唐突過ぎるこんにちは
「それじゃ、また明日ね」
友人と別れ、だんだんと沈んでゆく夕日を背に家路につく
誰も居ない家を思うと、もう少し友人と話していたかったが仕方がない
友人には帰りを待っている家族がいて、遅くなると心配するのだから
私の両親は数年前に事故で亡くなってしまった
現在の私は両親が残した貯金と、バイトで稼いだお金で生活している
高校は両親が亡くなった時に中退して、その日からずっとバイト漬けの日々だ
友人とはバイト先で出会い、今では親友とも呼べる仲になった
彼女と話している時は孤独を忘れられるが、家に帰ると
やはり独りなのだと実感してしまうのが恐ろしかった
暗い考えに思いを巡らせていると、気がつけばもう玄関の前まで来ていた
カバンの中から鍵を取り出し、鍵穴に差し込む
誰もいない暗い部屋を想像すると、思い切り気分が落ち込んでしまう
ふと、鍵の僅かな金属音の他に部屋の中から小さな声がした
「…だから、…が…」
「……しかし…、なぜ…」
上記にもある通り、私の家には誰も居ない
それどころか勝手に家に上がるような知り合いも居ない
という事は泥棒…?
カバンからスマホを取り出し110と打ち、いつでも助けを呼べるようにする
自分の家にもかかわらずこっそりと中にはいるのは、なんだか奇妙な心地だが仕方が無い
玄関近くに置いておいたハエたたきを装備し、ゆっくりと声の発生源へと忍び寄る
電気はついていないが、どうやら泥棒はリビングに居るようだ
「誰だ」
どうしてだろう、かなり慎重に近寄ったはずなのに
リビングへ繋がる扉の向こうから聞こえた低い声に、思わず飛び跳ねてしまいそうになった
先程よりも確実に近い、恐らく私へ向けたであろう声に返事を返すことが出来ない
恐怖で引きつる喉を何とか動かして、声の主へと尋ねる
「あ、貴方は誰ですか…っ、どど、どうして私の家に…居るんですか…っ!?」
左手にはスマホを、右手にはハエたたきを持ち、うわずった声で問う私はなんて情けないでしょうか
でもこの状況じゃかなり仕方が無いと思う、というかこの状況で冷静になれる人はいないのでは…?
いますぐにでも逃げたい、でも逃げたら何をされるかわからない
相手が扉の前にいる状態では警察にも連絡できない
追い打ちをかけるようにリビングの扉がゆっくりと開かれた
暗くてよくわからないが、相手は随分と身長が高く外国の人に思える
一人が扉から出てくると、もう一人、二人…三人とぞろぞろ出てきた
「あーあ、クラウスが殺気立った声出すから、かなりビビってんじゃないっすか」
「別に殺気立ってはいないが、どうやらそのようだな…」
「ふん、この程度で恐れを抱くとは脆弱な」
「この娘、只の人間…怖い、思う…決まってる…」
四人は私の質問には一切答えず、何か話し合っている
だが、私の恐怖と緊張はピークまで達していて……
ふらりとした浮遊感、込み上がる吐き気とほぼ同時に、私は意識を手放した