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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第10話:魔物の大群なんて聞いてない

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【Ⅰ】レイドに強制参加!?

「緊急招集、緊急招集。冒険者ギルドへ所属している冒険者の方々は、至急冒険者ギルドまで集合してください」



 平和なフラウディア王国の隅々まで、緊急招集が響き渡る。


 前回の首なし騎士の成功報酬で家を買おうと決めて、ちょうど不動産屋に行こうと思っていたユウとゼノは、緊急招集を受けて首を傾げた。



「何かあったのかなぁ?」

「さあな」



 ゼノは面倒臭そうに、その目を見張るほどの美貌を歪める。



「ユウ坊、不動産屋はまた今度だな。緊急招集に応じてやらねェと」

「えー」



 ユウは不満そうに唇を尖らせるが、ゼノに「緊急招集が終わってからにしようぜ」と言いくるめられて、渋々と承知する。

 結局は反則的な能力の数々を有する魔法使いも、一緒にいるダークエルフの彼女には弱いのだ。


 長杖ロッドを両手で握りしめ、ユウは「じゃあ……」と言う。



「ぼく、頑張るね。だから早く終わらせようね」

「おう。オマエがいりゃ、すぐに終わるだろうさ」



 ゼノに連れられて、ユウは仕方なしに冒険者ギルドへ向かうのだった。



 ☆



 冒険者ギルドの前では、たくさんの人で溢れ返っていた。

 おそらくだが、建物の中に入りきらないほど集まったのだろう。さすが多くの人が訪れるフラウディア王国である。


 当然、ユウとゼノも建物の中には入れなかった。

 忙しそうに右へ左へと駆け回っている冒険者ギルドの受付嬢を捕まえて、ゼノが緊急招集の理由を聞く。



「なあ、緊急招集って聞いたんだけどよ。何かあったのか?」

「はい、これから責任者のクラウドさんから説明がありますので、お待ち下さい」



 受付嬢はそう言うと、何やら金属の箱のようなものを冒険者ギルドの扉の前に設置する。


 ゼノが「それ何だ?」と問いかけるが受付嬢から答えは得られず、代わりにユウが彼女の質問に答えた。



「多分ね、お声を届ける為の魔導具だと思うよ」

「そんなモンあるのか?」

「建物の中の様子を伝えるものだと思うの。ぼくも作ったことはないけど」



 そもそも、そんなものがなくても必要であれば伝達魔法など色々と手段はある。

 わざわざ声を届ける為の魔導具を作成する必要もないし、いざとなれば直接顔を合わせればいいだけだ。


 ユウの説明に納得したのか、ゼノは「そんな便利なモンもあるんだな」と感心していた。


 すると、冒険者ギルドの扉の前に設置された金属の箱が『ジジ……』という雑音を奏でる。どうやら通信が始まるようだった。



『えー、集まってくれた冒険者の諸君よ。クラウド・リノアだ。集まってくれて感謝する』



 どこかひび割れた様子の男の声――冒険者ギルドの長であるクラウドが、集まってくれた冒険者たちに対して感謝の言葉を述べた。



『実はフラウディア王国へ魔物の大群が押し寄せてきているのが確認された。諸君には、魔物の大群からフラウディア王国を守ってほしい』



 ユウとゼノは顔を見合わせて、小声で「まものさん?」「魔物が来るみてえだな」と会話する。



『魔物の大群を率いる頭領を討伐した冒険者には、フラウディア王国から報奨金が出る。気合を入れていけ』

「ほーしょーきん?」

「ご褒美みたいなモンだ。国からご褒美が貰えるみたいだぞ」

「そうなんだぁ。凄いね」



 クラウドの説明に、ユウはほわほわと笑う。

 フラウディア王国にやってきて、まともに仕事を与えられるし、国からご褒美が貰えるとはとてもいい国だ。人が集まる理由が分かった気がする。


 説明はそこで終わったようで、ギルドの受付嬢が金属の箱を回収していく。


 別の受付嬢がギルド前に集まる冒険者たちに、



「装備の確認をいたしますので、一列にお並びください。今回のレイド戦に参加できるか否かこちらで判定いたします」



 冒険者たちが「マジか」「そんなにやばいのか?」と話し合うのをよそに、受付嬢は言葉を続ける。



「なお、ユウ・フィーネ様とゼノ・シーフェ様につきまして、今回のレイド戦は強制参加となります。必ずご参加くださいますよう、お願いいたします」

「ええ、ぼくたちだけ?」



 いきなり名指しで強制参加を言い渡され、ユウが反応を示す。

 そのせいか、周囲の冒険者の視線が一斉に集中した。



「ぼくたち、レベル0なのに?」

「そうだぞ。レベルがねェのに、今回のレイド戦には強制参加かよ。そりゃちょっと厳しいんじゃねェのか?」



 ユウの質問に重ねるように、ゼノが受付嬢へ詰め寄る。


 しかし、受付嬢は「いいえ、厳しくありません」と首を横に振って否定した。



「あなた方の実力は証明済みです。四天王である首なし騎士ダーウィンの討伐に成功したあなた方であれば、今回のレイド戦は余裕でしょう」

「むー……」



 首なし騎士の討伐に成功したからって、今回も上手くいくとは限らない。


 納得がいかないとばかりに頬を膨らませるユウに、受付嬢はこう提案してきた。



「参加してくださった暁には、フラウディア王国で一番人気のケーキ屋で一日五台限定のホールケーキを報酬でつけますが」

「やる!!!!」

「おい、ユウ坊。もうちょっと迷いってものを見せろよ」

「やるの!! ケーキ!!」



 見た目は大人でも、中身は不思議と子供である。


 目先の利益に釣られて飛びついた天才魔法使いに、ゼノは呆れた様子でため息を吐いた。

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