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5話 ちょっとピンチでした

翌日。


おはようございます。よく眠れました、と言いたいところではあったけど残念なことにあまり眠れなかった。

人がいるという事で何かのはずみにうっかり問題を起こさないか不安で寝付けなかった。寝ぼけてうっかり動いたり浮いたりしたら大変だからね。

自分の体のことがよくわかってないのは問題だ、早急に対処していきたいところではある。

で、いまはティアと呼ばれていた女の人の腰につけられて運ばれている。


「ところで何でこの金属の缶、先端に尖ったものがついてるの?」

「さあ、そういえば何でだろうな?リール」

「わからないことがあるとすぐに僕に投げるのはやめてください…そうですね、その缶の使い道に関係しているんでしょうね。」

「そもそもこれって道具なのか?そしたら、どうやって使うんだろうな。」

おっ、僕について話されている。ずっと黙っているのも何だか暇だし、ちょっとだけ驚かせてみようかな。

内容物を変更する。危険物だと怖がらせるし、何かあると大変だ、ここは言い訳が効くようにラベンダーの香りがする芳香剤で行こう。中身を入れ替えて…よし、噴射だ。

「きゃっ!な、なんか出てきたんだけど」

「これは…水?いや、なんだか花の匂いみたいなのがするな。」

突然のことに、テオとティアが驚いている。

「…?なんだったかしら?この匂い、どこかで…」

「これは睡眠薬に使われるランベルの花の匂いですね」

「えっ!?てことは今出てきたものって…」

「ちょっと待っててください。『解析』」

リールの目が不思議な色に光る。今のはスキルかな、解析とは。なかなか便利そうである。

「…いえ、この液体には睡眠作用は見受けられません。恐らく、匂いだけの偽物かと。」

そこまでわかるのか。もしかしたら登録されてなくて解析が発動しないんじゃないかと思ったが、そんなことはないようだ。

「そ、そうなの?よかった。どうして突然こんなものを出してきたのかしら」

ティアがそんな風に聞く。

「さあ?なんか変なことでもしたか?どっか押したりとか。」

「そんなことしてないわよ。…でもちょっと待って、もしかしてこの上の方についてる赤いものって」

ティアが僕のノズルに手をかける。いつ気づくかと思ってたけど、意外と早く気が付いたみたいだ。

ティアがノズルを押し込む。

「あっ、さっきのが出てきたわ。」

「ということは、これはそういう道具なのだろうか?」

「えぇ、恐らくそういうものなのでしょうね。」

「しかし不思議な道具ですね、中はどうなっているのでしょうか…ちょっと分解してみてもいいでしょうか?」


あ、これちょっとマズイかも?

「そうだな…先端の部分だけちょっと外すだけなら大丈夫だろう。」

大丈夫かわからないです。それ首がもげます。

「だ、大丈夫?うっかり壊れたりとかは」

「それなりに心得はありますし『リペア』の魔法も持ってますので、そうそう壊れたりはしませんよ。」

ちょっと待って、これもしかすると大ピンチ?


「じゃあちょっと貸してください…」

「はい、私もこれがどうなってるか気になるし」

これは…やばい気がする、いきなり命の危険が、仕方がない!


「きゃっ!」

「えっ?」


浮遊で浮いてしまった。結果2人の手からは離れるが、明らかに不自然だ。全員の目がこちらに向いている。

「浮いた…?ってことはこいつは生きてるのか?」

「金属の缶よ…?そんなことある?」

テオとメルタがポカンとしている。

これは…いたたまれないな。

「…生きている物質というのはいないわけではありません。主にダンジョンにいるミミックという魔物は宝箱や冒険者の遺品に擬態しますし、噂によると、遠い北の国にはインテリウェポンという武器の見た目をした魔物がいるそうです」

「ってことはこいつは魔物!?みんな!戦闘の準備!」

やめて!魔物と間違われている。なんとかして否定しないと。

全力でスプレーの首を横に振る。通じるかわからないが、頼む!僕悪いスプレーじゃないよ!!

「これは…?めっちゃ否定してないか?」

「もしかして、私たちの言ってることがわかるの?」

首を縦に振ろうとしたが、この首は横にしか回せない。上下にふよふよして表現してみる。

「どうやら分かるみたいですよ。魔物は人間の言葉を理解しないので、少なくとも魔物ではないみたいですね。」

「魔物じゃないの?よかった~。」

ティアは胸を撫でおろす。

「あなたは何なの?私たちの敵?」

メルタが僕に問いかける。首を振る。

「動物なの?それとも精霊とか?」

精霊なんてのもいるのか、また首を振る。

「わからないわね。いったい何なのかしら。」

「とりあえず害はなさそうですし、気にしないでもいいのではないでしょうか?」

「まあそうか。なあ、お前は俺たちについていくか?」

ちょっと考える。別にこの人たちについていく必要はない。だけど悪い人たちじゃなさそうだし、今さら別れてしまうのは悪い気がする。とりあえずついて行っていいんじゃないだろうか。

僕は縦にふよふよと浮いて、テオのところに寄っていく。

「ついていくのか。じゃあここから俺たちは街に行く、このままついていくか?それとも誰かに持っていてもらう?」

持っていてもらうのは悪くはないけど、たまには自分で移動したい、この体にももうちょっと慣れたいしね。ついーっと浮いて、だれとも近寄らないようにしながら自分で行くことを表現しようとしてみる。

「はいかいいえの質問にしないと答えがよくわかりませんよ。」

「そうだったな…、だがこの感じなら自分でついていくってことでいいんじゃないか。」

よかった。ちゃんと理解してくれたみたいだ。

「じゃあ行くぞ。今日の夕方にはミーデルの町につくだろう。」

そういうとみんなが歩き始める。僕も続こう、出発だ。



「ねえところで缶さん、質問なんだけど。」

?なんだろう。

「もしかしてあなた、異界の拾得物じゃない?」

あー、違うね多分、生きてるし。首を横に振る。

「え~!そんな~、大金持ちの夢が…」

ティアががっくりとうなだれる。

「なぁ…多分…異界の拾得物よりずっと貴重だぞ…」


書き溜めが出来ないのでちょっとビビってます。

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