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アイブ  作者: 伊恩
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第6話 男の子

6話 男の子


ミラノは黒龍に向かって子供のように無邪気な笑顔を浮かべている。


だが、その瞳は黒龍を蛇のように見つめる…いや、捉えている。


黒龍の中に一層緊張が走った。


正に蛇に睨まれた蛙といった感じだ。


どうすればいいのか分からず、黒龍は石になる。


それから何分経ったのだろうか。実際は2分も立っていなかっただろうが、黒龍には恐ろしく長い時間に感じられた。


凛とした声が沈黙を裂いた。


「そうだよ。こいつは伝説の龍、黒龍だ。ついさっき行ってきた任務の標的で俺の使い魔になった。」


その様子を見かねたユウが、壁にもたれ掛かり、組んだ腕を軽く振って黒龍の変わりに答える。


黒龍はハッとしてやっと我に返った。身の危険を感じ、いそいそとケイの後ろに隠れる。


「黒龍、安心しろ。この2人は信用していい。なんったって俺の元パートナーのコンビだからな。ミラノも無意味に人を威圧して遊ぶなよ。趣味悪いぞ。」


フリルの沢山ついた洋服が、彼女が肩を竦めるとそれにあわせてフリルが動く。


「つまンないのぉー。黒龍ちゃん、安心していいわよぉ。別にとって食ったりしないから♪ それより、アナタたしかに小さくなってるから目立たないけど、知識がある人が見ればすぐにアナタのこと分かってしまうと思うわぁ。現に私なんて昨日読んだ本にあった挿絵だけで分かってしまったものぉ♪ 」


「そうやなぁ。俺もなんとなく見たことあると思ったぐらいや。」


「ゼル、どうにかしてこの姿を変えることは出来ないのか?」


ケイが聞く。


「んー…ユウは攻撃術専門やからそんな術知らんやろう?」


ユウはゼルを見て小さく頷く。


悩んでいる男衆にミラノは場違いなような明るさで話しかける。


「あらぁ♪なら私が術を掛けてあげようかぁ?私、こういう術は得意なのよぉ。」


このミラノの甘ったるいしゃべり方がケイもユウも大の苦手だ。


だが、今回だけは全く気にならなかった。


申し出てくれたことについて考えるので精一杯だったからだ。


しばらくはそれぞれで色々と考えていたが、しばらくして3人は顔を見合わせた。


結局『ばれたら困る!』という気持ちが3人ともめっぽう強かった。


声には出さず、言葉の無いアイコンタクトで3人は相談し、遂に答えを出した。


ユウが小さくう頷いたのをみてケイも頷く。


それを見た黒龍も小さく頷きながら口を開いた。


「頼む…。」


黒龍が言い終わるのと同時にミラノはニッコリとして椅子から立ち上がり、黒龍に向けて両手を広げて詠唱を始めた。


いつもの甘ったるい話し方からは考えられないほどの澄んだ美しい声だ。


ゼルも珍しいものを見るかのように細く笑んで、椅子から立ち上がって腕を組む。


ケイとユウは固唾を呑んで見守り、黒龍はどうすれば良いのか分からず、キョロキョロト辺りを見回している。


しばらくすると戸惑う黒龍の周りに蒼く輝く陣が現れ、黒龍はまばゆいほどの光に包まれた。


「――――眠りし姿よ、今こそ原形をあらわすべし…!!」


ミラノがそう言い放った瞬間、ミラノの言葉に合わせるように黒龍を包んでいる光が眼を開けれないくらいの一層まばゆい光を放った。


皆耐えられず、その場にいた全員がいっせいに目をつぶった。


目を瞑らなかったら目がつぶれてしまうぐらいの光量だったのだ。


それから約1分後、目を瞑っていても感じたほどの激しい発光はもう今は感じられない。


黒龍の新たな姿をみたいっ。という好奇心には勝てず、ケイは恐る恐る眼を開けた。


最初にまだピンボケしている視界に入ってきたのは驚きのあまりいつもの細い

目が2倍以上に開かれて『あるもの』に釘ずけになって座り込んでいるゼルの姿だった。


よほどの事でなければ彼はこんなに取り乱だしたりしないだろう。


ケイはゼルの視線をゆっくりと辿っていった。


何と言うことだ。今回はやはり、ゼルが取り乱すだけの事はあるよほどの事だった。


そこには見たことの無いかわいらしい一人の子供が座り込んでいた。


布を一枚まとっているだけの男の子は薄い茶色の髪に黒の眼をしていた。


ケイの眼よりももっと深い黒、暗黒とでもいうのだろうか。


6歳ぐらいの男の子の整った顔は驚きの表情を浮かべて自分自身の体を見ていた。


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