アルベルトの場合
リリアが城で色々あった同日、アルベルトの視点。
今日は誕生日だ。去年まではリリアの参加が無くてつまらなかったが、今年は参加してくれる。
俺の事も嫌いなのを知っているが、彼女は約束した事は絶対破らない。
そう…リリアは男が嫌い。それを知った時に俺は、その括りで嫌われているのがショックだった。その時彼女と距離を取りたくないが為にとっさにふざけた事を言った。
おかげで、まだ付き合いは続けられていた。主に俺から押し掛ける形で。
リリアはどれだけ冷たい言い方をしても無視しない。きっちり話を返す。
だからこそ俺は彼女に惹かれた。
高い魔力なんておまけだ。ただその為に側近候補として可能性が出ただけ。彼女に望む地位は昔からただ一つ。そしてその地位に彼女以外はいらない。
そこまで回想していると、部屋の外から呼び掛けられた。
「そろそろだ。いくぞ」
明らかに呼び掛ける側では無い者からの声に慌てて部屋をでた。
呼び掛けた人物を見て驚いた。
「父上なぜここに。というよりも呼び出しは配下がするものでしょう」
こめかみを抑えながら尋ねる。
「別に良いだろう。息子の誕生日だ。一番に祝いの言葉をかけたかったんだよ」
この父は、他の者達からは常に微笑が絶えない素敵な魔王様と思われているみたいだが、実際は息子の事が大好きなお父さんだ。そしてたまに子供の俺より子供の時がある。
「父上。朝起きたと同時に部屋まで来て、おめでとうと言いに来たのは誰ですか」
「あれはまだアルが寝ぼけてたから、カウントされない」
言い合いをしていると、そろそろ時間です。と俺達のやり取りに慣れている使用人が声をかけてきた。
普通使用人は主から許可があるまで話さないのがルールだが、それだと不都合が多いので二人しか居ない時は許可が無くても良い事にしてある。
「分かった。では行こう」
父はさっさと切り替えた。
俺もしっかり切り替える。
「はい」
二人で広間に転移した。
広間の奥、玉座の近くに着くと父の側近がいた。
彼等は俺達に気付くと挨拶をしてくる。
そんな中、少し遅れて父の側近エドガーと一緒にリリアが来た。
リリアの挨拶は素晴らしく、隠している魔力にも気づいた父が半分本気で俺の嫁発言をしていた。思わずにやけてしまいそうになるのを耐えた。
ちらりとリリアを見ると顔面蒼白だった。そこまで嫌がらなくてもとこっそり落ち込む。
なんとか他の側近に挨拶をし終わり、フラフラした足取りでどこかに行こうとするリリアを追いかける。が、父に捕まってその場から動けなかった。