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Helichrysum  作者: ユニテ
3/4

encounter

「この本借りたいんだけど。」


そう声がしたからいつものように顔を上げ、応対しようとした。



「ん?どうかした?」


それは衝動となって胸に押し寄せてきた。

この人だ、と思った。

あの方に似ている。

だけれど、似ているだけかもしれない。

そんなことが頭をよぎったが、あまりの不自然さに声をかけられ、はっとした。

だめだ、だめだ。

こんなことではいけない。

そう頭に叩き込んで、いつものように応対する。


「では、お預かりいたします。」


預かった本の背表紙にあるバーコードを読み取り、差し出された学生証にあるバーコードも読み取る。

高橋芳樹。

そう、彼の学生証には書かれてあった。

不自然にならないように本と学生証を返却すると、いつものように「ありがとうございました。」と機械的に挨拶をして、また視線を本に戻した。


内心心臓はバクバクだ。

どうにかこの動揺を悟られまいと振舞ったが、緊張は彼が部屋を退室するまで続いた。

もう、本どころじゃない。

あの方に似ている、ただそれだけで私は動揺する。

自分はこんなに軽い女だったろうかと思ったが、まだ、動揺しているだけだと思い込ませ、未だにあの方を思っている自分にため息がでた。

こんな叶うことのない思い、早く忘れてしまいたい。

そう思う反面、あの方を忘れたくないと思ってしまう。

こんなジレンマに押しつぶされそうになりながら、前にも後ろにも進めずにいる。


****************


今日の君はいつもと違う。

あの高橋をぼぅっと見ていた。

‘また’か…。

そう思わずにはいられなかった。

やっと、やっと彼女の傍にいることができると思ったのに、やっぱり奴がいいのか。

近衛団長、ウィリアム・ハーディが。


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