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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第7話:ヘレニア国立魔法学院の学園祭

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【Ⅱ】異世界転生者、喧嘩を売る

「わあああ!!」



 青い瞳を輝かせたユウは、きょろきょろとヘレニアの街を見渡す。


 大小様々な建物が並び、可愛らしい制服に身を包んだ女子生徒がチラシを配ったり、看板を掲げたりして客を呼び込んでいる。



「二年星組では占星術を用いた占いの館を開いています。恋愛運、金運、仕事運、健康運まで占えますよ!!」

「三年火組ではメイド喫茶をやってまーす。可愛いメイドさんに出迎えてもらえますよ!!」

「ヘレニア焼きはいかがですかぁ? 黒砂糖と豆を煮詰めたペーストをもっちりした生地で包んで焼いた、甘いお菓子ですよぉ」

「そこのお姉さん、お化け屋敷はいかがですか? 彼氏にくっつき放題ですよ」



 生徒たちは言葉巧みに客を呼び込んでいる。


 どれもこれも、興味が尽きない店ばかりだ。

 ふわふわと雲のようなお菓子を頬張る子供、仲良く手を繋ぎながら生徒が売る硝子細工を見る恋人たち――様々な客が学園祭を楽しんでいた。


 ユウはゼノの腕を引っ張り、



「ゼノ、ゼノ!! どこに行こう!?」

「待て待て、ユウ坊。まずは店の確認をしてみようぜ」



 今すぐにでも駆け出そうとするユウを引き留め、ゼノは城門付近に設置された総合受付を示す。


 総合受付では、二名ほどの女子生徒が冊子のようなものを配っていた。

 どうやらその冊子は、学園祭に出店されている店の一覧と地図が一体化したようなものだったらしい。可愛らしい少女の絵が描かれた表紙が特徴的な冊子だった。


 ミザリーとシュラはすでに冊子を手に入れていたようで、それぞれ冊子の中身を確認している。ローザはそもそも学園祭自体に興味がないのか、退屈そうに欠伸をしていた。



「ほら、ユウ坊。どこに行きたい?」

「見せて見せて!!」



 ゼノから冊子を受け取り、ユウは店の一覧を確認してみる。


 わたあめ、ヘレニア焼き、喫茶店など様々な店が並んでいる。

 様々なお店が並んでいて、ユウはどこの店に行こうか目移りしてしまう。



「装身具を売っているお店もあるんですね」

「学生が作ったものだから、実戦ではあまり期待は出来ないかもしれないけれどね。私はこのフロウラ喫茶店ってのが気になるわ。焼き菓子が美味しいみたい」



 ミザリーとシュラは冊子から顔を上げると、



「ユウさんとゼノさんはどちらへ行きたいですか?」

「どうせだったら全部回ってみましょうよ。敷地内は広いんだから」



 ユウはペラペラと冊子を眺めて「どれがいいかな、どれがいいかな」と店の一覧を眺めている。しっかりと吟味して、中身を決めなければ。


 その時だ。



 ――――どぉぉぉん、と。

 背後から爆発音が聞こえてきた。



 ユウは「ぴゃあ!?」と驚いてしまい、思わず冊子を取り落としてしまう。足元に落ちる前に、ゼノが拾い上げた。


 振り返ると、そこには広々とした庭があった。

 冊子で場所を確認してみると、校庭と呼ばれる庭らしい。そこでは『魔法比べ』と呼ばれる力自慢の催しが行われているようだった。


 その魔法比べで一位を取ると、豪華景品が貰えると書かれていた。具体的に何が貰えるのか書かれていないが。


 先程の魔法で誰かが一位を取ったようで、校庭に集まっていた人々は「凄い」「一位じゃねえか」「誰もあの威力には勝てない」などと呟いている。



「何だよ、危ねェな」



 ゼノが吐き捨てるように言うと、校庭に集まっていた人々を掻き分けて男子生徒と女子生徒が姿を現した。


 女子生徒の方は透き通るような銀色の髪に翡翠色の瞳、人形のように愛らしい顔立ちをしている。豊満な胸を男子生徒の腕に押しつけて、ニコニコと笑みを浮かべていた。彼の恋人なのだろうか。


 対する男子生徒は、黒い髪に黒い瞳で端正な顔立ちが特徴だった。もっと言ってしまえば、それ以外に印象がない。どこかつまらなさそうに歩く彼は、あっけらかんと言う。



「つまらないな。この程度が魔法比べだって言うのかよ」



 そして男子生徒は鬱陶しそうに銀髪の女子生徒を振り払うと、こちらを向いた。

 ――正確には、ゼノに注目していた。



「綺麗だ……」



 男子生徒は呟く。

 そしてツカツカと迷いのない足取りで歩み寄ってくると、彼はゼノの手を取った。



「ダークエルフ? 誰かの奴隷なのか? もし奴隷として扱われているなら手を貸そう、俺が君を自由にしてやる」

「は? 別にアタシは――」



 ゼノが男子生徒の手を振り払う前に、ユウが動く。


 両手で握りしめた長杖ロッドを、問答無用で男子生徒の頭めがけて振り抜いた。

 青い魔石と繊細な装飾品がまとめて男子生徒の頭にぶつかり、ゴッと鈍い音を立てる。



「ゼノにさわるなぁ!! このへんたいさん!!」



 頭を押さえてしゃがみ込む男子生徒を睨みつけ、ユウは威嚇するように叫んだ。


 ☆


 いきなり殴られた理由が分からない。


 男子生徒――神崎結弦かんざきゆづるは、殴られた頭を押さえて呻く。


 クラスメイトが慌てて駆け寄ってくれるが、今は目の前の危機だ。

 名前も知らない少年に、杖で殴られたのだ。


 相手は結弦よりも年上か、同い年か。

 鋼のような銀髪に青い瞳、顔立ちは整っている。厚ぼったい長衣に身を包み、綺麗な装飾品の杖を両手で握りしめていた。


 少年は結弦を睨みつけていて、ダークエルフの美女を守るように立ち塞がっている。もしかして、彼女の主人だろうか。



「まさか……俺に物理で殴りかかってくる奴がいるとはな……」



 結弦は頭を振って立ち上がると、少年を真っ向から睨み返した。



「そのダークエルフの奴隷を解放――」

「へんたいさんの言葉なんか聞かないもん!!」



 長杖を結弦の鼻先に突きつけて威嚇する少年。


 彼に何を言っても無駄だろう。

 それなら、この学校で結弦がやってきた方法で、彼女を解放に導いてやるだけだ。



「だったら、勝負だ」



 結弦は校庭に設置された魔法比べの機材を指で示して、



「俺に勝ってみろ」

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