百合姫は悪役令嬢
「リーリエ!
貴様との婚約を破棄させて貰う!」
王子はそう声高らかに宣言しながら
私に剣の切っ先を向けてくる。
私は一つため息をつくと腕組みをした。
ーーーーー
事の始まりは今から1年前に遡る。
王子や騎士団長の息子に右大臣の孫、
果ては大商人の跡取り息子と
この年度の男子生徒は女子にとって
豊作の年となっていた。
そんな真っ只中に途中編入して来たのが
カトレアだった。
彼女は美しく聡明で、元平民ながら
なかなかに見所がある子で
私の中でも評議高く、とても好いている。
そんな彼女に惹かれ始めたのが
優良株の男子達だった。
周りにいるのは自分達の顔と権力ばかり
見ているおべっかしか言わない女子達ばかり。
そんな中、カトレアだけは
彼らに本音で話し、
時に批判し、共に悩み、心から笑った。
そんな裏表無い彼女に彼らは心奪われたのだ。
これが面白くなかったのが他の女子だったのだ。
何せたわわと実った最上級の果実を
総取りされたのだから
その怒りもわからないでも無い。
最初は小さな陰口だったが次第に
彼女の持ち物を壊したり、
彼女を階段から落としたりとエスカレートしていった。
それに怒った王子達は
犯人探しに出た。
追い詰められた女子達は
結託して一つの計画を立てた。
私を黒幕に仕立て上げるというものだった。
王子と婚約している私は、
カトレアに嫉妬していじめを首謀した。
というシナリオだ。
幸い私は授業以外アリバイが無く
計画を立てるのは容易だった。
そうして冒頭にいくのだ。
まんまとその計画に引っかかった王子達は
学校のダンスパーティで私を断罪したのだ。
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「王子、お待ちください!
彼女が私をいじめるなどありえません。」
カトレアが止めに入っているが、
王子は聞かないらしい。
「私がカトレア嬢をいじめた証拠はおありですか、王子。」
「当たり前だ。
貴様からの命令書、実行犯達の自白。
それに目撃者までいるのだ。
言い訳は出来んぞ。」
私はもう一度ため息をつく。
「王子、その命令書とやらは
筆跡鑑定で誰が書いたか判明しておりますか?
目撃者の身辺調査は何処までしましたか?
そして、自白は何処まで裏付けしましたか?」
それを聞いて、王子達は私を睨みつける。
どうやら、彼らの中で私が犯人で結論が出ているらしく思考停止しているらしい。
私の話も単なる言い訳にしか思っていないらしい。
3度目になるため息をつく。
王子達が私に反論しようとした時、
その声を遮る者が現れた。
「王子達よ、落第点だ。」
そう、ダンスホールに声が響くと入り口から
王様や騎士団長に右大臣達が入ってきた。
ホールの参加者達は首を垂れる。
その中を悠然と歩き、私たちの前に進んでくる。
私は会釈だけするとカトレアの手を引いて
後ろに下がり話の輪から外れる。
「今回の件はリーリエ嬢に協力してもらい、
貴様達の力を計るものだった。」
その言葉を聞いて、王子達は驚いた顔をしている。
「リーリエ嬢の言う通り、
貴様達は情報の精査を怠った。」
王様は額に手を当て被りを振った。
「すでにカトレア嬢をいじめていた犯人は
こちらで断定しておる。
後で自身の不甲斐なさを感じるといい。」
そう言うと、王様は話は終わったとでも言うように振り向きこちらを向く。
「リーリエ嬢、此度は迷惑かけたな。」
「いえ、全ては国の為に。」
「すまんな、不甲斐ない息子だか支えてくれ。」
「もったいなきお言葉。」
そう言うと満足したように頷くと、カトレアの方に向く。
「カトレア嬢にも迷惑かけたな。
なかなか聡明な女性だ。
ぜひ、息子の嫁に来てはくれまいか?」
そう言うと、後ろに控えていた大臣や騎士団長が文句を言い始め、いやうちに嫁いでくれと喧嘩を始めた。
それに苦笑しつつ、私は話を進め正しき罪人を処罰し終わった。
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「そういえば、カトレア?
何故、私があなたをいじめていないとわかったの?」
カトレアと私は一緒のドレスルームに入って着替え始める。
私の背中のボタンを外すカトレアに質問する。
「そんなの簡単よ、リーリエ。
だってあなたが私をいじめる時は
直接手を出すでしょう?」
そう言う、カトレアのボタンを私が外し始める。
「あら、私はそんなに意地悪かしら?」
そう言いながらドレスの中に手を入れながら私はカトレアにキスをした。
どうも七千代です。
自分が好きな百合要素を無理やり悪役令嬢にぶち込んだ作品です。