に強制参加を言い渡され、出撃する時を律儀に待っているユウとゼノは暇を持て余していた。


 ユウは長杖ロッドの先端を石畳に擦り付けて絵を描こうとしていて、ゼノは銀色の長弓ロングボウの調子を確かめていた。

 冒険者ギルドで装備の状態を見てもらうことも出来たが、基本的に二人は自分の武器の調子は自分で見るようにしているのだ。なので、こうして退屈そうにしていたのだ。



「ゼノぉ」

「どうした、ユウ坊」

「暇だよぉ」



 石畳に長杖の先端を擦り付けても絵が描けないと分かったのか、ユウはゼノに退屈を訴えた。


 いくらレイド戦の為に待っていても、暇なものは暇なのである。

 長杖をしゃらしゃらと振り回しながら、ユウは「ひーまーなーのー」とゼノの腕を引っ張る。長弓の調子を確かめていたゼノは、そんなユウの頭を軽く撫でてやった。



「もう少しだけ待ってろ。どうせすぐにレイド戦も始まるだろうさ」

「うー……でも、暇だもん。早くれいど始まらないかなぁ」



 退屈そうにレイド戦が始まらないかと待機するユウは、人混みの中に見慣れた人影を発見した。


 二人の少女である。

 白い長衣ローブが特徴の治癒師ヒーラーと、軽鎧を身につけた騎士である。二人はどうやらレイド戦の参加資格が貰えなかったようで、少し残念そうにしていた。



「あー、せんせー!! おねーさんもいるー!!」



 ユウは青い瞳を輝かせると、二人の少女のもとへ駆け寄った。



「せんせー、おねーさん!! 久しぶり!!」

「あ、ユウさん。お久しぶりです」



 治癒師の少女――ミザリーが朗らかな笑みで挨拶をする。すぐ側にいた騎士の少女――シュラはあからさまに嫌そうな表情を見せた。


 ユウは「せんせーとおねーさんもれいど?」と問いかけるが、二人は揃って首を横に振った。



「私たちはレベルが足りなくて、レイドに参加できないんですよ」

「えー、せんせーとおねーさん参加できないの?」



 ガッカリとした様子で肩を落とすユウは、



「ぼくも参加やめようかな……」

「それはダメですよ、ユウさん」



 ミザリーは不満げに唇を尖らせるユウを、しっかりと注意する。



「ユウさんはとても優秀な魔法使いですから、絶対にレイド戦には必要です。だから簡単に投げ出さないでください」

「う……せんせーが言うなら、ぼく頑張る……」



 ミザリーに説得され、ユウは仕方なしにレイド戦の参加を承諾する。


 若き治癒師の少女が「そうですよ」と頷く側で、シュラが意地悪そうな笑みを浮かべると、



「別に参加しなくてもいいのよ? そうしたら、フラウディア王国で一番人気のケーキが食べられなくなるけどね」

「うー、おねーさんのいじわる!!」

「事実を述べたまでじゃない。アンタ、さっき『参加やめようかな』って言ってたんだもの」



 シュラはフンと形のいい鼻を鳴らすと、



「今回のレイド戦はウィラニアの時とだいぶ違うわよ。心して取り掛かりなさい」

「うぃらにあの時よりも怖いの?」

「そうよぉ、怖いお化けがわんさか出てくるんだから」

「ぴーッ!!」



 シュラがわざとお化けを想起させるような笑みを見せて迫ってきたので、甲高い悲鳴を上げたユウは慌てた様子でゼノの背後に隠れた。


 呆れた様子でゼノがため息を吐くと、



「シュラ嬢、ユウ坊をあんまり怖がらせんなよ」

「事実を言っただけじゃない」



 シュラがツンとそっぽを向いて言った。



「今回のレイド戦は、噂だと魔王四天王の一人が魔物の大群を引き連れているみたいよ」

「してんの?」

「ちょっと間抜けに聞こえるから、ユウ坊は黙ってような」



 ゼノに頭を撫でられて、ユウは喋らないように話が終わるように待つ。


 魔王四天王と言えば、この前倒した首なし騎士のダーウィンがそうだったか。

 ユウはもう顔すらあやふやな敵のことを思い出そうとするが、どうしても思い出すことが出来なかった。何故だろうか。


 そんなことをやっているうちに、ゼノとミザリーとシュラの間では会話が続く。



「本当に、あくまで噂程度よ。実際に見た訳じゃないから、正確なことは言えないわ」

「魔王四天王ねェ。ヴェリック大墓地にいたって話の首なし騎士もそう言ってたっけな」

「……アンタたちなら倒すだろうとは思っていたけど、本当に四天王の一人を倒しちゃうなんて。びっくりだわ、来たばっかりの短期間で」

「そうですね。やっぱりユウさんとゼノさんは強いんですよ。ですから今回のレイド戦も大丈夫です」

「ゴブリンを見つけてユウ坊が暴走しなけりゃいいんだけどなァ」

「……相変わらずゴブリンを恨んでいるのね」

「夕飯を邪魔された恨みは深いんだとよ」



 ユウはそろそろ三人の会話を側で聞いているのも飽きたので、ギルド受付嬢に「レイド戦はまだ始まらないのか?」と聞きに行こうとしたところ、



「なあ、お前ら」

「ん?」



 暇を持て余したユウに声をかけてきたのは、爽やかな印象のある青年だった。シュラと同じような軽鎧を身につけて、腰には立派な直剣を帯びている。

 片目を瞑った途端に星が飛び散るような爽やかさを持つ青年を見上げて、ユウは不思議そうに首を傾げた。



「どーしたの、おにーさん」

「お前ら、強いんだろ? よかったら俺たちのパーティに」

「ユウ坊をたぶらかしてんじゃねェぞ、雑魚が!!」



 今までミザリーとシュラと会話していたはずのゼノが、何故か爽やか青年に向かって矢を放っていた。


 爽やか青年は「ぎゃあああああッ!?」と悲鳴を上げて、その場から逃げ出した。


 石畳に突き刺さる矢を見下ろし、逃げていく爽やか青年の背中を見送ったユウは「あれぇ?」と疑問に思っていた。

 何で逃げていったんだろう?

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