お引っ越し
「ふぅ……今日もいい天気だな」
そういって俺は25年間暮らしてきた部屋の荷物整理をしていた。
俺の部屋、といっても、もうでていってしまうのだが……中にあった家具やその他の荷物はアパートの物だったり売ってしまったりでもぬけの殻だ、大切な小説やら災害にあったときの防災グッズとかはしっかりあるけど、な。
「しっかし会社をリストラされて、それを理由に親から勘当くらうたぁねぇ〜……」
今まで真面目にやってきたってのに上の連中、経営が〜金が〜とかいってさぁ。
やんなっちゃうよもう。
手切れ金とその他もろもろ、慎ましく生活してやっととか。笑えないよな。
さらに親からくだらない理由でリストラされたことを伝えるとそんなバカを養う金はない!!っていって一方的に、だもんな。
「財布、預金通帳とにらめっこしたくないなぁ……生活保護なんてこの歳で貰いたくねぇし……俺にも一応プライドってもんがさぁ」
若くして会社のエリート様に取り入ってゴマすってそれ以外もミスがないよう真面目にやって……プライドってなんだっけ?
だれもいない蛻の部屋で俺は一人愚痴る。
「まぁ……なんとか金にはまだ余裕あるし大丈夫だろ。整理や準備は終えたし、その余裕がなくなる前に行動しますかね、朝飯は安く馴染みのラーメン屋で手軽に済ませますかね」
俺は馴染みの部屋から飛び出し仲良くなった大家のじっちゃんに酒瓶一本渡して別れを告げた。
「ハァ!?俺に貸すやつはもう他のやつに貸し出しちまった、だぁ!?」
大家のじっちゃんから紹介してもらった物件の紹介をしてくれる店に到着した……が予期せぬ事態が発生していた。
なんと手違いにより何日間か前に事前に払った前払いで借りた家賃5万他もろもろ3〜4万と格安[という店の証言]の部屋を少し前に老夫婦に貸し出してしまったらしい。
しかも対応新人にやらせ老夫婦はその新人の友人だったらしい、くそったれめ。
「はい、申し訳ありません。こちらのミスでして……お客様にご迷惑をお掛け致します」
「いや、深くお辞儀されても状況変わらないっすよね……」
「新人はクビにいたしましたので今回のことは水に流して頂きたく……」
クビになったてなぁ……じゃあ俺の安住の場所はどうなるんだっつの……。
「……じゃあ料金返してくださいよ」
「申し訳ありません、新人が老夫婦に当ててしまったようでして……」
「ハァ!?」
「すみません、こちらの物件を無料で3年、いえ、5年お貸しいたしますのでどうか……」
俺はおもいっきり顔をしかめて舌打ちをする、が内心ではほくそ笑んでいた。
【ククク……バ〜カ、最悪安上がりの家に住めりゃどこでもいんだよ!!料金が高くかかるはずがとんだ拾いもんしたぜ、その哀れな新人マジサンキュ――!!】
そして俺はため息を吐きながらおもいっきり落胆したように、肩を落としながら細目で相手を睨み付ける。
「……わかりましたよ、そちらでお願い致しますよ。俺以外にはならないよう気を付けろよ」
「すみません、すみません。お貸しする物件はこちらになります……」
「どれどれ……」
俺は店員に渡された紙を見る。
【裏野ハイツかぁ……ふむ、立地は悪くねぇな家賃5万かからないみたいだが俺には関係ないし敷金なし!!新しいバイトができたとして駅が近いから楽々、さらにさらにコンビニ・郵便局・コインランドリー有りと書いてある、めちゃくちゃ優良じゃん!!】
「悪くありませんね、立地も最高ですし」
「はい、私どものオススメです!最近住んでいた人が……出ていってしまったので」
「なんで出ていったんですか?」
「……企業秘密です」
「……」
【企業秘密だぁ?……つまりなんかあったな?人死にか?近所との縺れ?……ま、よくある訳あり物件だろうな。そんなホラー作品みたいなテンプレおきやしねぇだろうしな(笑)】
「わかりました、こちらに住みます」
「はい!!それじゃあサインと準備をしますので」
こうして俺は、裏のハイツに引っ越すこととなった。
「んだよ、まさかの自分で歩いて行けってか……」
俺は裏のハイツ、自分の家に向かって歩いていた。
「確かに移動する荷物もほとんど無いよ、でもさ、道案内くらいしろってなぁ!!……いっか、済んだことだ」
地図を見てみると……牛丼屋があった。
「……どうすっかなぁ、昼飯にはちょうどいいし食ってくか」
『らっしゃ〜せ〜』
店は昼だと言うのに空いていた。
【こういう店でのこの時間帯のガラガラは珍しいな、ここは初めて来た場所だから客入りのレベルはよくわからないが……】
俺は少し歳をくっているスーツ姿のおっさんの隣のカウンター席に座った。
そして水を持ってきた店員に注文する。
「あ、すみません。牛丼並汁だくお願いします。あと味噌汁と卵ください」
『わかりました、少々お待ちください。牛丼並一丁汁だくで!』
【最近は、ピアスや香水オッケーなんだな……】
『お待たせいたしました、こちらになります』
「ありがとうございます」
『こちらに伝票置いておきますので、ごゆっくりどうぞ』
「じゃあたべるかぁ……うーん……サラダ付けるべきだったかな……あ〜すいませ」
「これ、食べますか?」
俺が手を上げるかどうか迷っていると隣のおっさんがサラダを渡してくれた。
「良いんですか?」
「良いですよ、私は間違って注文してしまってね……さっきのピアスの子なんだけどさ、あっちのミスなんだけどね。伝票にはしっかり書いてあったよ。フフ」
「じゃあサラダ代俺出しますよ」
「いえいえ、おきになさらず」
「気になりますよ……あ、じゃあ自販機のコーヒー飲みませんか?奢りますよ」
「……わかりました、じゃあお言葉に甘えましょう」
「まだ貴方はお腹に余裕があります?」
「すみません、さっき食べたので……」
「あ、で、ですよね!!待っててください今すぐ食べますんで!!」
「大丈夫ですよ、ごゆっくり」
そして俺はサラダと頼んだものをすぐに食べ終わり外に出た。
「え、貴方は裏のハイツの住人なんですか!?」
俺は自販機に金を入れてコーヒーのボタンを押す、落ちてきたコーヒーを取り出して相手に渡した。
「そうです。101号室に住んでます」
「自分は今日から203号室に引っ越してきました」
「そしたら同居人ですね、よろしく」
「よろしくお願いいたします」
「でも……私が言うのもなんだけどやめたほうが良いと思うよ?」
「え、なんでですか?」
「うん、私の隣に住んでる奴の人の生活の痕跡っていうかさ……感じないんだよ、そう言うの。カーテンからこっちをじっと見てるような視線感じるんだけど……他にも103のよくわからない家族とか201の嘘つきオバサンとかね……あそこに住んでる人はおかしいよ、私と一緒に住んでる同居人が毒されないか心配でね……」
「はぁ……」
周りが頭可笑しいねぇ……こんな真夏に長袖の真っ黒スーツ着てるあんたもおかしいっちゃおかしいけどな、あ……聞いてみるか。
「二階の203号室が出てった理由知ってますか?」
「……なんのことだい?あそこは昔から誰も人が住んでいない空き家だよ?」
そうやってクスッと笑う。
【空き家?いや、店は住んでたって言っていたが?ますますヤバイ臭いが……ま、大丈夫だろ】
「ありがとうございます」
「うん、じゃあ私は会社があるから、またね、また会えると良いね」
「そうですね、ではまた」
こうして俺はスーツのおっさんと別れた。
部屋についた俺は荷物を下ろし、一息ついた。
他の住人にはすれ違わなかった、例のカーテンからもとくになにもなく……って怖がる必要やっぱないじゃん!!
いや、でも。
カーテンから確かに目線は感じたし……プラシーボ効果だよな!!
他の住人も恥ずかしくて……ってんなわけあるか。
しかしまぁスーツ野郎といいなんといい。
「結局人の噂なんてそんな物だよな、きっともう頭おかしくて俺を追い出したかったに違いねぇ……」
そんなことは忘れて部屋のなかはやけに整理整頓されていて掃除は楽だったし、家財もバッチリ!!壁紙も新しい、錆た匂いみたいなものも少しするが築30年だったら……なんだろきっと。
ついに203号室に入ったんだよな俺。
大丈夫、ヤバかったら明日文句いって他の家に引っ越せばいいさ。
外見すこしぼろっちかったしなぁ……部屋んなかは快適だけど〜。
【安心したら眠くなってきたな……】
仕方ない、布団もまだ買ってないから非常時の寝袋でも使うかぁ……。
【お休みなさい……】
俺の意識は落ちていった。
バン!!
夜中にいきなりその音は鳴った。
「うお!!」
なんだ!初日からポルターガイストか?
バン、バンバンバン!!
ってよく聞いたら隣からじゃん……。
確か案内書にはこの空き部屋以外住んでるんだっけな……まてよ、なんで隣からなるんだ?
昼頃スーツのおっさんが、いないって言ったよな……じゃあ。
バンバンバンバン!!
この今なってる音はなんだ?
俺は目を瞑って恐る恐る壁に耳を当てる。
……って聞こえるわけないよな。
『………………!!』
ん?なんか聞こえるな。
バンバン!!
『………………ね!!』
え、なになに?
バンバン!!
『隣……………ね!!』
さっきからなんだよ、どんどん音が大きくなってきてるし!!
ガンガン!!
『隣に来るやつ……ね!!』
ガンガン!!
隣って俺だよな、え、なに、俺がなんかした?
『隣に来るやつは死ね!!!!!!』
その言葉は壁の反対側の……俺の逆の耳に聞こえてきた。
俺は振り向くとそこには……
「化け物がいたんだよ!?なぁ先生信じてくれよ、これは妄想や小説なんかじゃねぇんだ!!その証拠に部屋の鍵だってあるし飯のレシートだってあるんだ!!な?嘘じゃねぇんだよ!!信じる気になっただろ!?!?!?」
「わかりました、今日もこの薬を飲んで、病室でゆっくり寝てくださいね」
「ふざけんな!!警察にちゃんとはなしてんだろうな!?」
「話しはしてきましたよ……でも警察はあなたの言う家……裏のハイツでしたっけ?それを発見できませんでしたし紹介したというお店にも行ったところそこもそもそも存在しません。そんなあなたの状態でも私どもはあなたを信じてこのレシートのお店にも個人的に行きました……。しかしあなたのとなりには誰もいなかったらしいですしお一人でもくもくと食べていたらしいですよ……それにあなたの話はいつも辻褄が合いません。昨日はカーテンから殺人鬼がでてきたりそのまた昨日は子供が首を絞め殺してきたり、3日前はスーツの男が……」
「全部本当なんだ信じてくれ!!」
「はぁ……とにかく部屋に戻ってください」「あの部屋の隣誰もいなんだよなぁ?」
「ええ、いませんよ.202は無人です」
「じゃあなんで夜中うるさいんだよぉ!!」
そして今も俺の目には化け物が先生を殺そうとしているところが見えている……が。
「きっとあなたの妄想です」
誰にも見えない、俺だけにしか見えていない。
生きてるのか?
目の前の化け物は?
見えないのか?
ここは現実なのか!?
夏のホラー企画で書きました。
慣れてないとやっぱり難しいですね(-_-;)他の作品様が素晴らしいのばっかで……
おもしろかったら気軽なポイントをどうぞよろしくお願いいたします。