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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第8話:フラウディア王国で始まる新生活

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【Ⅳ】試験?

「おう、俺がここの責任者だ。うちの受付嬢が悪かったな」



 しばらくしてギルドの奥から出てきたのは、草臥れた男だった。


 くすんだ金色の髪を乱雑に伸ばし、無精髭を生やしている。気怠げな印象を受ける瞳は、そのだらしのない姿に反して綺麗な翡翠色をしていた。きちんと身なりを整えれば、おそらく世の中の女性が放っておかないほどの格好いいことだろう。


 気絶した受付嬢はギルドの医務室に運ばれていき、代わりにギルドの責任者であるこの男がユウたちの対応をすることとなった。



「俺はクラウド。クラウド・リノアだ」

「ぼくはユウ・フィーネだよ」

「ゼノ・シーフェだ。悪いな、何か知らんが気絶させちまって」

「いいや、冒険者カードを見ただけで気絶するような、柔な精神のうちの職員が悪い」



 クラウドと名乗った男は提出された冒険者カードを手に取り、



「てな訳で、俺がお前らの冒険者登録をしようと思う」

「だ、大丈夫なの?」

「どうせ受付嬢が作った書類は、最終的に俺のところに来るんだ。誰がやったって変わらねえだろ」



 シュラの心配をよそに、クラウドはまずミザリーとシュラの冒険者カードに視線を走らせた。



「お二人さんは冒険者として登録できる。――ようこそ、フラウディア王国冒険者ギルドへ。うちの仕事はウィラニアで受けてた仕事より何倍も厳しいだろうが、頑張ってくれや」

「あ、はい。これからお世話になります」

「ええ、よろしく頼むわ」



 ミザリーとシュラはあっさりと冒険者として登録でき、続いて問題のユウとゼノの冒険者登録に移る。


 クラウドは二人の冒険者カードに目を落とすと、ブッと何故か唐突に噴き出した。



「お二人さん……えーと、ユウとゼノだったか? こりゃ間違いか?」

「んー? ウィラニアでもちゃんと計測したよ」

「そうしたら水晶玉が壊れちまってな。まあ、間違いだと言われてもおかしかねェが」



 ユウは不思議そうに首を傾げ、ゼノはあっけらかんと事情を説明する。


 クラウドは目頭を揉むと、



「お二人さんはこれから試験を受けてもらう」

「しけん?」

「そんなモンを受けるのか?」



 ミザリーとシュラは試験を受けずに冒険者登録が終わったが、何故ユウとゼノだけが試験を受けなければならないのだろうか。


 不満げに唇を尖らせるユウに、クラウドは苦笑して言う。



「二人の実力を疑ってる訳じゃねえんだけどな、こんな優秀なステータスは見たことがねえんだ。その実力を見せてもらう意味で試験だ」

「ふーん、よく分からないけれど分かったよ」



 ユウは青い魔石が埋め込まれた長杖ロッドを両手で握りしめると、



「何すればいいの?」

「裏庭に来てくれ。そこのダークエルフの姉ちゃんもだ」



 クラウドは親指でギルドの入り口と反対側にある扉を示すと、



「裏庭が修練場になってるんだ。そこで待っててくれ」



 ☆


 言われた通り、冒険者ギルドの裏に広がっている修練場でユウとゼノはクラウドを待つことにした。


 すでに冒険者として登録を終えたミザリーとシュラ、そして冒険者に登録するつもりは一切ないローザも裏庭にやってきていた。

 ローザは特に心配する素振りは見せず、ミザリーとシュラは「大丈夫ですか?」「ちょっと、平気なの?」とユウとゼノを心配してくれている。どこかの吸血鬼とは大違いだ。


 ユウは「んー」と首を傾げ、



「多分、大丈夫。どんな試験なのか怖いけど」



 すると、ガチャガチャという音と共にクラウドの「おう、待たせたな」という声が聞こえてくる。


 声の方へ視線をやると、軽鎧に身の丈ほどの大剣を背負ったクラウドがギルドの建物から出てきた。明らかに戦闘する為の装備であり、その装備品は上等なものばかりだ。



「試験は簡単だ。俺を倒してみろ」

「何で?」

「言っただろ、実力を知りたいんだって」



 クラウドは背負った大剣を両手で構えて、



「大丈夫だ。俺にはあるスキルがあってな」

「なぁに?」

「一日三回までなら、致死量の攻撃を受けても一瞬で蘇生できる『超再生』ってスキルだ。だから一人一度ずつ、俺を倒すことが出来る」



 ユウは「凄いなぁ」と感心したように言う。その隣で、ゼノもまた「そんなモンもあるんだな」と驚いていた。


 なるほど、ユウとゼノで一回ずつクラウドを倒しても、クラウドはまだあと一回再生することが出来るのか。それなら遠慮なく倒せる。


 長杖を両手で握りしめたユウは、



「ほんとにいいの?」

「いいぞ。ただし」



 クラウドはニヤリと笑う。



「今は引退しているものの、俺のレベルは85だ。そこら辺の冒険者よりも強いぞ」

「うん、ぼく頑張るね!!」



 ユウは気合いたっぷりに言い、ゼノも長弓ロングボウの調子を確かめるように弦を指で弾く。


 二人の少女が心配そうな視線をよこしてくる中、ユウとゼノの冒険者登録の為の試験が開幕した。

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