余裕なんてないです
入口から出ると庭園に出た。
噴水があり、光の魔法で水が七色に輝いている。
辺り一面には色とりどりの薔薇が咲き乱れていた。
転移する前に一度落ち着こうと、リリアは赤色の薔薇の前でしゃがむ。
そして考え込んでしまった。
やばいです…このままではアルベルト様の嫁コース一直線です。魔王様は冗談だと思いたいですが、父とアルベルト様が本気っぽいです。
アルベルト様の側近は嫌ですが、嫁は死んでも嫌です。
…取り敢えず、趣味部屋という名の要塞に逃げ込む事にしましょう。
そう決めると、周りに誰も居ないのを確認してピアス形魔力制御装置を片方だけ外した。
高過ぎる魔力は装置を付けないと他の魔族に目をつけられてしまうため、5歳の時に父から貰った物をさらに改造して使っていた。
ピアスに見えるそれは、貰った時よりも数倍の魔力が抑えられるので、一般的な大人の魔族よりは少し強い位の魔力まで下がる。
普段なら付けたままでも転移できるが、今は心に余裕がないため早く楽に帰る方法をとる事にした。
「転移。趣味部屋」
それだけ言うと、趣味部屋に転移した。
−実はそれを見ていた者が居たのに気付かずに−