表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

記念作品シリーズ

年神様

作者: 尚文産商堂

昔から、母が何をしていたかが分からなかった。

母は公家の出で、父と結婚してからも、それを止めようとはしなかった。

本来は公家の当主がするべきことだったらしいのだが、結婚できたのは母だけで、その血統を残すため、とこの儀式を守るためにずっとしているということらしい。

昔聞いたときにそんなことを教えてくれた。


昔は旧暦でしていたらしいが、戦後になって新暦でするようになったそうだ。

大晦日の9日前までに大掃除を済ませ、6日前までに年賀状を書き終わり、3日前までにほかの準備も全て整える。

ちなみに目安が6日目がクリスマスということだ。

3日前、門松を立てて、さらに清め塩を振りかけて祝詞を上げる。

そのうえで家の中にもあちこちに塩をまいて、そのうえで方々で祝詞を唱え続ける。

大晦日になると、12時から家の敷地の四隅に小餅が入った小指くらいの壺を埋める。

この壺は1月15日が過ぎると掘り返し、どんど焼きで焼くことになる。

だいたい硬くなっているが、焼餅はとても香ばしくておいしい。


正月となる15分前、母は玄関へと行き、扉を開ける。

「ようお越しくださいました、年神様。来年もどうぞよしなに、よろしくお願い奉ります」

玄関で正座して、頭を深々と下げると、ひゅう、と風が吹き込んできて、何かがやってきたことが分かる。

そのうえで、家の中で3日前までに用意しておいた専用の部屋へと母は案内した。

その部屋は1月14日まで封印され、15日になると同時に開かれる。

母が言うには、年神様を出迎えているんだということだったが、科学全盛のこの時代、なかなか信じられることではない。

それでも、そのやり方一つ一つを後ろからついて回って覚えて、それを紙に書き残した。

それを数え15になった翌年からずっと続けている。

だから今年も年神様を出迎える。

今年も、いい年になりますようにと祈りを込めつつ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 信じてやることこそに意味があるのか、形だけでも行い続けることに意味があるのか。でも、そうやって残っているのだから、誰かにとって、何か意味があるものとなって息づいているのだと思う。 [気にな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ