プロローグ
私の名前は京川紫苑。
16になったばかりの高校1年生。
部活には所属してません。
ごくごく普通の女子高生なのだけれど、一つだけ変わったことがある。
それは前世の記憶があること。
前世の私はお姫様とかどっかのお嬢様だとかそんなんじゃない。
ただの街娘だった。
本好きが講じて王立図書館で司書をしていた。
そこで淡い恋をした。
許されない、叶うことのない、一方通行の恋だったんだ。
そして、私の死はあっけなくて、その片思いの男性が殺されそうになったところをかばい、即死。
でも、本望だった。
たとえ私の片思いでもあなたという人を守れたのだから。
だって私はあなたを愛していたから。
こんな記憶があったこともあって、今の私はまだ恋をしたことがない。
かっこいいなぁとかはある。
でも、この人じゃないって思ってしまう。
いくらか告白なんてされたことはあるが、とてもじゃないけど“はい”なんていえなかった。
やはり記憶が邪魔をしているとしか思えなかった。
いるかも分からない、あなたにまだ私は一方通行の恋をしている。
――― 『今日も偉いな』と頭を撫でてくれるその笑顔が、そのぬくもりが忘れられないの。―――