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A mimic

 こいつ、なかなかできる!

 あたしはさっきからクラスターさんの踊りを真似するのに精一杯だ。

 文字通りモノマネである。

(須磨高スマップバックダンサーズを務めていたこのあたしの動きがかなわないなんて…)

「クラスターは今でこそ道化の道を歩んでいるガ、もともとは新体操の選手だったんだよネ〜」

 あたし達をこの場に招いた張本人、アルフレッドさんが勝ち誇ったかのようにいやらしく笑っている。

 自分の手柄じゃないくせに偉そうにしやがって。

 でも、あたしにはわかる。

 あの人もそれなりの実力を持っているということが。今のような軽口はもう何度叩かれたかわからないが、それでもあたしがクラスターさんの踊りを真似する時の顔は真剣マジだった。きっと、クラスターさんのダンスとあたしのダンスを細かく分析しているに違いない。

「イェイ!」

「イェイ!」

 はぁ、はぁ、はぁ…。

 な、何とか踊り終えた。

 確かにあの事件をきっかけに少しの間、須磨高で新体操部には入っていた。が、所詮その程度のあたしじゃ力量がぜんぜん違いすぎる。

 物真似初心者ということもあってか、かなりテンポはゆっくり、キリのいいところで区切りながらのダンスだったのにあたしはバテバテ、クラスターさんは全然余裕の表情なんだもの。

「ミヤさん、なかなか筋がイイ。後はもう少し体力ほしトコだネ」

 しかもあたしはなぜか呼び方が『ミヤさん』になってるし。

 あたしゃ、どこかの寺か天皇の名前か何かか?

「まぁ、及第点はあげられるネ」

 アルフレッドさんは乾いた拍手をしながらニッと白い歯を見せて笑う。

 あたしにもう一曲分踊れるだけの体力があれば、絶対こいつと対決したのに!

「さて、次はケン君の番だネ」

 アルフレッドさんはそう言って羽鳥君を……じゃなくて変体男のほうに顔を向ける。

「ケン君のバトルの相手はこのワタシネ。ケン君はモノマネもダンスも初ということから点数はかなり多めにみるネ」

 アルフレッドさんは「その代わり」と指を振りながら続ける。

「最後のフィニッシュだけはケン君がその弓矢を使ってかっこよく決めてほしネ」

「はぁ!?何ですかそれー!!」

 変態男が悲鳴にも似た叫び声をあげる。

 あたしも今の一言は思わず耳を失った。

 ダンスをやったこともない人間にダンスのフィニッシュを即興で考えろだなんて。

 それもあんな大きな、ダンスには絶対必要ないものを使って。

「さ、佐藤さ〜ん、助けてくださ〜い…」

 変態男がよろよろと倒れこむ。

「でぇ〜い、近寄るなぁ!」

 あたしは反射的に変態男の顔に手を当てた。

「と、とにかく最後にその弓を使って終わればいいのよ。天井に弓を打って穴でも開けちゃいなさい。テ〇ルズだったか忘れたけど確かそんな技があったでしょ?」

「パクリは著作権の侵害ですって…」

「うるさ〜い!とにかくあたしから離れてって言っているでしょ!」

「うぅ、そんなこと言われても…」

 変態男は困惑した表情のままステージを見つめる。

 既にステージ上ではアルフレッドさんがスタンバっている。

「とにかく、多めに見てくれるって言うんだからとりあえずはあの人の動きに集中すること。弓道の基本なんでしょ?集中力は?」

 あたしはだいぶ前にこいつが言っていたことを真似て言う。

「佐藤さん、あの時の言葉を覚えて…?」

「ヘイ、ケン君!ダンスの準備が整ったなら早くすてージに上がってきなさーイ!さもないと時間切れで強制的に負けにスルよー!?」

「ほら、ああ言ってるよ」

 あたしは変態男の背中をポンと軽く押した。

 変態男は頼りなくステージに上がっていく。

「Let’s Dancing!!」

 アルフレッドさんの掛け声で曲が流れ始める。

 大丈夫、あたしのに比べたらはるかにテンポの遅い曲だ。

 これなら、いける。

 それでもたまにアルフレッドさんのリズムについていけないことがあったが、それでも何とかダンスを踊りこなせている。

 見た目は盆踊りみたいだけど…。

 そして、最後にフィニッシュに入る。

 ここが運命の別れの時。

 あいつのフィニッシュで全てが決まる。

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