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プロローグのようなもの

 彼、山岸やまぎし 神羅しんらという少年を分かりやすく言うのならば目を前髪で隠している根暗でいじめられっ子でありながらも思いやりがあり、周りの人たちのために動ける子である。

 しかし、そんな彼は虐められていたとしても、暴力を受け悪口を言われてもどうでも良さそうにするある意味異質な子供であった。


 この物語はそんな彼のほのぼのストーリーを語るところではない。

 この物語には救いは少ししかなく、その救いさえ主人公に牙を向ける…そんな物語だ。

 

 

 さて、最初の説明だが訂正しよう。

 改めて言おうか…彼、山岸 神羅は優しいのではない。周りの人たちのために動いているわけではない。なぜなら彼は孤独と狂気という運命に愛されてしまい、それを受け入れた強者でありある意味受け入れてしまった愚か者である。故に彼は普通の人とは真の意味で分かり合うことはないだろう。


 諸君、気をつけたまえよ?

 彼の瞳を見たら最期…この世のものでない深淵と狂った宇宙の理を見ることになるのだから


 それでもいいと言うなら見るといい、仲間がおらず心開ける人も少ない愚かなる怪物の物語を…



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ーーーいつの頃からだっろう?


 少年は真新しい制服を着ながらふと思う。


 鏡に映る自分の姿を見て、目を隠すように鼻先まで伸びた髪をつまみながら考える。


ーーーこの髪を伸ばして、素顔を見せなくなったのは…


 小さい頃は鬱陶しく目に前髪が入り何度か切ろうとしたが最終的に諦めてこの髪型で過ごしてきたが、気がつけばこれが普通になっていた。


 「しんらー!

 ご飯できたから下に来なさ〜い

 早く行かないと入学式遅刻するわよ〜!」

 

 「はーい」


 ーーー考えても仕方ないことか、この目を隠すのは絶対に必要なことだし…


 そう思いながら、自分の部屋を出て下に降りると、居間にいかにも爽やか!と言えるような少年とロリ系な少女が先に居た。


 「はっ!さすがクズ兄。

 起きるのも遅いし来るのも遅いとかノロマだよね」

   

 「止めてあげなよ徹お兄ちゃん。

 そんなこと言ったら根暗な神羅お兄ちゃん泣いちゃうよ?」


 爽やかな顔とは思えないほどの毒舌を吐いてきて私を馬鹿にするのは山岸やまぎし とおる。私の弟で、その近くに座っている少女は山岸やまぎし ゆめ我らが一家の可愛いアイドルで妹である。

 朝から散々な言われようだが、私はその二人をスルーし朝食が置かれたテーブルに向かう。

なぜ怒らないのか?それへの解は簡単である。


 ーーーこれが日常茶飯事であるからだ。


いや、これだと弟たちが好んで俺を虐めているという語弊を生む言い方になる。正確には俺が基本無口であり、根暗に見える事から始まったと言えよう。

 彼らが裏で【お兄ちゃん素顔あまり見えないけどかっこいいんだし、俺達が悪役になってグレてもいいから明るくなって欲しいの会】を毎回俺の隣の部屋である弟の部屋で反省会をしており、全て筒抜けなのである。それに、彼らは毎回こういう度に俺の目の前ではこうした態度を取っているが、俺がいなくなると涙目になり自己嫌悪に陥り母さん達がそれをなだめている。


 ーーー正直言おう…うちの弟と妹マジ天使!

 んんっ!じゃなかった…俺は根暗などではない。

 無口なのもこの前髪を伸ばすのも分け合ってやっている。まあ、理由は言っても理解されないだろうし言ったところで変人確定なのだから言うに言えない。

 さて、そうこうしているうちに朝ごはんが出来上がった。


 「ほら、あなた達も早く朝ごはん食べていきなさい。今日から入学式でしょ?」


 「分ったよ、母さん」


 「はーい」

 

 「・・・いただきます」


 「あー!神羅お兄ちゃんもう食べてるぅ!」


 「食事だけなら早いね、兄さん」


 慌てながらも朝食を食べだす弟たち、そしてそれを笑顔で眺める無口な父と明るく美人な母と俺…これが我が家の日常である。



 

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