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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第6話:フラウディア王国へ行こう

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【Ⅱ】冒険者ギルドの移籍

「らんらんらーん、らんらんらーん。きょーうのお仕事はー、なーにかなー」

「ユウ坊、よそ見しながら歩くな。危ねェだろ」



 意気揚々と意味不明な歌を歌っていたユウは、ゼノの注意を素直に受け止めて「はぁい」と応じる。


 ダンジョン攻略から次の日、新たな仕事を求めてユウとゼノは冒険者ギルドに向かっていた。

 当然ながら、彼女も一緒である。



「うう、何故にわらわが一緒に冒険者ギルドへ赴かねばならぬのじゃ……」



 使い魔である蝙蝠こうもりに日傘となってもらったローザが、沈んだ表情でユウとゼノの後ろに続いている。


 ユウは「ええー?」とローザへ振り返ると、



「だって、宿屋に残しちゃいけないってゼノが言ってたから」

「妾は吸血鬼じゃ!! 太陽の光は苦手なのじゃぞ!! 消えてしまうぞ!!」



 ローザがそう叫ぶと、近くを通りかかった女性や薬草を売りに来ていた男性が勢いよく振り返った。


 彼らも吸血鬼という存在は知っているのだ。

 まさか本当に吸血鬼か、と確認する為に振り返るのは当たり前である。


 周囲の奇異な視線をものともせずに叫ぼうとするローザの口を押さえ、ゼノは取り繕うように大声で言う。



「オマエ、いい加減にその妄想癖をやめろ。自分が吸血鬼だなんて嘘を吐くんじゃねェ」

「むー、むーッ!!」



 ローザは口を押さえるゼノに意見を叫んでいるようだが、くぐもった声しか出なかった。


 ゼノの言葉を信じたのか、通行人たちはローザに注目することをやめて再び歩き始める。中には子供が「ねえ、吸血鬼ってなあに?」などと自分の親に問いかけていたが、親は微笑むだけで何も答えなかった。

 おそらく、誰も彼もがローザのことを『痛い子供』と認定したのだろう。


 ゼノはローザを解放してやると、



「この侍従メイドは本当に言うことを聞かねェな。額に三発ほど矢を射ってやらなきゃダメか?」

「こ、この妾の口を塞ぐなどと……!! 不敬で――」

「ローザちゃん、静かに」



 ゼノに噛みつこうとしたローザだが、主人であるユウの命令には逆らえずに口を閉ざしてしまう。


 隷従魔法によって喧しく騒ぐローザを黙らせたユウは、



「ローザちゃんが吸血鬼ってことは秘密なんだよ? 秘密がばれちゃったら、ローザちゃんは死んじゃうよ?」

「…………」



 人形のような愛らしい顔立ちを歪めるローザだが、ユウの言葉は理解できるので小さく頷く。

 ユウは「ん、いーこいーこ」とローザの頭を撫でると、隷従魔法を緩める。

 隷従魔法が緩んだおかげで、ローザはちゃんと喋られるようになった。自分の声がきちんと出るのか確かめるように、彼女は喉に手をやって「あー、あー」と何度も発声して調子を整える。



「それじゃ行くぞ。今日も仕事をしなきゃな」

「はぁい」

「うう……不本意なのじゃ……理不尽なのじゃ……」



 ぶつくさと文句を言うローザを引き連れ、ユウとゼノは冒険者ギルドを目指した。


 ☆


「こーんにーちはー!! お仕事くださーい!!」

「ありません」

「何でぇ!?」

「何でもです」



 冒険者ギルドの扉を開けて仕事を求めた瞬間に、この返答である。


 いつぞやに繰り広げたやり取りだが、まさかまたこのやり取りをすることになるとは思わなかった。やはりまだレベルが足りないのだろうか。

 前にやったダンジョン攻略でレベルは上がっていなかったのだろうか。


 ユウが受付の前で「ううー……」と納得がいかないとばかりに受付嬢を見据えると、



「……あると言えばありますが」

「ほんと!?」

「ええ、ですが少し遠いですよ」



 受付嬢はそう言って、一枚の羊皮紙をユウとゼノの前に差し出した。


 羊皮紙に書かれた文章に目を走らせると、それはギルドの紹介状だった。

 行き先はフラウディア王国とあり、ユウとゼノには聞き覚えのない国の名前だった。


 二人揃って首を傾げると、その後ろで退屈そうに待機していたローザがぬっと腕を伸ばして、ユウとゼノに渡された羊皮紙を奪う。その紙面にざっと目を走らせて、



「なるほど、ギルドの移籍じゃな」

「分かるの?」

「伊達に長く生きておらんのじゃ。フラウディア王国は、このイグリアス大陸で最も大きな国じゃぞ。たくさんの人がいて、流通もあり、冒険者の仕事もたくさんあるじゃろう」



 ローザはユウに羊皮紙を突き返し、



「さしずめ、お主らはウィラニアの冒険者ギルドでは手が余るのじゃろう。レベルが足りすぎておるのじゃ」

「ええー、ぼくたちまだレベル0なのに?」

「妾を服従させるほどの魔法使いなのに、レベル0な訳ないじゃろう」



 ユウはローザの言葉に納得できなさそうに唇を尖らせるが、反論も出来ないので仕方なしに「分かったぁ」と頷く。



「じゃあ、この町とはお別れなの?」

「今度はお客様として訪れても構いません。永久追放という訳ではありませんので」



 受付嬢は朗らかな笑顔で言い、



「ところで、ダンジョン攻略に向かった冒険者の皆様がまだ帰還しないのですが、詳細はお分かりですか?」

「よーし、ユウ坊。旅の荷造りとシュラのお嬢ちゃんと先生に挨拶しに行こうな」

「うん、行こう!!」

「お主らが原因じゃろうに……逃げるとは情けないものよ……」



 話を逸らすように提案するゼノにユウは頷き、ローザは呆れたようにため息を吐いていた。

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