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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第9話:魔王四天王? 誰それ?

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【Ⅲ】大墓地に行こう

「ローザちゃんのご機嫌、悪かったねぇ」

「そうだな。慣れない環境であんまり寝れなかったんじゃねェか?」



 旅立ちに必要な消耗品を揃えたユウとゼノは、馬車の停留所に向かっていた。


 首なし騎士は『ヴェリック大墓地』を根城にしていると羊皮紙には記載されており、馬車でちょうど目的地を通過する道を通るものがあるので、二人はそれに乗っていくことにしたのだ。

 一度行ったことがある場所であれば、ユウの転移魔法が使える。帰りは馬車に頼らなくても大丈夫だろう。


 何人か乗客がいる馬車の御者に、ユウとゼノは依頼内容が記された羊皮紙を見せる。



「……え、これ本気かい?」

「本当だよ。ぼくたち、これから首なし騎士を倒しに行くの」



 怪しいものでも見るかのような視線をくれてくる御者の男に、ユウはしっかりと頷いた。


 御者の男は羊皮紙をユウへ返却し、そして何故か小さな声で「可哀想にねぇ」と呟いた。何が可哀想なのだろうか。



「お代はいいよ……さあ、乗りな」

「いいの? おじさんは優しいなぁ」



 ユウは朗らかに笑いながら「おじさん、ありがとう」とお礼を述べた。


 馬車に乗り込むユウとゼノは知らない、この御者がこれから死ににいく二人を憐んで乗車料金を取らなかったことを。


 そして同時に、御者も彼らのことを知らないでいた。

 能力値が全て限界に到達し、ふざけた呪文だけで最上級魔法をポンポンと繰り出せる魔法使いと、弓矢だけで吸血鬼を脅すことが出来るダークエルフであることを。


 言葉では表せない異様な空気の中、馬車は静かに出発した。



 ☆



 馬車がフラウディア王国を旅立って二時間ほどが経過した。


 ゆったりとした速度で進む馬車は、灰色の空と寂れた墓地のある地域までやってきていた。

 墓地の規模は様々だが、目的地であるヴェリック大墓地ではないことは分かる。


 馬車から外の光景を眺めていたユウは、同行するダークエルフへと振り返ると「ゼノ、ゼノ」と呼びかけた。



「お外が暗いねぇ」

「そうだな。天気が悪くなるのかもなァ」



 ユウは分厚い雲で覆われた空を見上げて「雨が降っちゃうかな」と心配そうに呟く。


 どんよりとした灰色の空は、見ているだけでも気が滅入ってくる。さらに墓地という場所が、気味の悪さを助長させていた。

 何かが出ると分かっているものの、不思議と身構えてしまう。


 それに、ユウは雨があまり好きではない。

 濡れるし、外で遊べないし、じめじめするし何もいいことなんてないのだ。雨上がりに出来る水溜りは好きだが、それ以外で好きになれる要素はない。


 もしも雨が降ったら、魔法で天気を変えてやろう。

 長杖ロッドを握りしめて決意するユウに、横から声がかけられた。



「君たちは勇敢だねぇ。あの墓地は近頃、お化けがたくさん出るって有名だけどねぇ」



 話しかけてきたのは、ユウの隣に座る品の良さそうな老婆だった。

 木を切り出して作られた短めの杖をつき、寂しげな笑みを浮かべた彼女は言葉を続ける。



「あそこには、私の旦那も眠っているんだけどねぇ。魔物が住み着いてから、墓参りにすら行けてないわ……」

「そうなの?」



 ユウは青い瞳を瞬かせ、



「でも、安心して。ぼくたちね、これからそのお墓にいる悪いお化けたちを倒しにいくんだ」

「そうかい、そうかい。それは頼もしい」



 老婆はユウにニコニコとした笑みを見せると、



「でもね、君も気をつけるんだよ。あそこに行けば、二度と家には帰れないって聞くよ」

「ええ、それは困るなぁ」



 ユウは「どうしよう……」と本気で悩むように腕組みをする。


 何故なら、家として泊まっている宿屋にローザを置いてきてしまったのだ。

 もし二度と帰れなくなってしまったら、彼女を一人にしてしまう。頼みの綱であるミザリーとシュラには連絡が取れない状況なので、ローザを任せることも出来ない。


 一度、転移魔法で帰った方がいいだろうか。

 判断を仰ぐ為に、ユウはゼノへと振り返る。



「ゼノ、ゼノ。どうしよう。ヴェリック大墓地に行っちゃったらお家に帰れなくなっちゃう」

「いやいや、いくら何でもそりゃねェだろ」



 ちょうど外を見ていたゼノは、ユウの心配を吹き飛ばす勢いで否定する。



「大体、そうなった時の為にオマエの転移魔法があるんだろうが。それで帰ればいいだろ?」

「そっかあ。うん、そうだね。そうする!!」



 ユウは納得したように頷くと、くるりと老婆へ向き直った。



「大丈夫だよ、お婆ちゃん。ぼくね、転移魔法っていうね、お家にすぐ帰れる魔法が使えるから平気だよ。心配してくれてありがとう」



 ユウはニコニコとした笑みで、老婆にお礼を告げた。


 老婆の心配はそこではなく、帰ってこられないという言葉はもう死んでいるから帰ってこられないという意味だ。

 別にフラウディア王国が遠いから、とかそういう意味合いではない。かといって、帰りの馬車がここを通らないという意味でもない。


 そんな彼女の心配をよそに、馬車はついにゆっくりと停止する。



「着きましたよ、冒険者のお二人さん」



 御者の男がユウとゼノに向けて呼びかけ、二人は「はーい」「おう」とそれぞれ馬車から降りていく。


 馬車から降りた二人を出迎えたのは、



「わあ、広いねぇ」

「凄ェな」



 たくさんの墓石が並べられた広大な墓地だった。

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