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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第6話:フラウディア王国へ行こう

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【Ⅲ】一緒に移籍だって?

「旅立つなら必要なモンを揃えておかねェとな」

「何が必要かなぁ? お金?」

「ダンジョン攻略で報酬は結構貰ったし、魔石を売った時の金がまだたんまり残ってる。薬草とか揃えておかねェとな」



 商店街を歩きながら、旅立ちの計画を練るユウとゼノ。


 彼らの後ろから続くローザは疲れたように「なあ、わらわは帰っていていいか?」などと呼びかけるが、二人は揃って無視していた。ユウはすでに旅支度のことで頭がいっぱいだし、ゼノは故意でローザの我儘を無視している。

 不満げに唇を尖らせるローザだが、決してユウとゼノに意見は言わない。意見を言えば自分の命が危ないことを知っているからだ。


 そんな三人に、見知った少女たちが「あ!!」と声をかけてきた。



「ユウさん、ゼノさん。お買い物ですか?」

「あ、せんせー!!」



 朗らかな笑みを浮かべてやってきた少女――ミザリーは「奇遇ですね」と言う。



「私もシュラちゃんとお買い物をしていたんです。報酬も貰ったので、消耗品を揃えておこうかと」

「私は一人でいいって言ったんだけど、こいつがどうしても一緒に行きたいって言ったからよ」



 ミザリーに手を掴まれて逃げられない状態にされている少女――シュラは不満そうに言う。

 口調だけは不満そうにしているものの、実際は満更でもないのだろう。彼女の口調に覇気が感じられない。


 とても仲のいい二人の姿を目の当たりにしたユウは、



「やっぱり仲良しだねぇ」

「仲良くなんかないわ!! 私がこいつに振り回されてるだけよ!!」

「でも満更でもねェんだろ?」

「ううッ」



 ニヤニヤと笑うゼノに、シュラは言い返せず口を噤む。


 ミザリーは「ところで」と話題を切り替え、



「お二人とも、お買い物でしたら一緒にどうですか? シュラちゃんがいいお店を知ってるんですよ」

「そうなのか? さすが物知りだなァ、オマエ」

「と、当然よ。私はこの街で一番の冒険者だもの」



 自慢げに胸を張るシュラは、弾んだ声で「何を揃えたいの?」と訊いてくる。先程までの不機嫌が嘘のような変わりようだった。



「おう、実はウィラニアから旅立つことになってな。消耗品やらを揃えておきたいんだが」

「ええッ!? ウィラニアを離れてしまうんですか!?」



 何でもない調子で言うゼノに、ミザリーが目を剥いて驚きを露わにしていた。


 ゼノは「おう、離れるぞ」と頷き、



「ギルドの受付嬢からな、ギルド移籍の話を持ちかけられてな。フラウディア王国ってところのギルドに移籍しろってお達しだ」

「フラウディア王国……あの大きな国の……」



 ミザリーは呆然とゼノの言葉を繰り返していて、どこか寂しげな雰囲気が漂っている。

 いきなり「ウィラニアから旅立つ」という重大な発表を、軽い調子で明かされたのだ。交流もあり、冒険者としても頼もしいユウとゼノがいなくなるのは衝撃的だろう。


 そんな彼女とは対照的に、シュラは「へえ」と言葉を返す。



「まあ、納得できるわ。アンタたち強すぎなのよ。こんな辺鄙へんぴな街じゃ、アンタたちのような実力者は持て余すわ」

「レベル0なのにねぇ」



 ユウも何でギルドの移籍を通達されたのか、いまいちよく分かっていない。


 彼はまだ、自分がレベル0であると心の底から信じているのだ。あれから冒険者カードを何度も確認してみたが、一向にレベルもHPゲージもMPゲージも数値が表示されない。

 レベルがカンストされているとは、ユウもゼノも夢にも思わないだろう。


 シュラは少しだけ考えるような素振りを見せると、



「分かったわ。なら、私もフラウディア王国の冒険者ギルドに移籍する」

「ええッ!? しゅ、シュラちゃんまで!?」



 いきなり自分の友人がフラウディア王国の冒険者ギルドに移籍することを決め、話がついていけない様子のミザリー。


 唐突な出来事に驚いた彼女は、シュラの肩をぐわしと掴むと前後に容赦なく揺さぶる。



「か、か、考え直してシュラちゃん!! フラウディア王国の冒険者ギルドなんてレベルが高すぎるよ!?」

「あばばばばばばアンタ止めなさい本当に今すぐ止めないと殴るわよ!?」

「あいたッ!!」



 混乱状態に陥ったミザリーの頭をぶん殴って前後に揺さぶる奇行を止めさせ、シュラは言う。



「私もそろそろレベルアップしたいと思っていた頃合いなの。だからちょうどいいわ。まだ冒険者として常識も何も知らない世間知らずの監督として、一緒について行くわよ」

「ほんと!? おねーさん、やっぱりいい人だね!!」

「やっと私の凄さに気づいたかしら? もっと褒めてもいいのよ?」



 ユウの純粋無垢な視線を受けていい気分になったらしいシュラが、ふふんと自慢げに笑う。



「そうと決まれば、ミザリー!! 冒険者ギルドに行って、移籍の紹介状を貰ってくるわよ!!」

「ええッ!? わ、私もですか!?」

「当たり前じゃない。私一人でこの常識知らずたちを御せると思ってる訳?」



 シュラはミザリーの腕を掴むと、ずるずると引きずって冒険者ギルドがある方面へ歩き去ってしまった。


 少女たちの背中を見送ったユウとゼノは、



「あ、お店聞いてないや」

「探せばいいだろ。金ならあるし」

「……何なんじゃ、あの二人は」



 日陰でこっそりと休んでいたローザが、呆れたように呟いた。

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