表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第9話:魔王四天王? 誰それ?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/94

【Ⅵ】首なし騎士の成仏

「うッ、うッ……酷い、酷い目に遭った……追い剥ぎだ、追い剥ぎだ……」



 膝を抱えて教会の隅に蹲る首なし騎士へ、ユウは申し訳なさそうに、ゼノは全く悪びれる様子もなく言う。



「ごめんなさい……」

「首なし騎士じゃなくて、中身なし騎士じゃねェか。その甲冑の中身は空っぽなんだから、別に追い剥ぎでも何でもねェだろ」

「そこのダークエルフ、貴様はたとえ女だとしても許さんからな」



 首なし騎士はジロリとゼノを睨みつけると、取り繕うように咳払いをして立ち上がる。

 ガシャ、と鎧を鳴らしながら胸を張り、中身が空っぽの兜を小脇に抱えて威風堂々とした様子で名乗る。



「私は首なし騎士のダーウィンだ。魔王四天王の一人にして、屍人系魔物の最上位の存在である」

「中身がない理由は何だ。鎧が勝手に動いて喋るのか、アア?」

「おい、ダークエルフ。いい加減に鎧へ飛びつくのをやめろ、離せ離せってば!!」



 ゼノが懲りずに首なし騎士――ダーウィンへ飛びつくので、ダーウィンは無理やり彼女を引き剥がしていた。


 不満げに唇を尖らせて戻ってくるゼノは、長杖ロッドを握りしめるユウに問いかける。



「なあ、ユウ坊。アイツの中身の仕組みって分かるか?」

「多分ね、鎧に幽霊さんが取り憑いてるんだと思うよ」

「ああ、そういう類か。仕組みが分かりゃ呆気ねェな」



 ゼノは「なーんだ」と呟く。


 首なし騎士の仕組みにガッカリした様子の彼女へ、ダーウィンがプルプルと震えながら抗議してきた。



「貴様、私を愚弄する気か!?」

「え、的当てにしていいって?」



 ゼノは銀色の長弓ロングボウを構えて、矢をつがえる。


 キリキリと矢を引き絞るゼノに、ダーウィンは勝ち誇ったように笑い飛ばした。



「ははははははははッ!! 私に物理攻撃など効かぬぞ、何せ中身が空っぽだからなァ!!」

「そおいッ」



 ズダァン!! という轟音が教会内を揺るがす。


 放たれた矢は見事にダーウィンの甲冑を貫いていて、通常であればそれだけで即死だった。中身が空っぽのダーウィンだからこそ、ゼノの矢を受けても両足で立っていられた。


 ダーウィンは「はははははッ」と哄笑を響かせ、



「効かぬ、効かぬわ!! ははははははははッ!! 貴様の攻撃は随分と、おい、ちょ、待て待て待て」



 ダーウィンが話している隙にも、ゼノは絶えず矢を放ち続けた。


 矢は寸分の狂いもなく、ズドンズドンとダーウィンの甲冑を貫く。

 胸や胴体、肘、膝、太腿などを的確に貫いていく。もちろん、中身がないのでいくら矢を射ったところで傷一つない。せいぜい鎧が傷つくだけだ。


 淡々と矢を射ってくるゼノに、さすがのダーウィンも制止をかけずにいられなかった。



「矢の無駄ではないのか? おい、それ以上矢を放っても私には通用しないぞ。聞いているのか? おいやめ、やめろ、本当にやめろやめてくださいお願いしますから!!」

「はははははははは」



 今度はゼノが笑う番だった。

 そして、かなりの棒読みだった。感情の起伏さえない、平坦な笑い声だった。


 ひたすら矢をつがえては放ち、矢をつがえては放ち、と繰り返す美しきダークエルフは、



「ほーら的当てだって言っただろォ。次はどこがいい? 心臓か、それともへそか? アタシはどっちでもいいぞ、どっちにも当てられるからなァ」

「怖い怖い怖い怖い!! 何で目が本気なんだ貴様、魔王四天王よりも怖いじゃないか!!」



 避けても次なる矢に射抜かれるダーウィンは、ゼノの側で全てを見守っていたユウに叫ぶ。



「おい、貴様の連れを止めろ!! このままでは蜂の巣よろしく、私の鎧は悲惨な状態になるぞ!!」

「首なし騎士さん、蜂になっちゃうの? ぼく見てみたいなぁ」

「しまった、こっちに助けを求めても無駄だったか!!」



 首なし騎士が首なし蜂へ変貌を遂げる瞬間を見逃すまいと、じっとダーウィンを観察し続けるユウ。瞳は期待に満ち溢れている。


 ケタケタと壊れたように笑いながら矢を放ってくるゼノと、蜂に変身する瞬間を期待するユウの二人に我慢の限界が訪れたダーウィンは「うがああああああッ!!」と絶叫した。



「貴様らァ!! 私を舐めると痛い目を見ることを教えてくれる!!」



 ダーウィンがおもむろに右手を天へ掲げると、ガタガタと教会の窓や壊れかけた扉が揺れ始めた。


 またあの墓石が揺れて緑色の肌をしたびっくり人間たちが出てくるのかとユウは警戒したが、今度は違った。


 ビタン!! と窓を誰かが叩く。

 曇った窓ガラスの向こうで、緑色の肌をした女性が大きく口を開けて立っていた。



「ぴーッ!!」



 甲高い悲鳴を上げてゼノにしがみつくユウを、ダーウィンは笑い飛ばす。



「ふはははははは、私は屍人系魔物の頭領でもあるのだ。貴様らなど土の中に引き摺り込んで、私の下僕にしてやろう!!」



 ダーウィンは楽しそうに笑いながら、さらに脅かしにかかる。

 それが、彼の敗因だった。


 教会の周りに集まってきた緑色の肌のびっくり人間集団に耐えられなくなったユウは、長杖を振り回しながら「やーッ!!」と叫ぶ。



「《じょーぶつじょーぶつ》!!」



 その時だ。


 灰色の空に光が差し込み、キラキラとした白銀の鱗粉がダーウィンの全身に降り注ぐ。


 先程まで高らかに笑っていたダーウィンだが、その白銀の鱗粉に嫌な予感を覚えて「え?」と天井を見上げた。極彩色の光を落とすステンドグラスの向こうが異様に輝いているのを見た時、彼は焦りを覚えた。



「は、え、嘘だろ!? 最上級光魔法だと!?」

「《じょーぶつじょーぶつ》《じょーぶつじょーぶつ》《じょーぶつじょーぶつ》」

「や、やめ、やめろ!! そんなに最上級光魔法を唱えるな、持っていかれる持っていか――――アーッ!!」



 白銀の鱗粉が雪のように降り注ぎ、じゅわ!! とダーウィンの中身から黒い粒子が一気に飛んでいく。


 黒い粒子が消されたことで甲冑がガランガランと音を立てて床に落ち、ユウは仕返しだとばかりに長杖でボコボコと甲冑を殴る。



「怖かった!! ぼく怖かった!!」

「ユウ坊、そこまでにしてやれ」

「何で!! ぼく怖かったもん!! まだ仕返しする!!」

「討伐終わったぞ」



 ほれ、とゼノが羊皮紙を見せてくる。


 そこには、確かに『討伐完了』の刻印がデカデカと浮かび上がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ