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最強の魔王を倒したのは異世界転生者ですか? いいえ、通りすがりの冒険者です  作者: 山下愁
第3話:始まりの街の冒険者

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【Ⅱ】冒険者ギルド、弾ける水晶玉

 女の丁寧な導きのもと、ユウとゼノは無事に冒険者ギルドに辿り着いた。


 巨大な噴水が中央に据えられた広場に面した建物で、最も大きな建物が冒険者ギルドだった。

 色鮮やかな赤い旗に翼を広げた立派な鳥の紋章が描かれ、建物の作りも他の建物とは比べものにならないぐらいに頑丈である。さらに人の出入りも激しく、主に武装した若い男女が建物に出入りしている。


 冒険者ギルドの前に立つユウとゼノは、建物の立派さと人の出入りの激しさに圧倒されていた。



「凄いねぇ、ゼノ」

「ああ、凄ェな」



 今までこんな人の出入りがある建物を見たことがないユウとゼノは、それだけ冒険者ギルドが重要な施設であることを悟った。


 ユウはあまりの人の多さに恐怖心が生まれ、ゼノの背中にそっと隠れる。



「ゼノ、ぼく怖い……」

「安心しろ、ユウ坊。何があってもアタシがオマエを守ってやるよ」



 怖がるユウの頭を撫でてやり、ゼノは言う。


 人の流れが途切れたところを見計らって、ユウとゼノは冒険者ギルドに足を踏み入れる。


 扉を開けた先に広がっていたのは、



「わあ、人が凄いねぇ」



 ゼノの背中にしがみつくユウは、建物の中にいる人の多さに驚く。


 剣や槍などの武装をした若者が列をなし、仕事の依頼を受けているようだ。中にはユウと同じ魔法使いもいるのか、木で作られた長杖ロッドを抱えている少女の姿も見える。



「冒険者になるにはどうしたらいいのかな?」

「そっちの空いてる列に並ぶんじゃねェか?」



 ゼノが指で示した先には、ガラガラの受付があった。


 受付が掲げる看板には『冒険者登録』とあり、どうやら冒険者を登録する場所のようだ。

 隣のやたら長い列は、どうやらすでに冒険者として登録されているらしい。だから冒険者登録の列は空いているのだ。


 ユウとゼノは、冒険者になる為に冒険者ギルドへやってきたのだ。

 必然的に並ぶ列は決まっている。



「すみませーん、ぼくたち冒険者になりたいです!!」

「あ、はい。いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」



 明るい声でユウとゼノを出迎えた受付の少女は、ユウの後ろに控えるゼノと目が合うなり「ひッ」と短い悲鳴を漏らす。


 怯えているのが明らかに分かる受付の少女は、



「し、失礼ですが、ダークエルフの方も……?」

「そうだけど? 何か文句があんのか、オマエ」

「いいえ何でもありません!!」



 ゼノが凄むと、受付の少女は泣きそうになりながら首を横に振る。


 確かにゼノは怖いところもあるけれど、この美しきダークエルフは優しいのだ。怒ると正座させられて二時間から三時間ぐらいガミガミと説教されるが。


 何故、この街の人はゼノを恐れるのだろうか。

 ユウはそれが謎で仕方がない。



「おねーさん、冒険者になるにはどうしたらいいの?」

「あぇ、は、はい!! あのですね、まずはその人の魔力量と潜在能力を見て、ふさわしい職業を選択します!!」



 そう言うと、受付の少女が差し出したものは一抱えほどもある水晶玉だった。


 紫色の布の台座に水晶玉を乗せて、受付の少女はユウに言う。



「この水晶玉に手を乗せてください。あなたの魔力量と潜在能力が表示され、それらの情報がこちらの『ラプラスの紙片』に記載されます」



 受付の少女が取り出したものは、手のひらに収まる程度の小さな紙切れだった。

 今はまだ真っ白な状態だが、ユウが水晶玉に手を乗せれば情報があの紙に記されるのだろう。


 ユウは「どんな冒険者になれるかな?」と期待に胸を膨らませながら、水晶玉に手を翳す。


 その時だ。


 パァン、と。

 ユウが手をかざしていたはずの水晶玉が、粉々に砕け散った。



「びゃッ!?」



 唐突に砕け散った水晶玉に驚くユウは、すぐさまゼノの背後に隠れる。



「ぜ、ゼノ、ゼノ!! 怖い!!」

「ユウ坊が壊したんだろ。アタシは知らねェよ」



 背中に隠れるユウの言葉を一蹴するゼノは、砕け散った水晶玉の破片を指で示す。



「とりあえず、ユウ坊。水晶玉を直してくれ。アタシが使えねェだろ」

「う、うん。分かった……」

「それと、受付の女の子にもちゃんと謝れよ」

「はぁい……」



 ユウは青い魔石が埋め込まれた長杖の先端を、砕け散った水晶玉に向ける。


 長杖を振れば、しゃらしゃらと繊細な装飾がぶつかり合って綺麗な音を奏でた。



「《もとどおり》」



 いつものような子供の魔法じみた呪文で、魔法は発動する。


 すると、水晶玉の破片が勝手に繋ぎ合わさっていき、元通りの水晶玉に修復される。水晶玉はあっという間に元通りの状態になり、他の人が使えるようになった。


 ユウは長杖を握りしめて、申し訳なさそうに受付の少女へ謝罪する。



「水晶玉を壊してごめんなさい……」

「あ、い、いえ……その、お次の方、どうぞ……」



 受付の少女はぼんやりした様子で、ゼノに水晶玉へ手を翳すように促す。


 ゼノもユウと同じように水晶玉に手を翳すが、パァンと水晶玉が二度目の爆発を遂げた。


 赤い瞳を瞬かせたゼノは、砕け散った水晶玉の残骸を静かに見下ろす。

 彼女はそっとユウへと振り返ると、



「悪ィ、ユウ坊……アタシも壊しちまった……」

「じゃあ、ゼノも受付のおねーさんにごめんなさいしようね」



 ユウは長杖をしゃらしゃらと振って水晶玉を再び修復し、ゼノに受付の少女へ謝罪するように促した。


 さすがに二度も水晶玉が壊れるとは思わなかったらしい受付の少女は、ゼノが「悪かったな」というぶっきらぼうな謝罪にも呆然としていた。

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