【Ⅲ】フラウディア王国の冒険者ギルド
フラウディア王国の冒険者ギルドは、ウィラニアの冒険者ギルドとは比べものにならないぐらいに大きかった。
三階建ての建物は普通の店や宿屋よりも大きく、人の出入りも激しい。
しかも出入りする冒険者は質のいい防具で身を守り、さらに強そうな武器も備えていた。一目でレベルが高いということが分かる装備の数々である。
初心者装備とも呼べる装備品しか身につけていないミザリーとシュラは、彼らの素晴らしい装備品を目の当たりにして呆気にとられていた。ちょっと口もポカーンと開いていた。
ユウとゼノはそれらの装備品の価値が全く分かっていないので、
「ねえねえ、ゼノ。あの人の剣、凄いねぇ」
「あれ売ったら凄い値段になりそうだよな」
今しがた通り過ぎたばかりの冒険者の金ぴかな剣を目線で追いかけて、そんなことを話し合っていた。
装備品の価値が全く分かっていない主人とダークエルフに、ローザは「嘘じゃろ……?」と言わんばかりの目で見ていたが、彼らが少女の視線に気づくことはなかった。
「じゃあ、入ろっか」
「ま、ままま、待って、待って!!」
ユウが冒険者ギルドの扉を開けようとすると、シュラが厚ぼったい長衣を引っ張って止めてきた。
あれだけ気合いを入れていたはずなのに、どうして今更怖じ気づくのだろうか。
不思議そうに首を傾げるユウは、シュラに「どうしたの?」と問いかける。
「何でアンタはそんなに平気なのよ!? 周りはみんな高レベルの冒険者だってのに!?」
「? ぼくは別に……」
他がどれだけレベルが高かろうが、一緒に仕事をすることはまずないと見ていいだろう。
引き受ける仕事はそれぞれだし、一緒に仕事をすることになっても、これから一緒にいるとは限らない。
ユウがきょとんとした表情で言うと、シュラは「レベルカンストは言うことが違うわ……」と呆れている様子だった。
「シュラちゃん、レベルカンストだからこそ高レベルの冒険者にもついて行けるんですよ……私たちもいつか同じように……」
「そ、そうよね……そうに決まってるわ。ここまで来るのだって、着実にレベルが上がってるんだし……」
「そうですよ……!! まだ希望は捨ててはいけません……!!」
少女二人がこそこそと話し合う姿を見ていたゼノが、
「先生とシュラ嬢は何をそんなに話し合っているんだろうな?」
「分かんない。あの二人、たまにぼくの知らないことを話すんだ」
「安心しろ。アタシも分かってねェ」
とりあえず、冒険者に登録しなければ仕事を請け負えない。
こそこそと話し合う二人をよそに、ユウとゼノはフラウディア王国の冒険者ギルドの扉を押し開けた。
「うわあ!!」
「こりゃ凄ェな」
ユウとゼノは、冒険者ギルドの内部の広さに瞳を輝かせた。
ウィラニアの冒険者ギルドとは打って変わって、さすが大きな国の冒険者ギルドと言うべきか。受付も多く、仕事もたくさんある。レベル0のユウとゼノでも受けられるような仕事がたくさんありそうだ。
ミザリーとシュラも「凄いですねぇ」「ウィラニアよりも広いわね」などと呟いている。先程までしていた会話は終わったのだろうか。
「まずは冒険者に登録しましょうか」
「うん!!」
ミザリーの提案に、ユウが元気よく頷く。
冒険者登録の受付はギルド内の隅の方にあり、何人かが受付をしている最中だった。やはり大国というだけあって、冒険者に登録する人数もそれなりに多いのだろう。
待機列に並んですぐ、受付嬢に「お次でお待ちの方はこちらへどうぞ」と呼ばれた。
「ようこそ、フラウディア王国の冒険者ギルドへ。本日は冒険者の登録でしょうか?」
「はい。私たちはウィラニアのギルドに登録していたのですが、このたび移籍することになりました」
「紹介状をお預かりします」
受付嬢に、全員分の紹介状を提出する。
ウィラニアの冒険者ギルドで発行された紹介状に目を走らせて、受付嬢は「確かに」と頷いた。
「それでは正式にフラウディア王国の冒険者ギルドに登録いたしますので、冒険者カードを提示してください」
「こちらです」
ミザリーとシュラがまず先に冒険者カードを提出し、受付嬢は「お預かりしますね」と二人の冒険者カードを預かる。
「治癒師のミザリー・ベル様と騎士のシュラ・アトランタ様ですね。後ろの方の冒険者カードも拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「はーい」
「おう」
ユウとゼノも受付嬢に冒険者カードを提出する。
受付嬢はにこやかな笑みで「ありがとうございます、お預かりします」と二人の冒険者カードを受け取る。そしてユウとゼノの冒険者カードに視線を走らせた途端、
「……………………ふぅッ」
バターンッ!! と倒れてしまった。
「おねえさーんッ!?」
「おい、誰かここの責任者ァッ!!」
目の前でぶっ倒れた受付嬢に慌てたユウとゼノは、責任者と大声で騒ぐこととなった。




