『フジ グリーンティー』
クリーム色の壁を見ている。
あと2ヶ月もすれば、私も次の人に取って代わられるだろう。
2週間前にこの場所に越してきてから、ずっと同じ場所にいる。
同じ場所で世界中の仲間たちと連絡を取りながら、任務の時を待っている。
いつの間にか景色が変わり、水の音が聞こえ始めた。
人が入ってきたようだ。
今日の任務が始まる。
どんどんと部屋の温度が上がっていき、体中に汗をかく。
私は、それと一緒に泡を吹く。
ぷくぷくぷく。
水の音が一瞬止まり、また同じように聞こえ始める。
任務成功だ。
この一瞬の注意を逸らしたことで、隣の部屋の蛇口の勢いが強くなるだろう。
隣の部屋の主はいつもより早く手を洗い終わり、いつもより早く海外の恋人とビデオチャットを始めるだろう。
海外の恋人はいつもより長く恋人と話すことができ、満足した気持ちで深い眠りにつくことで、明日の消防士としての仕事のパフォーマンスを向上させるだろう。
そしてパワフルな消防士の働きで、明日のある地区での火事による死傷者はゼロになるだろう。
消防士の側にいる私の仲間に連絡を取る。
シャワーを浴びている消防士は、満足気な表情をしているようだ。
仲間も今から泡を吹くようだ。
絶妙なタイミングで泡を吹くことで、誰かの平和を保つのだろう。
日々の生活の裏で、私達は平和を目指し暗躍している。
私達の名前はフジグリーンティー。
世界平和を目指し暗躍するシャンプーだ。
シャンプーって、冬に寒暖差で容器の隙間から泡吹きますよね。