転生先は魔族です
と、ここまでが私の前世です。
今の私は人間ではありません。そもそもここは前世の私が居た世界ですらないです。
魔族しか住めない土地、その一部オルタナという国に住んでいる私は、もうすぐ5歳になる美少(幼?)女です。金色の髪は肩までで揃えられ緑の瞳は大きく、真っ白な肌には淡いピンクのドレスを。
もちろん、ここに住んでいる私は魔族です。父は現魔王様の側近。その為殆んど家に帰って来ません。
母も魔王様のご子息の教育係なので家にいません。
…私一応5歳ですよね?普通放置しませんよね?
いくら私がしっかりしているとはいえ、これは育児放棄ではないかと思います。
ちなみに前世の話は誰にもしていません。
信じませんよね、普通。
家は貴族の屋敷レベルで大きいです。部屋数は何人住むのと言いたくなる位沢山あって、掃除が大変そうと思います。
一応使用人は居ますが、彼等はあくまでも使用人。こちらから声を掛けない限り寄ってきません。声を掛けても必要最低限しか話しません。
…何だか泣きそうです。
気を取り直して勉強をと、本棚に近づくと魔力の気配が。
「この魔力は…」
思わず呟くと魔法陣が表れ、中から少年が出てきた。
烏の濡れ羽色みたいな黒髪は腰まで長く、血の様に紅い瞳はつり目。着ている服も髪と同じく真っ黒で、余計に瞳の色が強調される。
周りをキョロキョロして、
「よし、無事に着いた」
とガッツポーズしていた。
そのまま少年に気付かれないうちに逃げたかったが遅かった。
「久しぶり、リリア。」
にっこり笑いながら近づいてくる少年に声を掛けられた。
「…お久しぶりです。アルベルト様」
しっかりと自分より位が上の者に対しての挨拶をするリリア。
「そんな畏まった挨拶なんかしなくても。僕と君の仲じゃないか」
「そんな…私の父は貴方様のお父様の側近ですが、私はただの娘です」
目の前にいる少年こそ魔王様の実子、アルベルト・シュリアヴェールだった。