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さんたくろす!  作者: 結城コウ
8/13

追跡者ーシスターズー~母もいるよ~

銃士(じゅうし)()二条(にじょう)パークスはこの辺りでは一番大きなショッピングモールだ。

各種専門店に有名ファーストフードからレストランと言った飲食店、それに映画館やゲームセンター等の娯楽施設もパークス内にあることから、連日人で賑わっている。

そして、三太の位置情報はパークス内から出ていたため、姉妹達は連れ立って同パークスに出向いていた。

「いちなおねえちゃん、おにいちゃんはどこ!?」

「この辺り……のはずなんだけど」

一菜は何度も携帯で三太の位置情報を確認する。

だが、正確な場所がわからない。

パークス自体が八階建てに加えて地下二階まである事で上から見下ろす形の現行の位置情報サービスでは階層までわからない。

そして、こういった場所にありがちなGPSの不安定さで表示される位置は飛び飛びにワープしている。

「一菜、分かれて行動するしかないんじゃない?」

「……そうね、パークス内に居る間はそうした方がいいみたい」

「じゃあ、六実と七花以外はみんな携帯を持ってるわね?六実は一菜、七花はお母さんと一緒、それ以外は散るわよ」

「散るって言ってもどの階を担当するとかは?」

「あえて決めないわ。自分達の勘を信じなさい」

「ええっ!?なんでー!?」

百佳は人差し指を立てた。

「あとあとで誰か一人に責任をかぶせないためよ。パークスは地下を含めて十階建て、私達は七人で下の二人を考えると一人で二階分を担当しないといけないわ。そんなやり方では担当エリアに居たとしても見つけるのは困難だし、担当以外では見つけられる目がないわ。それなら、各々の直感に頼った方がマシよ。それに、私達は家族である分、ある程度嗜好(しこう)を知っている。いそうな場所の取捨(しゅしゃ)選択ができるはずよ」

「……じゃあ、反対意見はないわね?お母さんの言ったやり方でいきましょう」


とは言え、十階建てから一組を探すのは至難(しなん)の業だった。

ある程度嗜好が分かっていると言っても、相手がいることである以上、その嗜好の通りに行動すつとは限らない。

例えば、ラーメンが好物だからと言って、デートならラーメン屋には中々入らないように。

「一菜お姉ちゃん」

六実が一菜の袖を引くと映画のポスターを指差した。

二人が居た階には映画館があるため、現在放映中の映画や放映予定の映画のポスターが所々に貼られている。

「分かってるわ。三太くんが見たがってた映画ね」

「じゃあ、お兄ちゃん、中にいるんじゃないの?」

「そうかもね。でも、確認のためだけにチケットを買う事は出来ないし、映画館の中まで確認出来ないわ。必ずいるとは限らないし」

「終わる時間みればいいんじゃないの?」

「…………あ、そうね。出てくる人間を見てればいいのか。時間はかかりそうだけど……まぁ、お姉ちゃん達以外にもいるし、いいか」

そう言い、放映時間を確認しようと、映画館に向かったところで、一菜は引き返した。

「一菜お姉ちゃん?」

「しっ!」

近くにあった柱に身を隠すように二人は回り込んだ。

「え、なに?」

「ビンゴってことよ」

一菜が指差した先には三太が女の子と二人連れで今まさに映画館から出てきたところだった。


一菜はすぐに他の家族を集めた。

三太達は映画館近くのファーストフード店で飲み物を飲んで休憩しているようだった。

幸いパークス内の広場から見える位置だった事もあり、きょうだい達は離れた位置から動向を見守っていた。

「ねぇ、これどういうことだと思う?」

百佳が疑問をこぼす。

みんながみんな同じ疑問を抱えていた。

そして、それに対する答えも誰一人持っていなかった。

「あの子、誰なの?」

遠目ではあるが、三太と一緒にいるのは四葉には見えなかった。

四葉の髪は茶色がかっていて、普段は肩程度まである髪をその日の気分で結んだり、結ばなかったり、結び方を変えたりとしている。

だが、今、三太の前にいる娘は黒髪で腰の辺りにまであるロングヘアだ。

服装もその黒髪に合わせたような白を基調とした清楚系で四葉の好みとは異なっている。

そして、何よりも笑顔だ。

三太の前にいる娘はニコニコと絶えず笑顔で接していた。

未だ反抗期真っ最中の四葉ではあり得ない。

故に満場一致であれは四葉ではない、それが姉妹達の出した結論だった……一人を除いて。

「なに言ってるの?あれは四葉ちゃんよ」

二穂の言葉にその場にいる全員が目を見開いた。

「なに言ってるの!?」

「表面的なことに(だま)されないで、服装が変われば印象も変わるのよ」

「でも、よつばおねえちゃんはあんなにかみながくないよ?」

「ウィッグでしょ?確か、四葉ちゃんの友達には家が美容院の子がいたはず」

「でも、四葉お姉ちゃん、あんな風に笑うかなぁ?」

「そんなの演技すればいいだけよ」

百佳が便乗するが二穂は首を振った。

「むしろ、あれが四葉ちゃんの素よ。普段が素直になれない分、素直になればあんな風にニコニコ笑えるの」

「……後はメイクで印象を変えれば別人のように感じるか。でも、あの子が四葉である可能性があるかも知れないけど、四葉であるとは限らないんじゃないの?何か根拠はあるの?」

「一番ごまかしが効けないのは骨格よ」

「体型ってことー?」

「厳密には違うね。パットやコルセットでごまかせない訳じゃない。シルエットが完全に四葉なの」

「え……それだけ?似たような感じの人なんじゃないの?」

「シルエットを意識して見ていれば、四葉ちゃんの姿が浮かび上がってくるでしょ?」

「……見えない。二穂だけじゃない?」

言葉には出さないが他の姉妹達も百佳の言葉に同調していた。

「言ったら悪いけど、みんな四葉ちゃんのことよく見てなかったんだね」

悲しげに呟く二穂、その様子に姉妹達は判断を迷った。

「だったら、どうにかして確かめられない?」

「でんわをかけてみたらー?」

はっとした表情で五芽が真っ先に四葉の携帯に電話を掛けた。

「……駄目だね。電源切ってるみたいだよー」

「どうするべきかな……」

「……ハァ」

あからさまに大きなため息を百佳が吐いた。

「本来の目的を考えなさい。そんなことはどうでもいいのよ」

「え?」

「いい?みんなはなんでここに来たの?何のために」

「それは……」

「四葉の計画を邪魔するためでしょ?あの子が四葉かどうかは大した問題じゃない」

「……ねぇ」

「そうかも知れないけど、どうすればいいの?」

「……ねぇ、てば」

「当たって砕けるしかないわ。多少強引でもこのまま合流すればいい雰囲気になんてならないでしょ?」

「だから、ねぇってば!」

大声を出す七花に注意が引かれた。

「なに、どうしたのよ?」

「おにいちゃんたち、おみせからでてったよ」

七花が指差した先の三太達は違う場所に向かっていた。

「まずいよ!この先はエレベーターがあるんだよ!」

「あ……」

姉妹達は二人を追う。

だが、気づかれない様に距離を置いた事が裏目に出た。

二人に追いつくより先にエレベーターは閉まった。

二人は此方に気付く様子はなかった。

「ここまできて見失っちゃうと大変だよ!」

「待って、止まる階を確認すれば……屋上ね」

「確か、屋上には観覧車があったねー」

「陽も落ちる頃だし、そうとしか考えられないけど……」

「観覧車で二人っきりなんてまずいよ!」

「とにかく追いかけるわよ!」

次に来たエレベーターに乗り全員で屋上に向かった。

屋上には観覧車以外には売店と広場しかない

すぐに姉妹達は周囲を探したが、二人を見つける事が出来なかった以上、観覧車に乗ったと考えるのが妥当だった。

「……最後の最後で捕まえ損ねた!」

一菜が悔し気に壁を叩いた。

予想外に痛かった為、右手を抑えてうずくまった。

「~~~~~~~~~~~~~~~~!?!!!!!!!」

「なにしてんのよ……ハァ」

ため息を吐いて、百佳は近くのベンチに腰掛けた。

「ねぇ、どうするの?」

「こうなったら、他に手はないわよ。観覧車から出てきたところを捕まえるくらいしか」

「でも、それって……」

「手遅れかもね。最後に観覧車なんて、四葉の¥が考えそうなデートの締めじゃない」

「じゃあ、やっぱり、四葉おねえが?」

「……やっぱり、見つけてすぐに尻込みせずに捕まえたらよかった。もう成す術なしよ」

「あとはお兄ちゃんと四葉お姉ちゃんしだい、か」

「そういうことよ」


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